睡眠時無呼吸症候群

担当 小森谷歯科医院

小森谷和之

イビキを習慣的にかいている日本人は、少なくとも2000万人以上いるのではないかといわれ、そのうちの約10%にあたる200万人は寝ている間に数十秒あるいは数分にも及ぶ呼吸停止を一晩に何十回あるいは何百回と繰り返している「睡眠時無呼吸症候群」の患者だといわれています。

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrom:SAS)とは、睡眠中に呼吸が止まる、または浅く弱くなり、それによってさまざまな日常生活の障害を引き起こす疾患です。また、最近ではSASが循環器疾患との深い関わりがあることが明らかになってきています。

SASの病態には大きく分けて2タイプあります。一つ目は、呼吸運動はあるが、上気道(空気の通り道)が塞がる、または部分的に狭くなることで起こる閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)。二つ目は、呼吸中枢の以上による中枢性睡眠時無呼吸(CSA)。閉塞性の場合、肥満者はそうでないものの3倍以上のリスクがあるとされています。中枢性の場合、慢性心不全などにより心機能が低下してくると発症するリスクが高くなるといわれています。

どちらにしても、夜間に繰り返し起こる無呼吸により、血液中の酸素が低下したり、頻繁に中途覚醒が発生し、身体に悪影響を及ぼすとともに、睡眠を妨げ、日中の眠気を増加させます。家族などの同居者がいない場合、この病気の発見は非常に遅れます。特に自覚症状が弱い場合は誰にも発見されないため、その状態が徐々に悪化して深刻な問題を引き起こしてしまいます。

たとえば、自動車の運転中に強い眠気に襲われ、運転操作を誤って、事故を起こすといったケースです。そしてこのような事故をきっかけに初めてこの病気に気付くといったことは少なくありません。また、同居者がいても、この病気に関する情報を持っていなければ、単に「いびきをかきやすい性質」としか認識されず、治療開始が遅れてしまうこともあります。

さて治療ですが、大きく分けて二つ睡眠時にC-PAPという機械で圧をかけて気道を確保する方法と、下あごを前方に誘導する口腔内装置・スプリントを入れて寝る方法があります。なんで歯科医がこの話をするかというとこのためです。

SASの診断は内科医にしていただかなくてはいけませんが、スプリント療法が適応と診断医の判断によりその依頼を受けた場合に歯科でスプリントを作ることができるのです。

お子様の矯正歯科治療開始のタイミング

自立支援医療機関 顎口腔機能診断施設

ファミリー歯科・矯正歯科クリニック

伊谷野 秀幸

雑誌における矯正歯科治療特集やインターネットの矯正歯科治療サイトをみて、幼児期(生後1年から学齢に達する6歳までの期間)にお子さんの歯並びを心配してカウンセリングを受けられる方が増えています。「大人になってからの矯正治療で永久歯を抜歯する治療を避けるために、乳歯のみの時期から治療スタートしましょう」というフレーズを見て、ご両親の恐怖心はピークに達してしまうようです。ほとんどのケースの場合、お母さんが自分自身を責めている様子が多く見られます。カウンセリングにおいてご両親に「まだ、今の時期では早すぎます。治療は必要ありません。心配しなくても大丈夫。治療が必要な時期になるまで経過を見ていきましょう。」とお話をすると自責の念から解き放たれ、安堵の表情をうかべ帰宅されます。

そこで、今回は解りにくい子供の矯正治療のタイミングについて解説したいと思います。子供の矯正歯科治療は専門性が高い医療機関ほど「第一期治療」と「第二期治療」の2段階で治療を行います。前歯と6歳臼歯(第一大臼歯)のみが永久歯になっている時期(8~10歳ころ)に始める矯正治療を「第一期治療」といいます。また、「第一期治療」のあと、全ての歯が永久歯に生えかわった時期から、「第二期治療」として、ブラケットという装置を歯の1本1本に着けてワイヤーで治療をする場合があります。「第一期治療」から始めることで良い治療結果が得られたり、患者さんの負担を軽くできたり、また永久歯の抜歯をせずに治療を終了できる可能性が高まります。

