第23回市民公開講座 開催報告

日時 : 2022年11月13日(日) 午後2:00~午後4:20

会場 : 太田市学習文化センター 視聴覚ホール(太田市飯塚町 1549‐2)

主催 : 太田市・一般社団法人 太田新田歯科医師会

後援 : 太田市教育委員会・太田保健福祉事務所・太田市医師会

太田市薬剤師会・群馬県看護協会太田地区支部・太田栄養士会

太田歯科技工士会・群馬県歯科衛生士会東毛支部・群馬県歯科医師会

~医科歯科連携~

「そのいびき、息が止まっていませんか?

睡眠時無呼吸症候群かも??」

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、多くの行事が開催中止を余儀なくされておりましたが、3年ぶりに市民公開講座を開催する事となりました。開催に際しましては、検温、手指のアルコール消毒、会場内の換気、マスクの着用、人数制限や座席の配置など十分な感染予防対策を施し、第23回市民公開講座が開演されました。今回は、“いびき ・ 睡眠時無呼吸症候群”について、医科と歯科のそれぞれの分野から医科歯科の連携を踏まえてお話しして頂きました。

講演Ⅰ

演題:「そのいびき、大丈夫?~人生が変わる無呼吸治療~」
講師 :秀クリニック 院長 坂本 泰秀 先生

秀クリニック 院長 坂本 泰秀 先生

1,睡眠時無呼吸って何?

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnena Syndrome):サス

睡眠中に断続的に無呼吸を繰り返し、その結果、日中傾眠など種々の症状を呈する疾患の総称。

一晩(7時間)の睡眠中に30回以上の無呼吸(10秒以上の呼吸気流の停止)があり、そのいくつかは(ぐっすり眠っている)non‐REM睡眠期にも出現するものをSASと定義し、診断基準として、1時間当たりの無呼吸回数(Apnea Index : AI)が5回以上のものとした。

AHIとは無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index)の略で、1時間に5‐15回を軽度、15‐30回を中等度、30回以上を重度のSASと診断します。

睡眠時無呼吸(SAS)の原因は上気道の閉塞により低呼吸・無呼吸が起こり、慢性的な低酸素により諸症状・諸問題がおこります。

〈閉塞の原因〉

  • 形態的異常 : 肥満によって気道に脂肪が沈着する、扁桃腺肥大、アデノイド、巨舌、鼻中隔湾曲、小顎症
  • 機能的異常 : 気道を構成する筋肉の保持力低下➝舌根沈下など

睡眠時無呼吸の病態とは、睡眠➡無呼吸・低呼吸の発生➡血中酸素濃度の低下、血中CO2の上昇、胸腔内圧の低下➡呼吸の再開➡睡眠のサイクルを1晩中、何百回も繰り返す!!

〇SASの主な症状は、日中の眠気、いびき、夜間頻尿、熟睡感がない、起床時頭重感、肥満など。

〇SAS患者さんの主な特徴

身体的特徴 ・肥満・顎が小さい・扁桃肥大
合併しやすい疾患 ・高血圧・心疾患・糖尿病・不整脈などがある。

〇SASと交通事故との関係

追突事故の15%~33%は居眠り運転が原因とされており、1987年にSAS患者で交通事故を起こす頻度が高いことが報告されて以来、健常者に比べ2,5倍増加することが明らかになっています。

〇SAS患者は太っている人だけ?

SAS患者は確かに肥満度が高いが(平均BMI : 26,1)、38%は非肥満、5%は痩せている!

肥満だけがSASの原因ではなく、軟らかい食べ物が好まれる傾向により咀嚼回数が減り顎の未発達がSASリスクを増大させていて、矯正治療をしているお子さんが増加傾向である。

〇ステージⅢの乳がんより未治療のSASの方が生存率が低い⁉

未治療のSAS患者246名を対象とした8年間の追跡研究によれば、中等症以上のSAS患者の生存率は63%!国内における2019年のがん統計ではステージⅢの乳癌の5年生存率は79%!!決して軽く考えてよい病気ではなく、SASは放置したら大変です!!

