第20回市民公開講座

第20回市民公開講座を開催します。

日時   令和元年12月1日(日)14:00~16:30
場所   太田市学習文化センター(太田市飯塚町1549-2)
テーマ  医歯薬連携 ~歯周病と糖尿病~
講演1  演題:「糖尿病と歯周病の深い関係」

講師:昭和大学江東豊洲病院 糖尿病・代謝・内分泌内科講師

   城山病院 糖尿病内科 李 相翔 先生

講演2  演題:「糖尿病と薬物治療」 ~服薬アドヒアランスの重要性~

講師:太田記念病院 薬剤部 山藤 満 先生

講演3  演題:「歯周病はどんな病気?」 ~末病から疾病へ~

講師:ヒデ・デンタルクリニック 院長 山口 英久 先生

 

第19回 市民公開講座 開催報告

太田市・太田新田歯科医師会

第19回 市民公開講座 開催報告

 

日時:平成30年11月10日(土)午後2:00~午後4:00

会場:太田市学習文化センター 視聴覚ホール (太田市飯塚町1549‐2)

主催:太田市・一般社団法人 太田新田歯科医師会

後援:太田市教育委員会・太田保健福祉事務所・太田市医師会・太田市薬剤師会

群馬県看護協会太田地区支部・太田栄養士会・太田歯科技工士会

群馬県歯科衛生士会東毛支部・群馬県歯科医師会

第19回 市民公開講座 開催報告 第19回 市民公開講座 開催報告

 

太田市の歯科訪問診療

~ 歯科医がおうちにやってくる ~

 

前日までの雨も上がり、とても穏やかな秋晴れの下、第19回市民公開講座が太田市学習文化センターにて開催されました。今年も昨年同様、講演会と落語の2部構成で、第1部の公開講座は、太田新田歯科医師会会員の田中靖人先生と武政道代先生のお二人にご講演して頂きました。

第1部公開講座

当院における歯科訪問診療の現状

~患者さんに寄り添った歯科訪問診療

最後まで口から食べることを目標として~

医療法人社団 聖医会 田中歯科医院   院長 田中靖人 先生

医療法人社団 聖医会 田中歯科医院・院長 田中靖人 先生

かかりつけ歯科医院として、かかりつけの患者さんが通院出来なくなってからも最後まで診療を続けていきたい。入院しても、在宅療養になってからも、施設に入居しても。入れ歯やインプラントを含め、口の中の状態は、今まで治療を行っていた、かかりつけ歯科医が一番把握しているはずだから。

田中先生の思いをお伝えされてから、ご講演がはじまりました。

〇歯科訪問診療の依頼理由

◆高齢者の方からの依頼

① 様々な疾患、後遺症や高齢による廃用性症候群(フレイル、サルコペニア、ロコモ)による通院が困難なため。

  • フレイル :健常から要介護へ移行する中間段階のこと。具体的には、加齢に伴う筋力の衰え、

疲れやすくなる等、年齢を重ねたことで生じた、衰え全般のこと。

  • サルコペニア :加齢や疾患により、全身の筋肉量が減少すること。筋力低下により身体機能の低下が起こること。(杖を突いて歩く、手すりが必要になる、ふらつく等)
  • ロコモ  :ロコモティブシンドロームの略称。骨・筋肉・間接・神経等の障害のために移動機能の低下をきたした状態。

② 認知症により徘徊の危険性があり、単独で通院困難なため。

③ 高齢者の方のみの世帯で交通手段がなく、物理的に通院が困難なため。

◆ 難病の方や障害をお持ちの方で、通院が困難な方

◆ 歯科医師のいない、歯科の診療科目がない病院、精神病棟等に入院中で外出できない方

◆ ひきこもりにより、自宅から出られない方

  • 必ずしも、誰でも、いつでも、どこでも、歯科訪問診療の対象者になるわけではありません。歯科訪問診療を受診するためには、継続的に通院出来ない客観的な理由が必要です。

〇歯科訪問診療を依頼してくれる方

◆ ご本人、ご家族

◆ 介護支援専門員(ケアマネージャー)

