おしゃぶりについて

小森谷歯科医院
小森谷和之

最近衝撃的なことが起きました。

3歳時健診に行った時のことです。
その子は、あきらかな開口でした。
開口というのは、奥歯が噛んでいるのに前歯が噛まないという状態です。
「これは…」と思い
「お母さん、おしゃぶりをしていませんか?」と問いました。するとお母さんは
「はい、しています」
「お母さん、〇〇ちゃんは前歯が咬みませんね。これはおしゃぶりをしているせいだと思います。やめさせたほうがいいと思います。」と言いました。すると
「この子はおしゃぶりが好きでやめませんし、やめる気もありません。」とのことです。
何度かお話しましたが、どうもお母さんにやめる気がないようなので
「早めにやめるようにして下さい。」と言ってその時は終わりましたが
どうも釈然としません。

実は、私は4年ほど前から市のほうでやっている母親教室の講師をさせていただいていて
その中でも、おしゃぶりに対する危険性を訴えていたのです。

自分でも不安に思い、ネットで検索すると
日本小児科学会と小児歯科学会の保健検討委員会の見解
「おしゃぶりすることの利点としては精神的安定、簡単に泣き止む、静かになる、入眠がスムース、母親の子育てのストレスが減るなどが挙げられる。おしゃぶりの宣伝に使用されている「鼻呼吸や舌や顎の発達を促進する」は現時点では学問的に検証されていない。
欠点としては習慣性となりやすく、長期間使用すると噛み合わせが悪くなる、子どもがどうして泣いているのかを考えないで使用する、あやすのが減る、ことば掛けが減る、ふれあいが減る、発語の機会が減るなどが挙げられる。」
という意見の他に
「赤ちゃんの「おしゃぶり」の是非、歯並びという見出しで
使うことの是非で意見が分かれる、赤ちゃんのおしゃぶり。そのおしゃぶりについて、日本と米国の小児医療団体は何とそれぞれ全く逆の意見を発表しました。本当に歯並びは悪くなるのでしょうか?
米国のごく最近の調査では、特に眠っているときのおしゃぶりの使用で乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが減らせると発表され、話題を呼んでいる。」
という意見に始まり、おしゃぶり擁護の意見の多いこと。
「あのお母さんはこれを読んだのか?」と…

私は考えました。
おしゃぶり擁護派は
「自分の子供に使った、問題なかった」などの自分の行動に対する擁護的な発言で、客観的な一般的な意見、とは言いがたい。
また「擁護することで得になる人はいるが、否定的意見で得になる人はいない」ということ、第一なんで良くないかも、といわれるようなものを危険を犯してまで我が子に使うのか

そんな観点から、どうもおしゃぶりはやめたほうがいいのではと思っています。
勿論、先の小児科学会と小児歯科学会の保健検討委員会の意見を尊重していることもありますが、

さて、結論としておしゃぶりの使い方について先の検討委委員会の見解を述べます。
おしゃぶりは出来るだけ使用しない方がよいが、もし使用するなら咬合の異常を防ぐために、次の点に留意する。

  1. 発語やことばを覚える1歳過ぎになったら、おしゃぶりのフォルダーを外して、常時使用しないように
    する。
  2. おそくとも2歳半までに使用を中止するようにする。
  3. おしゃぶりを使用している間も、声かけや一緒に遊ぶなどの子どもとのふれあいを大切にして
    子どもがして欲しいことや、したいことを満足させるように心がける。子育ての手抜きとし便利性からだけでおしゃぶりを使用しないようにする。
  4. おしゃぶりだけでなく指しゃぶりも習慣づけないようにするには、(3)の方法を行う。
  5. 4歳以降になってもおしゃぶりが取れない場合は、情緒的な面を考慮してかかりつけの小児科医に
    相談することを勧める。

以上です。

お口の中を見てみよう

口の中は、普段見ているようであまり見ていない方が多いのではないでしょうか?
今日は、お聞きの皆さんに是非ご自分の口の中をよく見ていただきたいと思います。特に最近歯科医院に、行かれてない方は要チェックです。
今、車の運転や手が離せない方は、良く聞いてあとで見てください。
では鏡の前で、まずは舌を出してアッカンベ~をしてみましょう。舌の色はどうですか、薄いピンク色が理想です。小さいザラザラした感じは味ライといって味を感じる所です。もし大きめなデキ物や、ぐちゅぐちゅしているデキ物、変に黒っぽい、真っ赤など、他にも気になる所があれば、歯科で診てもらいましょう。
舌に黄色い物がこびり付いている事があります。舌の苔と書いてゼッタイと言います。ゼッタイは古くなった組織、食べカス、細菌の塊です。口臭の主な原因にもなります。専用のブラシもありますが、良く濡らした歯ブラシで痛くない程度でこすって綺麗にしましょう。
次に歯を合わせてイ~をしてみましょう。歯ぐきを見てみましょう。こちらも薄いピンク色が理想です。赤く腫れていたり、歯ブラシの時に同じ所から出血していたら心配ですね。良い歯ぐきは、良く見るとスティップリングといってミカンの皮のようにツブツブしています。引き締まっているということです。

また口を開けてみましょう、歯の根元の周りに黒い、もしくは軽石のような歯石がある方はもう歯ブラシで落ちませんので歯科でとってもらいましょう。そして穴があいている、あいていなくても最近甘い物、冷たい物に妙にしみる、噛むと痛む場合は、歯の間など見えない所で虫歯の可能性もあります。
入れ歯をしている方で、ご自身の歯がある所で特に金属等のバネがかかる歯は特によく見てみましょう。
今日は、本当に簡単なセルフチェックの仕方をお話しました。今日の話を聞いて該当する方や、これ以外にも、気になった方、心配になった方は早めに歯科医院に行って詳しく診てもらいましょう。
また、大丈夫かなと感じた方も定期検診を受けていきましょう。

