義歯を入れられる患者さんへ

太田新田歯科医師会
はしづめ歯科医院
院長 橋爪 雅

義歯を入れられる患者さんへ

初めて入れ歯を装着した場合、異物感に慣れるよう努力が必要です。人によっては慣れるのに3ヶ月位かかることもあります。食事については硬いものや大きな食片は避け、小さくて柔らかい食事から徐々に慣らしていきましょう。

また、場合によっては、

  • 唾液が出やすくなる
  • 歯や歯肉がしめつけられる感じがする
  • 話しにくい、発音しにくい
  • 熱や味覚に対して鈍感になる
  • 気持ち悪くなったり吐き気がしたりする

というようなことが起こることがあります。そのような場合は、入れ歯をお口の中に装着する時間を最初は短くし、それを少しずつ伸ばすなどして慣らしていくようにしましょう。

新しい入れ歯の場合、入れ歯のふちが粘膜を傷つけ、潰瘍をつくる場合があります。食物の咬み具合や義歯のあたり具合をみながら数回の調整が必要な場合があります。また、患者さんの中には入れ歯を削る、留め金を締めるなどご自身で調整してしまう方がいらっしゃいますが、そのようなことは絶対にやめていただき必ず主治医に相談してください。

総入れ歯では前歯で食物を咬むと入れ歯がはずれやすいので、大きい食物は細かくし、左右両側の奥歯で咬むようにしてください。

どんな入れ歯にも汚れが付着し、細菌が繁殖して義歯性口内炎を起こすことがあります。

天然歯と同様にブラシで清掃してください。その際研磨剤が入ったものは避けてください。また市販の入れ歯洗浄剤に浸すのも良いでしょう。

ただし、入れ歯洗浄剤の種類によっては「総入れ歯用」と「部分入れ歯用」に別れている場合がありますので注意が必要です。

特に部分入れ歯に総入れ歯用の入れ歯洗浄剤を使うと入れ歯を支える留め金が黒く変色してしまうものもありますので気を付けてください。熱湯を使っての消毒は入れ歯のヒビ割れや変形をおこすので絶対にやめてください。

夜間就寝時は、入れ歯をはずして水を満した容器に入れ、乾燥しないように保管してください。これは乾燥による入れ歯の変形を防ぐとともに就寝中に粘膜や骨を安静に保ち健全にするためです。

顎の形は常に少しずつ変化しています。主治医の指導のもと、必ず定期検査を受けてください。

口臭について

太田新田歯科医師会

尾島デンタルクリニック

院長 林崎 雅樹

口臭について

今日は多くの人が気にしている口臭について少しお話しします。

まず、口臭が発生しやすい条件とお口の唾液とは密接な関係があります。

朝起きてすぐの口臭やストレスなどによる口臭、体調不良による口臭などは、いずれも唾液の減少により起こります。また、耳鼻科的な病気やあるいは歯並びが悪いためなどで鼻での呼吸ができず口で呼吸をすることによっても口臭がすることがあります。

それ以外の局所的要因としては、お口の清掃不良による場合、また歯周病など歯茎のどこかに炎症がある場合などももちろん口臭につながります。喫煙によるタバコのヤニによる口臭やタバコに含まれるニコチンによる口腔乾燥により口臭が発生します。

ではどのように口臭を防ぐかという点ですが、最近使用する人が多い「清涼タブレット」は一時的なものと考えてください。

やはり一番の防止策は適切なブラッシングです。その人その人によって一番適しているブラッシングの方法や歯ブラシの種類などがありますので 是非かかりつけの歯科医院で指導してもらってください。口臭の原因にもなる歯石が歯に付着している場合は必ず除去してもらってください。また、舌表面に付着する舌苔(ぜったい)も原因の一つなので舌磨きをするのは良いのですが、過剰な舌磨きは 舌乳頭や味覚細胞を傷つけ、かえって乾燥が起こりやすくなったり、味覚障害を引き起こすこともあります。舌苔を取りすぎないでください。

以上のように口臭が気になるときのみならず、普段から虫歯や歯周病のチェック、定期的なスケーリング(除石)をしてもらいに、かかりつけの歯医者さんで診てもらうのが一番の防止策です。

最後に一番大事なことかも知れませんが、人には誰にでも生理的な口臭があります。

自分が気にしていても、他人は全然気にならない場合もあります。自分で口臭が気になったら一度家族や仲の良い友人に確かめてもらうというのもよいと思います。

くれぐれも自分一人だけで必要以上に過敏にならないように(自臭症)に注意し、気になればかかりつけの歯医者さんに相談しましょう。

患者さんと歯科医のよりよい関係

太田新田歯科医師会

飯塚歯科医院

院 長 飯塚 光宏

 