◆ 施設の施設長、看護師、介護士

特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、高齢者専用賃貸住宅、デイサービス等

  • 社会福祉協議会、地域包括支援センター、市役所、民生委員の方
  • 訪問診療を行っている医師、看護師
  • 歯科医師会、歯科訪問診療を行っていない歯科医院など
  • 本人の歯科訪問診療の受診希望があれば、本人、家族、近親者関係者、誰でも依頼可能です。

歯科訪問診療の症例を、スライドを用いて説明

症例①:73歳女性、歯牙破折による疼痛、欠損による咬合困難を主訴とし、精神疾患と高齢による廃用性症候群により、車いすのため独歩通院困難であり、高齢者専用賃貸住宅の施設長より依頼。

保存不可能な残根を抜歯、ブリッジ作製後、口腔ケアにより状態の維持を図る治療計画。

症例②:80歳男性、義歯人工歯脱落。認知症による徘徊の恐れがあるため通院困難。食事介助中、介護士が発見し依頼。義歯修理にて継続使用とする治療計画。

症例③:95歳女性、義歯不適合による疼痛。大腸がんの全身転移、高齢による廃用性症候群により

車いすのため通院困難であり、群馬県立がんセンターの担当医より紹介依頼。慢性下顎骨骨髄炎による腐骨形成。がんセンター担当医と相談し、義歯調整、投薬によりQOL(クオリティーオブライフ)の維持を図る治療計画。

症例④:88歳男性、持続性の顎の痛み、口臭と味覚異常。末期がん(前立腺がん)、廃用性症候群により寝たきりのため通院困難であり、高齢者専用賃貸住宅の施設看護師からの依頼。太田記念病院歯科口腔外科に感染部除去手術を依頼し、手術後の経過観察、術後管理、その他必要に応じた処置を行い、QOL (クオリティーオブライフ)の維持を図る治療計画。

まとめ

歯科訪問診療でも通常の歯科外来診療とほぼ同じ治療を行う事が可能です。しかし、全身的な状態

により外来診療と全く同じ診療内容とはいかないことが多くあります。患者さんや、そのご家族の希望と実際に行える治療内容に隔たりがある場合も少なくありません。全身的な状況により、治療内容にかなりの差が出てしまう事が現実です。お口の中で気になる事がございましたら、先ずは早めに、周りの方にご相談してみてください。

歯科訪問診療では、特に局所麻酔を行う場合は、治療が難しいことが多くあります。口の中の『終活』ではないですが、少しでも元気なうちに、現在のかかりつけの歯科医院にて外来診療を受診して、しっかりとした歯科治療を受けていることが望ましいと思います。寝たきりになってしまったり、通院困難になる前に、常により良い歯の状態、口の中の状態にしておくことが一番大切であるとお話しされ、ご講演を終わられました。

 

「歯科訪問診療の実際」

~歯科訪問診療をより深く知って頂くために~

あおい歯科  院長 武政道代 先生

あおい歯科  院長 武政道代 先生

口には、話すこと、食べること、息をすること、そのような大切な機能があります。その大切な口のトラブルを減らすこと、口の機能を維持すること、疾病により障害が残ってしまった場合に、その障害と上手に付き合うことで療養生活が楽になる可能性があります。

歯科訪問診療には、そのような生活支援の側面もあります。治療だけでなく、生活支援としての歯科訪問診療の内容についてもお話しさせて頂きたいとご挨拶されご講演頂きました。

 

〇口腔・咽頭ケアによる吸引回数の減少

施設に入院されている患者さんが、痰の吸引を嫌がると看護師さんから相談を受け、歯科訪問診療に使用する専用の清掃器具を用いて、口腔・咽頭ケアを行うことにより吸引回数の減少が認められました。

困難だった処置や治療が、ちょっとしたきっかけでスムーズに行えるようになった一つの症例をお話しされました。

〇歯科訪問診療の訪問先の割合(あおい歯科調べ)

施設:51%、居宅:27%、病院22% 

〇歯科訪問診療の原則

1人で通院が出来ない方

 介護認定を受けている・難病や病気のため福祉医療を受給している・怪我や病気で入院・療養中

〇年齢(あおい歯科調べ)