 

2,クリニックでの実際の診察~初診から診断、治療について~

まず SASの問診票に受診された直接の理由・症状等を記載。いびきや睡眠の状態把握に関する質問を行う。理由は主にパートナーからの無呼吸の指摘・いびきの苦情。日中の眠気、居眠りによる交通事故や事故未遂。運送業の方の来院も増加。

続いて診察

問診票情報の確認、飲酒の状況、口腔内診察し、SASの説明や症状の確認。そして自宅でSAS簡易検査をしてもらいます。費用は3割負担で3,000円位、鼻の気流/いびき と動脈血酸素飽和度(SpO2)から睡眠中の呼吸状態を確認。自宅での簡易検査の結果をもとに再診、明らかに正常~ごく軽症であれば終診、いびきを気にされている場合は、チンストラップの装着やマウスピース作成の為に歯科へ紹介。

SASを疑う方には精密検査(PSG検査)となり、夕方からの1泊2日の夜だけ入院の検査となります。脳波検査を含み、睡眠深度や呼吸状態、心電図や足のピクツキなど10種類ほどの生理機能を確認する検査で、費用は3割負担で3~5万円前後と高額です。明らかに重症の方は即CPAP治療となります!!

CPAP療法の原理

CPAP治療は閉塞した上気道に陽圧をかけ、気道を開存させます。閉塞型睡眠時無呼吸症候群は軟口蓋や舌根の沈下により気道が閉塞し、無呼吸が発生する。CPAPは鼻マスクを介して、陽圧の空気を送り込み、上気道を広げ上気道の開存を補助する治療となります。

 

3,そのいびき、大丈夫?~人生が変わる無呼吸治療~

治療が必要なSAS患者は2019年の報告によると日本国内で940万人以上と推測されていますが、CPAP治療をしている患者は2021年現在65万人。運送業を中心とした簡易検査によるスクリーニング(SAS検診)も近年普及しつつあるが、潜在患者が圧倒的多数存在します。

SAS患者は日中の過剰な眠気といった症状や生活の質の低下だけでなく高血圧・不整脈・虚血性心疾患・脳血管障害・突然死といった生命予後に大きくかかわる疾患やうつ病などと密接に関連し、交通事故など大きな社旗問題に発展する危険もあります。そのためには、SASも早期に積極的に治療をすべきで、きちんと受診し検査を受けることが重要ですが、日常生活で気をつけると良い事もいくつかあります。

最も「安い」治療法は「ダイエット」、だけど…

SAS患者の7割は肥満。痩せさえすれば一定割合改善します。治療すべきレベルのSAS患者はCPAPやマウスピース治療を並行すべきですが、肥満傾向の方は、ベースラインの改善の為にダイエットを!!

日常でできる予防法  ベロ体操・その他

〇舌・口輪筋の『筋トレ・筋活!』舌を思いっきり前に出して15秒!

あいうべ体操:口呼吸から鼻呼吸に転換するのに有効。お風呂でおすすめ。「あー」口を大きく開く。

「いー」口を大きく横に開く。「うー」口を強く前に突き出す。「べー」舌を突き出し下に伸ばす。

ベロ回し体操:できるだけ大げさにやりましょう!寝る前にどうでしょう。舌を大きく前に出す(5回)。唇を閉じて舌で歯ぐきをグルっとなめる(右回り5回、左回り5回)。舌で左右の頬を強く押す(左右5回ずつ)

〇横向き寝:あおむけに寝ると重力に影響で舌が落ち込み気道が狭くなるので、横向きで寝る。

〇禁煙:喫煙はのどの粘膜の炎症やむくみ、低酸素の原因。

〇鼻炎治療:鼻が詰まると鼻からの気流が減少し、のどを広げる圧力が弱まります。鼻の通りをよくすることも大切です。

〇飲酒量を控える:アルコールには筋肉を弛緩させる作用があり、舌やあごの筋肉が緩んで気道を圧迫しやすくなります。

実際にCPAP治療をした患者さんの感想は、最初の一週間くらいは効果の実感がなかったようですが、2,3週間すると装置の装着にも慣れ、日中の眠気や起床時のだるさはほとんど感じなくなり、CPAP治療の有効性を実感したとの事でした。