患者さんと歯科医のよりよい関係

 

近年、コンビニや美容院より多いと言われるほど歯科医院は沢山あります。太田市・みどり市笠懸地区をエリアとした太田新田歯科医師会は、歯科医院119件、会員歯科医師132名(正会員124名、準会員8名)を有する一般社団法人として公益事業に取り組んでおります。市民の方からよくある質問に、どこか良い歯科医院を紹介してほしいとの問い合わせがありますが、当会では会員歯科医院情報はHPにて公開していますが、歯科医院の斡旋は全く行っておりません。ですから、患者さんは一般的には口コミやインターネット情報などから、歯科医院選びをすることになります。

それでは、患者さんが歯科医院に望むことは何でしょうか。痛い所だけ治してなるべく早く終わりにしたいか。全ての悪いところを時間をかけて治したいか。長期的なメンテナンスを含めて一生のお付き合いをしたいか。あなたが望む治療方針などを歯科医師にハッキリ伝えてください。そうすれば、あなたの病気の訴えと治療の希望を十分理解して治療が始まります。

しかし、治療が始まってからは、治療期間はたいへん長期間かかる場合があります。歯科疾患は長い時間をかけて悪くなりますので簡単に治すことはできません。また、歯科医師の専門的な判断から治療方針の変更もありえます。その場合は歯科医師から再度詳しい説明を受け納得して治療を継続してください。

このようにして、患者さんと歯科医師がお互いに信頼関係を結ぶことができれば、満足感の高い治療を受けることができます。長い治療の間、特に注意しなければならないのは、お互いのコンプライアンスが重要になります。歯科医師側は、患者さんが望む治療を成功に導く努力をし、患者さん側は、治療を成功に導くための様々な指導や指示をなるべく履行する。それにはお互いが十分なコミュニケーションを保ちながら治療を進めることがとても大切です。

しかし、現実には医療トラブルもあります。その原因は、約7割が誤解により起因していると言われています。誤解が解ければ和解できます。つまり、誤解さえなければトラブルに発展することはありません。歯科医師側は、真摯な態度で丁寧に説明する。患者さん側は、説明内容をメモしてわからないことは必ず質問する。双方が積極的にコミュニケーションをとることにより納得した治療を受けることができます。

さて、長い時間と治療費をかけて治療が終わっても安心してはいけません。お口の中は、栄養豊富で一定の温度・湿度環境に保たれた細菌の格好の住処です。また人は老化が進むとお口の機能低下が進みます。歯科疾患は患者さんの自覚がないままに進行することがほとんどです。ですから治療後も継続的な定期検診が重要なのです。

あなたの口腔内のことをよく知っていて、長期に渡って管理してくれる、そしてお口のことを何でも相談できる「かかりつけ医」を見つけてください。そうすれば、あなたは安心して治療を受けることができます。

 

第19回 市民公開講座 開催報告

太田市・太田新田歯科医師会

第19回 市民公開講座 開催報告

 

日時:平成30年11月10日(土)午後2:00~午後4:00

会場:太田市学習文化センター 視聴覚ホール (太田市飯塚町1549‐2)

主催:太田市・一般社団法人 太田新田歯科医師会

後援:太田市教育委員会・太田保健福祉事務所・太田市医師会・太田市薬剤師会

群馬県看護協会太田地区支部・太田栄養士会・太田歯科技工士会

群馬県歯科衛生士会東毛支部・群馬県歯科医師会

第19回 市民公開講座 開催報告 第19回 市民公開講座 開催報告

 

太田市の歯科訪問診療

~ 歯科医がおうちにやってくる ~

 

前日までの雨も上がり、とても穏やかな秋晴れの下、第19回市民公開講座が太田市学習文化センターにて開催されました。今年も昨年同様、講演会と落語の2部構成で、第1部の公開講座は、太田新田歯科医師会会員の田中靖人先生と武政道代先生のお二人にご講演して頂きました。

第1部公開講座

当院における歯科訪問診療の現状

~患者さんに寄り添った歯科訪問診療

最後まで口から食べることを目標として~

医療法人社団 聖医会 田中歯科医院   院長 田中靖人 先生

医療法人社団 聖医会 田中歯科医院・院長 田中靖人 先生

かかりつけ歯科医院として、かかりつけの患者さんが通院出来なくなってからも最後まで診療を続けていきたい。入院しても、在宅療養になってからも、施設に入居しても。入れ歯やインプラントを含め、口の中の状態は、今まで治療を行っていた、かかりつけ歯科医が一番把握しているはずだから。