20代から90代まで訪問診療を行っており、最も多いのは80代、続いて70代、60代、90代と徐々に減少、その他年齢が若くなるほど減少傾向にある。

〇費用:訪問診療料

1割負担 訪問診療料 1040円 + 歯科治療費、指導料 など

〇依頼内容(あおい歯科調べ)

義歯に関する依頼(不適合、修理、新製など)が最も多く、次に口腔内の疼痛、歯の動揺、歯の破折、口腔ケア、歯の脱落、歯肉腫脹・出血 など

〇歯科訪問診療の患者さんの基礎疾患(あおい歯科調べ)

・脳疾患(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血など)

・心疾患(心不全、心筋梗塞、心室細動など)

・パーキンソン病、パーキンソン症候群

・骨折(腰椎、大腿骨)・膝関節・腰椎変形症

・肺疾患・腎疾患・難病・がん・怪我

・認知症(アルツハイマー型、レビー小体型、血管性など)

 

2014年厚生労働省患者調査では、高血圧症に続き認知症の患者さんが第2位!!

認知症:462万人、軽度認知障害:400万人、認知機能障害のない高齢者:2217万人

 

〇あおい歯科では、歯科訪問診療の際、認知症状があっても可能かどうか相談されることが多くあります。意思の疎通が出来ない、口を開けていられない、座っていられない、日によって体調や機嫌に変化がある等、ご家族の方は様々なことが心配ですが、その日、その時の状況により、診療内容も合わせて対応しております。認知症は進行性の病気で、緩やかに進行していきます。進行性の病変は回復できませんが、使わずに衰えた機能は回復させることができます。

施設・自宅での療養生活において、食事・歯磨き・着替え・入浴などに介助が必要となります。歯の痛みや、入れ歯の修理や調整だけでなく、食事が上手くできなかったり、むせたり、肺炎を繰り返していたりと、どうしたらよいかわからない時には、歯科訪問診療にてご相談下さい。食を支え、生活を支え、治療へと導くためにも、歯科訪問診療をご利用頂きたいと市民の皆様にお伝えしてご講演が終焉となりました。

 

落語・講演

落語・講演

少し休憩を挟んで、一般社団法人 落語協会 金原亭世之介(キンゲンテイヨノスケ)さんの落語(演題

:かんにんぶくろ)が始まると、会場は大きな笑い声でにぎわい、第1部公開講座で少し疲れた頭がスッキリとして、リラックスした笑顔を取り戻したようでした。

 

金原亭世之介さんは、現代感覚を生かした本格古典派の落語家であり、大正大学 表現文化学科

客員教授・俳人・ミュージシャン・執筆・講演・舞台・新作落語もこなすマルチタレントであります。

 

落語に続き、言語誘導学についてご講演して頂きました。会場から有志として薬剤師会の照井先生にご協力いただき、動体誘導を体験して頂きました。

世之介教授はステージに上がった照井先生の身体を前屈させると、無言で前屈した時よりも、褒めたり、大きな声で挨拶した後で前屈した時の方が+5cmも前屈出来ました!! 挨拶しなかったり、マイナス思考のストレスを加えた後に前屈をしてもらうと、元に戻ってしまいました。外部誘導の効果とのことで、他にも О(オー)リングの心理的要因についてもお話しして頂きました。会場内は隣同士、指でつくった輪を引っ張り合う笑顔の絶えない光景のまま、第2部 落語・講演が終了いたしました。

第17回市民公開講座

来年は、記念すべき第20回目の市民公開講座となります。今年同様、市民の皆様が笑顔で会場を後にして頂けるような公開講座を開催し、歯と口と全身の健康を維持し、支える事が出来れば幸いです。

 