講演Ⅱ

演題:「睡眠時無呼吸症候群 歯科(マウスピース)での治療」
講師 :  井田歯科クリニック 副院長 井田 順子 先生

井田歯科クリニック 副院長 井田 順子 先生

皆さんは良く眠れていますか?最近は、睡眠がブームですね。枕、サプリメント、乳酸菌飲料、スマートフォンのアプリケーションなどなど、熟睡せんがための様々な物が次々と出てきております。お使いになられている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

それらをお使いになられて、よく眠れましたでしょうか?

家族からのいびきの苦情はなくなりましたでしょうか?

睡眠の質と量、良く眠れることは、健康維持に重要です。睡眠時無呼吸症候群など、睡眠の病気は全身に関わる病気の原因になります。

 

〇睡眠時無呼吸の治療の担当科

精神神経科・呼吸器内科・神経内科・耳鼻咽喉科・代謝内科・泌尿器科・循環器内科・外科・小児科・歯科など多くの科で担当しており、歯科も担当科のひとつとなっております。

〇歯科、医科における睡眠時無呼吸の治療

医科では、nCPAP治療・耳鼻咽喉科的手術・投薬などの治療方法があります。

歯科では、OA(Oral Appliance) : 口腔内装置・マウスピース治療や口腔外科的手術があります。

また、睡眠衛生指導や睡眠体位の指導は医科歯科それぞれで行う事があります。

〇睡眠時無呼吸の治療における医療連携

  • 医科での睡眠時無呼吸の診断(睡眠検査)➝歯科へ打診
  • 歯科的診断(問診、視診、内視鏡検査、X線検査)➝OA治療が可能
  • 治療(OA治療)➝医科へ評価を依頼
  • OA装着時の睡眠評価(睡眠検査)➝治療ゴール
  • 管理(睡眠時無呼吸・OA・口腔の管理)➝必要に応じて
  • 再診断・再評価

〇睡眠時無呼吸になりやすいタイプ

肥満型  :①顎下軟組織の過多 ②首が太い

小下顎型  :①小下顎 ②首が長い

下顎歯列の狭窄:歯列の狭窄によって舌が後方移動し、咽頭が狭窄して睡眠時無呼吸が引き起こされやすい。

口蓋扁桃肥大:Ⅱ度(Tonsillar grade)の口蓋扁桃肥大がある。

〇OA(口腔内装置)の種類

・下顎前方移動型と舌前方牽引型がありますが、舌前方牽引型は使用が困難であることから現在はあまり使用されておりません。

下顎前方移動型は、更に一体型と分離型があり、一体型はハードタイプとソフトタイプがあります。分離型は調整機能がある物とない物があります。

〇睡眠時無呼吸になりやすい形態的特徴

  • 鼻閉
  • 肥満による顎下軟組織の肥大
  • 小下顎
  • 扁桃肥大
  • 舌骨低位
  • 頭部前屈

〇OA治療のメカニズム

OA(マウスピース・スリープスプリント)を装着することにより、下顎を前方に移動させ気道を開存し睡眠時無呼吸を改善する治療法です。

〇OA治療の症例報告

  • 昼間の眠気の訴え

睡眠時無呼吸症候群の診断・OA製作依頼、AHI;32.5回/時間・SpO2低下

OA装着によりAHI;15回/時間・SpO2低下の改善し昼間の眠気が改善された。

  • OSASの診断で16年前に大阪の耳鼻科で手術、心疾患あり。3年ほどで症状悪化。

群馬の病院で検査、AHI;78回/時 重症でCPAPの適応だが、OA装着によりAHI;4.8回/時 酸素低下なし。

  • 12歳小学生 うつ病で薬を服用・不登校

母親が、夜間のいびきが酷いと、呼吸器内科を受診 AHI;10.3回/時、低呼吸が主体。内服薬の影響?OA装着 AHI;6,6回/時 うつ症状の改善・薬は不要 学校への登校