田中先生の思いをお伝えされてから、ご講演がはじまりました。

〇歯科訪問診療の依頼理由

◆高齢者の方からの依頼

① 様々な疾患、後遺症や高齢による廃用性症候群(フレイル、サルコペニア、ロコモ)による通院が困難なため。

  • フレイル :健常から要介護へ移行する中間段階のこと。具体的には、加齢に伴う筋力の衰え、

疲れやすくなる等、年齢を重ねたことで生じた、衰え全般のこと。

  • サルコペニア :加齢や疾患により、全身の筋肉量が減少すること。筋力低下により身体機能の低下が起こること。(杖を突いて歩く、手すりが必要になる、ふらつく等)
  • ロコモ  :ロコモティブシンドロームの略称。骨・筋肉・間接・神経等の障害のために移動機能の低下をきたした状態。

② 認知症により徘徊の危険性があり、単独で通院困難なため。

③ 高齢者の方のみの世帯で交通手段がなく、物理的に通院が困難なため。

◆ 難病の方や障害をお持ちの方で、通院が困難な方

◆ 歯科医師のいない、歯科の診療科目がない病院、精神病棟等に入院中で外出できない方

◆ ひきこもりにより、自宅から出られない方

  • 必ずしも、誰でも、いつでも、どこでも、歯科訪問診療の対象者になるわけではありません。歯科訪問診療を受診するためには、継続的に通院出来ない客観的な理由が必要です。

〇歯科訪問診療を依頼してくれる方

◆ ご本人、ご家族

◆ 介護支援専門員(ケアマネージャー)

◆ 施設の施設長、看護師、介護士

特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、高齢者専用賃貸住宅、デイサービス等

  • 社会福祉協議会、地域包括支援センター、市役所、民生委員の方
  • 訪問診療を行っている医師、看護師
  • 歯科医師会、歯科訪問診療を行っていない歯科医院など
  • 本人の歯科訪問診療の受診希望があれば、本人、家族、近親者関係者、誰でも依頼可能です。

歯科訪問診療の症例を、スライドを用いて説明

症例①:73歳女性、歯牙破折による疼痛、欠損による咬合困難を主訴とし、精神疾患と高齢による廃用性症候群により、車いすのため独歩通院困難であり、高齢者専用賃貸住宅の施設長より依頼。

保存不可能な残根を抜歯、ブリッジ作製後、口腔ケアにより状態の維持を図る治療計画。

症例②:80歳男性、義歯人工歯脱落。認知症による徘徊の恐れがあるため通院困難。食事介助中、介護士が発見し依頼。義歯修理にて継続使用とする治療計画。

症例③:95歳女性、義歯不適合による疼痛。大腸がんの全身転移、高齢による廃用性症候群により

車いすのため通院困難であり、群馬県立がんセンターの担当医より紹介依頼。慢性下顎骨骨髄炎による腐骨形成。がんセンター担当医と相談し、義歯調整、投薬によりQOL(クオリティーオブライフ)の維持を図る治療計画。

症例④:88歳男性、持続性の顎の痛み、口臭と味覚異常。末期がん(前立腺がん)、廃用性症候群により寝たきりのため通院困難であり、高齢者専用賃貸住宅の施設看護師からの依頼。太田記念病院歯科口腔外科に感染部除去手術を依頼し、手術後の経過観察、術後管理、その他必要に応じた処置を行い、QOL (クオリティーオブライフ)の維持を図る治療計画。

まとめ

歯科訪問診療でも通常の歯科外来診療とほぼ同じ治療を行う事が可能です。しかし、全身的な状態

により外来診療と全く同じ診療内容とはいかないことが多くあります。患者さんや、そのご家族の希望と実際に行える治療内容に隔たりがある場合も少なくありません。全身的な状況により、治療内容にかなりの差が出てしまう事が現実です。お口の中で気になる事がございましたら、先ずは早めに、周りの方にご相談してみてください。

歯科訪問診療では、特に局所麻酔を行う場合は、治療が難しいことが多くあります。口の中の『終活』ではないですが、少しでも元気なうちに、現在のかかりつけの歯科医院にて外来診療を受診して、しっかりとした歯科治療を受けていることが望ましいと思います。寝たきりになってしまったり、通院困難になる前に、常により良い歯の状態、口の中の状態にしておくことが一番大切であるとお話しされ、ご講演を終わられました。

 

「歯科訪問診療の実際」

~歯科訪問診療をより深く知って頂くために~

あおい歯科  院長 武政道代 先生

あおい歯科  院長 武政道代 先生

口には、話すこと、食べること、息をすること、そのような大切な機能があります。その大切な口のトラブルを減らすこと、口の機能を維持すること、疾病により障害が残ってしまった場合に、その障害と上手に付き合うことで療養生活が楽になる可能性があります。