文責 太田新田歯科医師会 市民公開講座運営委員会 増田康展

第17回市民公開講座開催のご案内

介護保険が導入された平成12年から始まった太田新田歯科医師会の市民公開講座、今年からは太田市との共催となり、より細やかなテーマに対応できるものと期待しています。

さて、今年は「摂食・嚥下障害とリハビリテーション」を題材に講座を開催します。健康・長寿の国日本ですが、高齢者の健康寿命延伸こそが医療・介護のテーマです。そこで今回は国内の第一人者である馬場尊先生、足利赤十字病院リハ科の尾崎健一郎先生をお招きし、その病態からリハの実際までわかりやすく解説していただきます。

この講座で正しい知識を得、皆様の健康寿命の延伸に役立てていただければ幸いです。

第17回市民公開講座開催のご案内

第16回市民公開講座 開催報告

太田新田歯科医師会 

16回市民公開講座 開催報告

 

日時:平成27年11月14日(土)午後2:00~午後4:00

場所:太田市学習文化センター(太田市飯塚町1549-2)

主催:一般社団法人 太田新田歯科医師会

口の中のがんの怖さ

~手術しますか?それとも予防しますか?~

小雨が降り続く寒い陽気ではありましたが、足元の悪い中多くの市民の方々にお集まりいただき、第16回市民公開講座が開催されました。

今回は、群馬大学大学院医学系研究科顎口腔科学分野教授の横尾 聡 先生を講師としてお招きし、口の中の「がん」をテーマに御講演して頂きました。

 

口の中にできるがん「口腔がん」は、舌がん、上顎歯肉がん、下顎歯肉がん、頬粘膜歯肉がん(頬の内側の粘膜のがん)、口底がん(下の歯肉と舌の間のがん)、硬口蓋がん(上顎の真ん中の硬いところのがん)の6カ所をいいます。

口腔がんは、直接見ることができるため初期症状を発見しやすいですが、認知度が低く進行するまで放置されやすい病気です。標準治療は手術療法しかないため患者さんにとっては非常に大きな負担がかかります。しかし、早期の段階で適切な治療を行えば、9割は完治が見込める病気です。

口腔がんの年間罹患者数は全国で7,000人程おり、がんの中では頻度は少ないですが、進行した口腔がんの手術においては、顔面が欠損するのでQOL(Quality Of Life)が低くなってしまいます。しかし、血管縫合の技術の進歩によって再建手術を行うことにより、社会的生命の回復が可能になりました。ただし、切除手術と再建手術は同時に行うので手術時間が10時間以上かかることは珍しくありません。

群馬県では、口腔がんを扱っているのが群馬大学だけであり、そのうちの9割を口腔外科、顎顔面外科が扱っています。2013年においては年間121人の患者数があり全国で1位となりました。また、横尾教授が赴任されてから7年が経過し、以来行った200例以上の手術は1例の失敗もないという事でした。

講演では、口腔がんの手術写真を動画で紹介しながら、がんが進行すると顎の骨を削ったり、鼻や顔の皮膚、首のリンパ腺なども切り取る必要があり、「口の中の物をちょっととればいいというものではなく、非常に怖いものだという事を身に付けてほしい」と話されました。

口腔がんは約70%が歯科医院で発見され、全体の約80%が口腔外科で診療されています。また、喫煙や飲酒は発生率を高めることがわかっています。

発がんの前兆をキャッチするために気をつけてほしい3つの口腔粘膜疾患があります。食べ物を口の中に入れた時にしみる口内炎や、板状や斑状に白くなる口腔白板症、主に頬粘膜に見られ白色にレース状になる口腔扁平苔癬です。口内炎の多くは、1,2週間で治りますが、長く続く場合は要注意です。がんは小さいと痛みを感じないことが多く、そのために発見されにくく放置されてしまう病気です。がんが小さい早期の段階なら30分程度の簡単な手術で済み、転移する前の初期の段階で発見する事が治療の負担を大きく減らすことになります。毎日1回は口の中をチェック。日頃から口の中の事に注意して頂くことが早期発見につながります。そのためには、「禁煙節酒」に努めること、口腔がん検診を受診すること、定期的に歯科医院で検診すること。と市民の皆様にわかりやすく、大きな手術にならないよう予防することの大切さを説明され、終演となりました。

 