  • 初診時中学生 平成20年12月 部活中に意識不明に救急車で搬送、CT・MRI・脳波検査するも診断つかず。平成21年1月から3月まで月に2.3度意識喪失になる。平成21年4月学校に行けなくなる。5月脳神経外科受診するも異常なし。普段の生活の問診から、中学1年から夜更かし・睡眠時間少ない。平成21年5月 当院受診 午前中起きられない、昼夜逆転。東京の睡眠クリニックに対診、『睡眠相後退症候群』の診断で時間生物学的治療。内服薬と生活時間の見直し。約1ヶ月で改善 学校への登校。
  • AHI;15,1回/時・いびき指数28,9/時 軽度から中等度のOSASの診断

2年前にOA装着するも改善なし 当院にてOA作成。AHI;12,9回/時・いびき指数20,2/時にやや改善。令和3年7月再来され、新たにOA作成。AHI;9,4回/時・いびき指数6,4/時に改善

しかしながら、患者さんの眠気の改善なし。通勤時、運転時の強い眠気。CPAPとOAと併用・口テープ使用。患者さんへの詳しい問診 23時に入眠、2時に目が覚めることあり。4時起床、6時30分出発、運転中に強い眠気。7時30分仕事開始。

それぞれの患者さんの睡眠障害への対応が必要である。

まとめ

十分な睡眠は健康を維持するために重要です。日々の生活を振り返って、睡眠について考えて頂きたい。心配な方は早めに受診してください。

 

今日の講演が皆様の健康に寄与出来れば幸いです。と締めくくり第23回市民公開講座は終焉となりました。

第23回市民公開講座

 ―食べること、健康であること、美しくあること、全ては人々の幸せのために!―

文責 太田新田歯科医師会 市民公開講座運営委員会 増田康展

第23回市民公開講座開催のお知らせ

第23回市民公開講座を開催します

日 時 令和4年11月13日(日) 14:00~16:20 (開場 13:30)

場 所 太田市学習文化センター 視聴覚ホール (太田市飯塚町1549-2)

テーマ ~医科歯科連携~

「そのいびき息が止まっていませんか? 睡眠時無呼吸症候群かも??」

講演1

演題:「そのいびき、大丈夫? ~人生が変わる無呼吸治療~ 」
講師:秀クリニック 院長 坂本 泰秀 先生

講演2

演題:「睡眠時無呼吸症候群 歯科(マウスピース)での治療 」
講師:井田歯科クリニック 副院長 井田 順子 先生

定 員 200人

入場料 無料

主 催 太田市・一般社団法人太田新田歯科医師会

※開催にあたり新型コロナウイルス感染症感染予防対策のため入場者数を半分に制限させていただきました。

 

そのいびき、大丈夫? ~人生が変わる無呼吸治療~ 

第20回市民公開講座 開催報告

太田市・太田新田歯科医師会主催

 

日時:令和元年12月1日(日)午後2:00~午後4:00

会場:太田市学習文化センター 視聴覚ホール(太田市飯塚町1549‐2)

主催:太田市・一般社団法人 太田新田歯科医師会

後援:太田市教育委員会・太田保健福祉事務所・太田市医師会・太田市薬剤師会

群馬県看護協会太田地区支部・太田栄養士会・太田歯科技工士会

群馬県歯科衛生士会東毛支部・群馬県歯科医師会

 

医歯薬連携
~歯周病と糖尿病~

 

12月とは思えない程暖かな日曜日の午後、記念すべき第20回市民公開講座が太田市学習文化センターにて開催されました。

今年は医科、歯科、薬科と三名の専門の先生方に、それぞれの立場からご講演して頂きます。

 

第20回市民公開講座

 

第20回市民公開講座

 

第20回市民公開講座

 