歯科訪問診療には、そのような生活支援の側面もあります。治療だけでなく、生活支援としての歯科訪問診療の内容についてもお話しさせて頂きたいとご挨拶されご講演頂きました。

 

〇口腔・咽頭ケアによる吸引回数の減少

施設に入院されている患者さんが、痰の吸引を嫌がると看護師さんから相談を受け、歯科訪問診療に使用する専用の清掃器具を用いて、口腔・咽頭ケアを行うことにより吸引回数の減少が認められました。

困難だった処置や治療が、ちょっとしたきっかけでスムーズに行えるようになった一つの症例をお話しされました。

〇歯科訪問診療の訪問先の割合(あおい歯科調べ)

施設:51%、居宅:27%、病院22% 

〇歯科訪問診療の原則

1人で通院が出来ない方

 介護認定を受けている・難病や病気のため福祉医療を受給している・怪我や病気で入院・療養中

〇年齢(あおい歯科調べ)

20代から90代まで訪問診療を行っており、最も多いのは80代、続いて70代、60代、90代と徐々に減少、その他年齢が若くなるほど減少傾向にある。

〇費用:訪問診療料

1割負担 訪問診療料 1040円 + 歯科治療費、指導料 など

〇依頼内容(あおい歯科調べ)

義歯に関する依頼(不適合、修理、新製など)が最も多く、次に口腔内の疼痛、歯の動揺、歯の破折、口腔ケア、歯の脱落、歯肉腫脹・出血 など

〇歯科訪問診療の患者さんの基礎疾患(あおい歯科調べ)

・脳疾患(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血など)

・心疾患(心不全、心筋梗塞、心室細動など)

・パーキンソン病、パーキンソン症候群

・骨折(腰椎、大腿骨)・膝関節・腰椎変形症

・肺疾患・腎疾患・難病・がん・怪我

・認知症(アルツハイマー型、レビー小体型、血管性など)

 

2014年厚生労働省患者調査では、高血圧症に続き認知症の患者さんが第2位!!

認知症:462万人、軽度認知障害:400万人、認知機能障害のない高齢者:2217万人

 

〇あおい歯科では、歯科訪問診療の際、認知症状があっても可能かどうか相談されることが多くあります。意思の疎通が出来ない、口を開けていられない、座っていられない、日によって体調や機嫌に変化がある等、ご家族の方は様々なことが心配ですが、その日、その時の状況により、診療内容も合わせて対応しております。認知症は進行性の病気で、緩やかに進行していきます。進行性の病変は回復できませんが、使わずに衰えた機能は回復させることができます。

施設・自宅での療養生活において、食事・歯磨き・着替え・入浴などに介助が必要となります。歯の痛みや、入れ歯の修理や調整だけでなく、食事が上手くできなかったり、むせたり、肺炎を繰り返していたりと、どうしたらよいかわからない時には、歯科訪問診療にてご相談下さい。食を支え、生活を支え、治療へと導くためにも、歯科訪問診療をご利用頂きたいと市民の皆様にお伝えしてご講演が終焉となりました。

 

落語・講演

落語・講演

少し休憩を挟んで、一般社団法人 落語協会 金原亭世之介(キンゲンテイヨノスケ)さんの落語(演題

:かんにんぶくろ)が始まると、会場は大きな笑い声でにぎわい、第1部公開講座で少し疲れた頭がスッキリとして、リラックスした笑顔を取り戻したようでした。

 

金原亭世之介さんは、現代感覚を生かした本格古典派の落語家であり、大正大学 表現文化学科

客員教授・俳人・ミュージシャン・執筆・講演・舞台・新作落語もこなすマルチタレントであります。

 

落語に続き、言語誘導学についてご講演して頂きました。会場から有志として薬剤師会の照井先生にご協力いただき、動体誘導を体験して頂きました。

世之介教授はステージに上がった照井先生の身体を前屈させると、無言で前屈した時よりも、褒めたり、大きな声で挨拶した後で前屈した時の方が+5cmも前屈出来ました!! 挨拶しなかったり、マイナス思考のストレスを加えた後に前屈をしてもらうと、元に戻ってしまいました。外部誘導の効果とのことで、他にも О(オー)リングの心理的要因についてもお話しして頂きました。会場内は隣同士、指でつくった輪を引っ張り合う笑顔の絶えない光景のまま、第2部 落語・講演が終了いたしました。

第17回市民公開講座

来年は、記念すべき第20回目の市民公開講座となります。今年同様、市民の皆様が笑顔で会場を後にして頂けるような公開講座を開催し、歯と口と全身の健康を維持し、支える事が出来れば幸いです。

 

文責 太田新田歯科医師会 市民公開講座運営委員会 増田康展