文責 太田新田歯科医師会 市民公開講座運営委員会

委員長 増田康展

第17回市民公開講座 開催報告

太田市・太田新田歯科医師会

17回市民公開講座 開催報告

日時:平成28年11月12日(土)午後2:00~午後4:00

場所:太田市学習文化センター(太田市飯塚町1549-2)

主催:太田市・一般社団法人 太田新田歯科医師会

~いつまでも楽しく食べるために~

前日までの雨も止み、秋とは思えない程の暖かく素晴らしい晴天に恵まれ、 第17回市民公開講座が太田市学習文化センターにて開催されました。今年から太田市との共催となり、今後はより細やかなテーマに対応出来ると思っております。

今回は「摂食・嚥下障害とリハビリテーション」を題材に致しました。高齢者の健康寿命延伸こそが医療・介護のテーマであります。そこで国内の第一人者である馬場尊先生、足利赤十字病院リハビリテーション科の尾﨑研一郎先生をお招きし、その病態からリハビリテーションの実際までわかりやすく解説していただきました。

第17回市民公開講座1

第17回市民公開講座2

第17回市民公開講座3

第17回市民公開講座4

第17回市民公開講座5

先ずは、馬場尊先生の御講演から始めて頂きました。

~その1:咬んで飲むしくみを正しく知ろう~

食事をする事とは栄養をとる事+αであり、αとは、社会的行為(冠婚葬祭、会合、家族団らんなど)、充欲的行為・娯楽的行為(美味しいものを沢山食べて満足する)、運動性(運動機能を維持する)であります。いつまでも楽しく食べるためには、この+αが必要となります。

食べるという行為は、咬んで、飲む事であり、咬んでから飲んだり、咬みながら飲んだりしますが、ヒトの咽喉は設計ミスであり、ヒトは誤嚥する動物であるという事です。

(液体)嚥下のメカニズムは、咽喉は、安静時は気道、嚥下時は食物道となります。嚥下が始まると気道は素早く食物道に切り替わり、この間に食物は食道に送り込まれます。嚥下が終わると、咽喉に食物はなく食物道は気道に戻ります。この間約0.5秒です。咀嚼時、嚥下が起こる前には気道に食物があり、気道が食物道に切り替わっておりません。咀嚼によって嚥下が可能になった食物(食塊)を能動的に舌の後方(咽頭)へ送ります。私たちは飲む事(液体嚥下)と食べる事(咀嚼嚥下)の2つの嚥下様式を使い分けています。

○歳をとるとどうなるか?

加齢の影響その1 食欲が低下し食べにくくなる。エネルギー消費が減少、味覚・臭覚の低下、残存歯が減少し、筋肉が効率よく動かなくなり口腔の運動機能が低下する。

加齢の影響その2 咽頭の位置が2~3cm位置が下がり咽頭腔が大きくなる。嚥下運動の時間がかかる。口と咽喉の協調性が悪くなる等。

○どのように誤嚥を防ぐか?

誤嚥とは、食物や唾液などが声門を超えて気道に侵入する事であり、ごく少量の誤嚥(唾液)は健常人でも起こる。

誤嚥は、咽喉が気道の時に食物がある(嚥下開始の前や嚥下終了の後)時や、気道に隙間がある(嚥下の最中)に起こりやすい。最も誤嚥しやすいものは、液体と固形物の混合物(鍋物やスイカ)

である。健常者の10~20%、気道の防御機能が弱っている人は不顕性誤嚥(silent aspiration)という誤嚥してもむせない事がある。そして、誤嚥をすることにより肺炎のリスクが増える(誤嚥性肺炎)。

○誤嚥しないためには?