講演Ⅰ 演題 「糖尿病と歯周病の深い関係」

講師 昭和大学江東豊洲病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 講師・診療科責任者

医療法人慶仁会 城山病院 糖尿病内科  李 相翔 先生

城山病院 糖尿病内科 李 相翔 先生

 

〇糖尿病は世界の成人4億2500万人が抱える病気で、年間500万人以上が糖尿病の合併症が原因で死亡しています。脳卒中や心筋梗塞、腎不全や眼底出血などの動脈硬化を起こすだけでなく、悪性腫瘍の発生や感染症の発症、認知症発症とも強く関係すると言われています。

 

慢性炎症としての歯周病をコントロールすることで、糖尿病のコントロール状態が改善する可能性が示唆されています。

 

歯周病は、遺伝的因子や環境的因子などに加えて身体の抵抗性が大きく関与しています。糖尿病により身体を守るマクロファージの機能低下・結合組織コラーゲン代謝異常・血管壁の変化や脆弱化(細小血管障害)・創傷治癒の遅延などが起こり、歯周病の発症・進行に影響を与えます。その結果、糖尿病があると細菌により感染しやすくなり、炎症により歯周組織が急激に破壊され、歯周病が重篤化していきます。

 

そのため、糖尿病の治療をしっかりおこない、歯周病の重篤化を予防することも重要ですが、歯周病をキチンと治療することにより、血糖コントロールが改善し、各種合併症や肺炎を予防できる可能性が強く示唆されます。

日本における糖尿病人口の推移

2015年現在、世界第9位で、糖尿病が強く疑われる人を合わせて2,050万人、女性に比べ男性に多く65~74歳42,8%、75歳以上30,3%、20~64歳26,9%発症(65歳以上73,1%)。

 

糖尿病の二大原因(インスリンの作用不足のしくみ)

  1. インスリンの分泌低下(量の減少)
  2. インスリンの抵抗性の発現(感受性が低下し、作用が十分に発揮できない状態)

 

インスリンの働きが悪かったり、不足することにより血糖値が上昇、インスリンが正常に作用することによりブドウ糖を細胞内に取り込み、代謝調節能を発揮し、血糖値はコントロールされている。

〇糖尿病とは、インスリン作用不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝疾患群である

・遺伝的要因(家族歴)

・生活習慣からくる要因(肥満、暴飲暴食など)

・外部環境からくる要因(睡眠不足、ストレスなど)

・インスリン分泌低下・抵抗性、バランスが崩れることによって血糖値が上がる病気である。

・主に1型と2型があり、どちらも食事療法と運動療法が基本で型によって治療法が異なる。

・遺伝子のみが発症要因ではなく、生活環境や外部環境も危険因子の1つ、遺伝因子を持つ人は要注意が必要である。

・肥満は2型糖尿病を引き起こす1つの要因であり、肥満が増えると2型糖尿病の危険性が高まる。過去に肥満していた人も要注意が必要!!

 

〇何故糖尿病治療が必要なのか?

糖尿病(高血糖)が原因で新たな病気が出現する。いわゆる合併症の出現。高血糖が著しくなると昏睡状態に陥ることもある。

高血糖がもたらす主なものは、

・細小血管障害(腎症・網膜症・神経障害)

・大血管障害(動脈硬化の進展・心筋梗塞・脳梗塞など)

 

〇糖尿病があると、

・認知症の発症率は4~5倍。

・感染症にかかると血糖値が普段以上に上昇しコントロールが悪化(好中球の貪食機能の低下・免疫反応の低下)!!

・がんの罹患リスクも上がる(1.2倍)<肝臓は2倍>!!

・歯周病に2倍以上罹患しやすくなる。血糖コントロールの悪化により重篤化しやすい!!

 

〇合併症の予防が糖尿病治療のカギ!!