歯科は一生のつきあい

 

                  太田新田歯科医師会
公衆衛生委員会担当理事
大木歯科クリニック 院長
大木晴伸

むし歯、歯周病、入れ歯 等 今だ何か問題が起きてから歯科にかかる方がまだまだ多いようです。しかし問題が出る前の予防 さらに言えば歯が生える以前、母親のおなかにいる時から予防は必要であり、そこから歯科は患者さんに関わる必要があります。
たとえば、妊娠中に服用した薬が歯の形成を妨げることもあります。またタバコなども大いに影響があります。
また生まれたばかりの赤ちゃんはミルクで育ちますが、母乳と人工乳では大きな違いがあります。
それは 栄養や免疫の事もありますが、乳首の違いも大きいのです。人工乳を与える哺乳瓶の乳首はくわえれば簡単にミルクが出てきますが、母乳の場合は赤ちゃんが一生懸命に吸わなければ出てきません。さらにただ吸うだけではなく、舌が乳首をしごくようにしなければならないのです。それにより子供の口の周りの筋肉が鍛えられるのです。
また母乳であっても 乳糖といってむし歯の原因にもなりうります。よってだらだらと与えるのではなく、時間を決め授乳する。それにより空腹感を覚え、飲むときにしっかり飲む それが生活習慣を整えることにもつながります。
子供が幼児期になると、なるべくこぼさないようにストローを親は使わせますが、ストローを使いすぎると口の周りの筋肉が収縮してばかりいて そのため歯列弓つまり顎が細くなりすぎてしまいます。
飲むものも 100%果汁であっても 糖分や酸がむし歯に関わります。
このように歯が生える前から お乳の飲み方 母乳でも飲むタイミング、断乳の時期 離乳食 等歯科の係わりが 健全な成長に大きく影響します。
幼児期に歯が生え 小児期 青年期 成人期のむし歯予防 歯周病予防も 時代や また研究が進むにつれ その考え方 やり方も変わります。その時期しっかり歯および歯肉を守り、きちんと咬み 栄養を摂取することが、体全体の健康に大きく寄与します。
これらの口の健康保持がうまくいけば、老齢期に入れ歯を入れなくて済みます。入れ歯は咬みづらいということだけでなく、食事もおいしくなくなります。また、アルツハイマー病の原因物質と言われるアミロイドβは、咬合不調和つまりかみ合わせが悪いことにより、大量に増加し、反対にかみ合わせの改善により減少します。つまりきちんと咬めることがボケの防止に大きく役立つわけです。
このように一生歯科の係わりが必要で、歯はただ食べ物を噛み砕くというだけでなく、健康維持に重要な役割があります。歯や歯周病の治療は時間がかかり、一度歯科にかかると、しばらく通院しなくてはならない。何より 歯を削るときのあの「キーン」という音がたまらないという方はとても多いと思います。しかし風邪を引いた時は 自宅で安静にしていれば 自然に治ることもありますが、歯は自然治癒はありません。早期発見早期治療をすれば、あの「キーン」という音もあまり聞かずに済みます。是非定期健診を欠かさず、口の中やそれに伴い体全体の健康維持に努めてください。

 

虫歯・歯周病予防に効果的な歯磨き

日本人の歯磨き回数を調べた調査によると12回以上歯磨きをする人は昭和44年では約2割でしたが平成17年には約7割に増加しました。
しかし虫歯を持つ人の割合は
524歳では減少傾向にあるものの、25歳以降では横ばいなのです。諸外国に比べなぜ一生懸命歯を磨く人が増えたのに虫歯は減らないのでしょうか?
これは、
1990年代半ば頃まではフッ素配合歯磨き剤の割合が他の諸外国に比べて低かったというのが原因といわれています。

現在市販で売られている歯磨き粉のほとんどにはフッ素が入っていますので、毎日の歯磨きでどのように歯磨き粉を使うと効果的な虫歯予防になるのかについてお話します。

フッ素の効果は簡単にいうとフッ素が歯に取り込まれ酸に強い歯を作る、虫歯菌が酸を作るのを抑制するという働きがあります。
このような効果が得られるためにはフッ素濃度と比例します。日本では歯磨き粉に含まれる割合が法律で定められているため十分に効果を期待するには1度の歯磨きで使う量が重要となります。
効果的な量としては
1g以上の使用が推奨されています。2cmほどのはぶらしであれば2/3程度が目安です。歯ブラシをする前はフッ素濃度が薄まらないようにお口をゆすがないこと。歯磨きを始めるときは虫歯になりやすい奥歯から磨くこと。歯磨き後は約10cc位の量でお口の中をリンスするようにうがいしましょう。フッ素が歯の表面に定着して効果を発揮するには約2分の歯磨きが必要です。
長すぎてもフッ素の濃度が薄くなってしまうので丁寧にゆっくり磨きたい人は最後の
2分で歯磨き粉を付けて磨くとよいと思います。できれば歯磨きのあとはフッ素効果を維持するために約2時間は飲食をしないことを勧めます。

この方法は虫歯予防に対するご家庭でできる効果的なフッ素の使用法ですが、歯周病の予防では歯と歯肉の間の部分の歯垢の除去が重要です。これらの部分は歯ブラシが届きにくい場所でもあり、歯ブラシの毛先が歯肉に入り込むように45°くらいに当てること、歯間ブラシ、フロスなども併用し丁寧に時間をかけじっくり磨くことが大切です。

毎日の歯磨きもこんな工夫で虫歯、歯周病予防が上がります。ご家庭でできる虫歯、歯周病予防法の第1歩として皆様も今日から試してみてはいかがでしょうか。