・顎を上げて食べない:顎を軽く引く事が良い。

・すすらない:熱いものを控える、スプーンを口腔内に入れる、口に物を入れる時に吸わない・呼吸しない。

・一口ずつ飲む:ゴクゴク飲まない。

・硬いものは控えるか、小さく切る。

・固形物と汁物を一緒に取り込まない(鍋物等)

・咬みながらしゃべらない、しゃべらさない。

・食物を小さくする(咬む回数を減らす)。

・キザミあんかけ食(咀嚼し終わった形態、丸呑みできる食物<カレー等>)にする。

◎高齢者は誤嚥する。

・咽喉の機能は低下するという事を自覚する。

・若い頃と同じように食べない。

・口腔内のメインテナンス(食後、寝る前の歯磨き・定期的な歯科検診)が必要。

◎呼吸機能を維持する。

・大声を出す、大声で笑う(カラオケ、スポーツ)

・ハフィング(お腹から息を吐き出す)

・のどの筋力トレーニング

(シャキア訓練<寝ながら肩甲骨を床から離さないように首だけを上げる>)

◎EAT10(イートテン・嚥下スクリーニングツール<ホームページ参照>)

以上の事を参考に、是非日々の生活をより良い食生活にして頂きたいとの事でした。

 

続いて、尾﨑研一郎先生の御講演を始めて頂きました。

~その2:口腔ケアと咀嚼「唾液で潤った口で咀嚼しましょう」~

現代人は食事の際、昔の人に比べ咀嚼回数が少ない事がわかります。

ある調査によると、弥生時代は一食の咀嚼回数3,990回・食事時間51分、鎌倉時代は2,654回・29分、20世紀初頭は1,420回・22分、現代は620回・11分という結果が得られました。調理の発達により食べ物が柔らかくなり、顎の筋肉や骨の成長・発育に影響を及ぼしています。特に発達期の子供は、食事の際のある程度の負荷が筋肉や骨にかかることにより発達していくが、柔らかい食事により発達しなくなり顎が小さくなっています。

では、硬い物を咬むことがよいことなのでしょうか?

高齢者に関して言えば、むしろ良くないことと言えます。高齢者の体(歯も)は衰えているからです。硬い物を咬むことにより歯がすり減ったり、折れたり、入れ歯が割れたり、顎の骨にも悪影響が起こります。そうならない為には、自分が無理せずに食べられるものを食べることが重要です。

上手に咬むためには、唾液も必要となります。

唾液の役割は、発音しやすくし、食べ物の味を際立たせ、口腔内の洗浄や抗菌作用、食べ物の消化を助ける作用などがあります。年を取ると唾液の量も減少します。唾液が少なくなると口腔乾燥症になり、口の中のいろいろなトラブルが発症します。

唾液が少なくなった(出にくくなった)方は、唾液腺のマッサージをして唾液が出やすくなるように改善する必要があります。

○唾液腺のマッサージ

・耳下腺への刺激(10回)

人差し指から小指までの4本の指を頬にあて、上の奥歯のあたりを後ろから前へ向かって回す。

・顎下腺への刺激(各5回ずつ)

親指を顎の内側のやわらかい部分にあて、耳の下から顎の下まで5カ所位を順番に押す。

・舌下腺への刺激(10回)

両手も親指をそろえ、顎の真下から手をつきあげるようにゆっくりグーっと押す。

口の中で食べ物を上手によく咬むことにより、唾液も多く出てきます。一口30回咬むと良いと言われています。しかし、咬み過ぎると飲み込みづらくなってしまう事がありますので、飲み込みやすい状態になった時に飲み込みましょう。

飲み込むときには、呼吸を整える必要があります。食事をする前にはリラックスして、姿勢を正しましょう。

いつまでも楽しく食べるためには、身体や口の周りのストレッチをすることが大切です。

○ゆったりとした姿勢で行います。

・手をお腹に置き、鼻から息を大きく吸い込み口をすぼめて大きくゆっくり吐く。

○深呼吸しながら首の運動

・首を左右に傾けたり、左右に動かしたり、大きく回したりする。

続いて、口のストレッチを行います。

○個人個人にあったペースでリズミカルに行いましょう。

・口を横に引く。唇を突き出す。頬を膨らます。息を吸い込む。アーっと声を出す。

 

このような比較的簡単なストッレチですので覚えて実践して下さい。そしてお口の中の環境を整え楽しくお食事をして頂くためにも、定期的な歯科検診が必要です。という事を付け加えて楽しい講演が終演となりました。

 

文責 太田新田歯科医師会 市民公開講座運営委員会

委員長 増田康展