・高血糖が続くことによって合併症が起こる。

・血糖値を良好にコントロールすることが大切。

・正しい治療を続ければ、普段の日常生活を送ることが可能。

・歯周病治療はHbA1cの改善に有効。(統計学的上0.36%改善)

普段のコントロールが重要!! HbA1c<7%

 

〇早期診断・早期治療

自覚症状の少ない糖尿病と歯周病は、早期に並行して治療することで相互の進行防止と改善が認められます。そのためには、それぞれの病気のセルフチェックを行う事が重要です。

 

・糖尿病セルフチェック

・家族や親せきに糖尿病の人が多い

・血糖値が高いと言われたことがある

・おしっこの回数が増えたり、変な臭いがして消えにくい泡が出来る

・最近良くのどが渇き、水分を多くとるようになった

・若い時より体重が増えた、あるいは急に体重が減った

・最近急に視力が落ちて見えにくくなった・足がしびれたり、体が痒くなることがある

・皮膚のできものが治りにくい・あまり運動をしない

 

・歯周病セルフチェック

・口臭・歯肉からの出血、排膿

・歯肉の腫脹・歯の動揺

・食べ物が歯と歯の間に挟まる

・歯茎が下がった

・起床時に口の中がネバネバする

・歯が浮いた感じ・硬い物がかみにくくなった

 

・食事療法(食べる順番が実は大切です。サラダが先!!)

トンカツ定食の場合:味噌汁(汁)→キャベツ→漬物→おひたし→トンカツ→ごはん の順

(血糖値の急上昇を防ぐ)

・運動療法(食後の散歩が特に効果的!!)

1日10,000歩・1回20~30分の有酸素運動・全身運動!!(出来るだけ毎日、無理なく続ける)

・薬物療法(インスリン治療)

・追加インスリン分泌の補充・基礎インスリン分泌の補充・追加、基礎インスリン分泌の同時補充

・GLP-1受容体作用薬(注射製剤):1日1回、1日2回、週1回。

 

〇糖尿病は現在の医療でも完治は難しいですが、良好にコントロールを保ち歯周病をはじめとした各種合併症を予防する事が可能な病気です!!歯周病を治療する事により、血糖コントロールを改善できることが示唆されており、定期的な歯科健診・治療が非常に重要です。糖尿病は、医師と二人三脚で一生付き合っていく病気ですので、自己判断で治療を中断せずに、継続して治療する事が大事です!!

 

講演Ⅱ 演題  「糖尿病の薬物治療」

~服薬アドヒアランスの重要性~

講師  太田記念病院 薬剤部・医療安全管理部   山藤 満 先生

 

太田記念病院 薬剤部・医療安全管理部 山藤 満 先生

 

糖尿病の治療は、食事療法と運動療法が基本です。しかし、良好な血糖コントロールが実現できないときには、合併症の発症や進行を抑えるために薬物治療を開始します。糖尿病のお薬にはさまざまな種類があり、それぞれ異なった特徴を持っています。特に血糖値を下げる 『経口血糖降下薬』 には糖尿病の状態や原因にあわせ、種類が多数あります。同時に服薬アドヒアランス(服薬遵守率)も重要です。どんなに効果のあるお薬が開発されて処方されても、服用されない限り効果は現れません。合併症の発症や進行を抑えるためにも糖尿病を正しく理解し、治療が適正に行われることを期待します。

〇薬物療法の目的

1,原因除去:疾病の原因除去 ・ 抗菌薬

2,対症療法:疾病に伴う症状の緩和 ・ 風邪薬、鎮痛解熱剤

3,補充療法:生体に不足している物質を補う ・ ホルモン剤、ビタミン剤

4,予防療法:疾病の予防 ・ インフルエンザワクチン

◎身体の機能を正常範囲にして、低下や亢進させない!!

 

〇アドヒアランスとコンプライアンスの違い

・コンプライアンス

患者が、医師や薬剤師などから指示された治療法を、指示通りにきちんと守って実行する。

・アドヒアランス

患者の理解、意思決定、治療協力に基づく相互理解の下で、治療を継続する。

 

〇アドヒアランス向上は世界的な課題

慢性疾患に処方された薬剤の服薬継続率は50%に過ぎない!!

アメリカ     :高血圧症の服薬継続率 51%

オーストラリア :喘息の服薬継続率 43%

中国       :高血圧症の服薬継続率 43%

 

〇経口糖尿病薬のポイント

1, 経口薬(飲み薬)による治療が必要な時はどんな時?!

・食事療法や運動療法の効果が不十分な時。

・診断時の血糖値がだいぶ高い時。

2, 糖尿病の飲み薬の種類と特徴!

・経口血糖降下薬は大きく分けて7タイプ。

・病状によって使い分けられている。

3, 飲み薬による治療を正しく続けるために!!

・低血糖(副作用)についての対処法を把握しておく!

・食事、運動療法を続けることが大切!

・飲み忘れ、飲み間違いの防止!

・他の病気の治療薬も服用するときの注意!

・シックデイ(体調不良時)の対策!

・インスリン療法などに変更!

 

〇経口血糖降下薬

・インスリン抵抗性改善系

ビグアナイド薬 : 肝臓での合成を抑える

チアゾリジン薬 : 筋肉や肝臓でのインスリンの働きを高める

・インスリン分泌促進系

DPP-4阻害薬 : 血糖が高い時にインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑える

スルホニン尿素薬 : インスリン分泌を促進

速効型インスリン分泌促進薬 : より速やかにインスリン分泌を促進

・糖吸収、排泄調節系

α‐グルコシダーゼ阻害薬 : 小腸からのブドウ糖吸収を遅らせる

SGLT2阻害薬 : 尿からのブドウ糖排泄を促進

 

〇経口薬の用法(食前・食後・食間とは)

・食前 : 食事の60分から30分前まで。

・食後 : 食後30分位まで。

・食間 : 食後30分から約2時間後(空腹時)

 

〇アドヒアランスをよくするための工夫

・服薬数を少なく : 同じ薬効を有する2~3錠を1錠にまとめる。合剤を利用する。

・服用法の簡便化 : 服用回数を少なくする。食前、食直後、食後などの服用方法の混在を避ける。

・介護者が管理しやすい服用法 : 出勤前、帰宅前にまとめる。

・剤型の工夫 : 口腔内崩壊錠、貼付剤などの利用。

・一包化調剤の指示 : 長期保存、途中で用量調節ができないなどの欠点がある。

緩下剤、睡眠薬など症状によってのみ分ける。薬剤は同一にしない。

・カレンダーの利用 : 飲み忘れ防止に有効。

 

〇かかりつけ薬局の利用

前の薬が余っていたり、飲みにくい薬があったり、1日3回は飲めない、薬の種類が多くて困る等々、こんな時は薬剤師に相談しましょう!! また、お薬手帳も忘れずに持参しましょう!!

 

講演Ⅲ 演題 「歯周病はどんな病気?」

~未病から疾病へ~

講師 ヒデ・デンタルクリニック 院長 山口英久 先生

 

講師 ヒデ・デンタルクリニック 院長 山口 英久 先生

「人生100年」と言われるようになり、長寿社会へとますます拍車がかかってきています。

健康でいるためには、食事ができ栄養を取ることが基本となります。つまり、食べることが、生きていくうえで必要不可欠です。

そして、食べるためには口を使い、歯で噛み砕き、舌を使い飲み込むことになります。しっかり食事がとれなければ、全身にも影響が出てしまいます。

歯周病と糖尿病は、共に生活習慣病であるため密接な関係があります。

歯周病がどのような病気か、歯を残すことがどのようなことなのか、糖尿病との関係についてお伝えできればと思っております。一人でも多くの方々に自分の歯を守るために、歯に興味をもっていただけたら幸いです。

 

〇歯周病(歯槽膿漏)はどんな病気?

 

歯周病は細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。進行すると歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の境目が深くなり、歯を支える土台(歯槽骨)が溶けて歯が動くようになり抜歯をしなければならなくなってしまいます。歯周病とは、歯垢(プラーク)の中の細菌によって歯肉に炎症を引き起こし、やがては歯を支えている骨を溶かしていく病気の事で、結果的に歯を失う原因となります。

 

〇歯周病の原因

お口の中の300~500種類の細菌が、ブラッシングが充分でなかったり、砂糖を過剰に摂取するとその細菌が作用し歯の表面に歯垢(プラーク)を形成します。この歯垢(プラーク)が虫歯や歯周病を引き起こします。歯垢(プラーク)は取り除かなければ硬くなり歯石に変化し強固に付着します。これはブラッシングだけでは取り除くことが出来ません。ここに細菌が入り込み歯周病を進行させる毒素を出し続けます。

次の事も歯周病を進行させる要因となります。

1, 歯ぎしり、くいしばり、かみしめ。

2, 不適合な冠や義歯。

3, 不規則な食習慣。

4, 喫煙。

5, ストレス。

6, 全身疾患(糖尿病、骨粗しょう症、ホルモン異常)。

7, 薬の長期服用。

 

現在では、歯周病は予防でき治療も可能です!!大切なのは予防・診断・治療、そしてメインテナンスです。歯周病の原因は歯垢ですから、それを溜めない、増やさないことが基本です。

 

〇メインテナンス

・歯周病治療のゴールは?=出血の無い歯肉にすること!!

・予防するために必要不可欠な事 : プラークコントロール=歯を磨くこと!!

( 歯垢を歯ブラシによってコントロールすること!歯磨きの徹底!! )

・歯ブラシ(歯磨き)の方法

バス法:歯に対してブラシを45度くらい歯肉の方へ傾けてブラシを細かく動かして磨く!!

・効率的なブラッシング

1, 歯ブラシは一筆書きになるように使用する。

2, 歯ブラシは舌側(内側)から磨き始める。

3, 食後に磨く。

4, 夜寝る前に一番丁寧に磨く。

・感覚を利用したブラッシング指導

1, 指の感覚 : まずは手用歯ブラシ、上手になったら電動や音波歯ブラシを使用する!

2, 歯肉の感覚 : 腫れや痛み等。

3, 舌の感覚 : 舌で歯の表面を触ってみる!ヌルヌルしていないかどうか?!

4, 触覚 : 指や舌で歯や歯茎を触って確認する!

5, 視覚 : 鏡を見てしっかり汚れを落とす!

 

〇まとめ

・虫歯と歯周病は細菌感染であること。

・虫歯と歯周病の怖さを知り、歯の大切さを知ること。

・歯ブラシ(歯磨き)の良い習慣を身につけること。

・歯周病治療をして、メインテナンスをしやすい環境にしておくこと。

・かかりつけ歯科医院の定期健診(メインテナンス)の受診をすること。

 

医・歯・薬連携と題して、三名の先生方にそれぞれの視点から解りやすくご講演して頂きました。

近年、歯科医療は歯の健康だけではなく、全身の健康寿命を伸ばすための医療としてとらえられるようになりました。歯周病と糖尿病の密接な関係をご理解して頂き、明日からの生活に少しでもお役に立てれば幸いです。

―食べること、健康であること、美しくあること 全ては人々の幸せのために!―

 

文責 太田新田歯科医師会 市民公開講座運営委員会 増田康展

第20回市民公開講座

第20回市民公開講座を開催します。

日時   令和元年12月1日(日)14:00~16:30
場所   太田市学習文化センター(太田市飯塚町1549-2)
テーマ  医歯薬連携 ~歯周病と糖尿病~
講演1  演題:「糖尿病と歯周病の深い関係」

講師:昭和大学江東豊洲病院 糖尿病・代謝・内分泌内科講師

   城山病院 糖尿病内科 李 相翔 先生

講演2  演題:「糖尿病と薬物治療」 ~服薬アドヒアランスの重要性~

講師:太田記念病院 薬剤部 山藤 満 先生

講演3  演題:「歯周病はどんな病気?」 ~末病から疾病へ~

講師:ヒデ・デンタルクリニック 院長 山口 英久 先生