成長期にある子供の矯正歯科治療を行うかを判断する時期は、「歴年齢が7歳になっていること」と「前歯と6歳臼歯(第一大臼歯)のみが永久歯になっていること」です。この時期に不正咬合があった場合は、カウンセリングを受ける必要があります。その後、治療時期を不正咬合の症状を考慮して決定します。症状の違いによる治療開始時期は叢生(乱ぐい歯)の場合は7歳くらい、下顎前突症(受け口)の場合は7~8歳くらい、上顎前突症(出っ歯)の場合は9~10歳くらいから治療を始めるのが最も効果的に治療が進められます。したがって幼児期はまだ「第一期治療」を行うか判断する前の時期なのです。

矯正歯科治療の開始を時期するに際して、私は心の発育も考慮する必要があると思っています。お子さんが7歳の頃は小学校に通学を始める時期です。お子さんの生活環境は著しく変化しており、矯正治療を行うには小学校生活に慣れていることが必要と考えます。最もよい時期に治療を始められるように、お子様の歯並びやかみ合わせについて、7歳になったら矯正歯科専門ドクターの診察を受けて、治療を受ける本人、ご両親、ドクターの3者で治療時期をよく検討することが大切であると思われます。

歯科は一生のつきあい

太田新田歯科医師会

公衆衛生委員会担当理事

大木歯科クリニック 院長 大木晴伸

 

むし歯、歯周病、入れ歯 等 今だ何か問題が起きてから歯科にかかる方がまだまだ多いようです。しかし問題が出る前の予防 さらに言えば歯が生える以前、母親のおなかにいる時から予防は必要であり、そこから歯科は患者さんに関わる必要があります。

たとえば、妊娠中に服用した薬が歯の形成を妨げることもあります。またタバコなども大いに影響があります。

また生まれたばかりの赤ちゃんはミルクで育ちますが、母乳と人工乳では大きな違いがあります。

それは 栄養や免疫の事もありますが、乳首の違いも大きいのです。人工乳を与える哺乳瓶の乳首は、くわえれば簡単にミルクが出てきますが、母乳の場合は赤ちゃんが一生懸命に吸わなければ出てきません。さらにただ吸うだけではなく、舌が乳首をしごくようにしなければならないのです。それにより子供の口の周りの筋肉が鍛えられ、顎の成長にも大きな影響があります。

また母乳であっても 乳糖といってむし歯の原因にもなります。よってだらだらと与えるのではなく、時間を決め授乳する。それにより空腹感を覚え、飲むときにしっかり飲む 飲んだら歯磨きを行い、それが生活習慣を整えることにもつながります。

子供が幼児期になると、なるべくこぼさないようにストローを親は使わせますが、ストローを使いすぎると口の周りの筋肉が収縮してばかりいて そのため歯列弓つまり顎が細くなりすぎてしまいます。

飲み物もたとえば100%果汁のジュースであっても 糖分や酸がむし歯に関わります。

このように歯が生える前から お乳の飲み方 母乳でも飲むタイミング、断乳の時期 離乳食 等歯科の係わりが 健全な成長に大きく影響します。

幼児期に歯が生え 小児期に乳歯から永久歯に生え変わり、青年期 成人期のむし歯予防 歯周病予防もその時々により、考え方 やり方も変わります。その時期しっかり歯および歯肉を守り、きちんと咬み 栄養を摂取することが、体全体の健康に大きく寄与します。たとえば糖尿病という病気がありますが、歯周病は糖尿病の合併症であると認定されています。糖尿病になると歯周病が進行しやすく かつ治りづらくなってしまいますが、最近の研究では 歯周病を治療することで、糖尿病も良くなるというケースも出て来ています。

口の健康保持がうまくいけば、老齢期に入れ歯を入れなくて済みます。入れ歯は咬みづらいということだけでなく、食事もおいしくなくなります。また、アルツハイマー病の原因物質と言われるアミロイドβは、咬合不調和つまりかみ合わせが悪いことにより、大量に増加し、反対にかみ合わせの改善により減少します。つまりきちんと咬めることがボケの防止に大きく役立つわけです。

このように一生歯科の係わりが必要で、歯はただ食べ物を噛み砕くというだけでなく、健康維持に重要な役割があります。歯や歯周病の治療は時間がかかり、一度歯科にかかると、しばらく通院しなくてはならない。何より 歯を削るときのあの「キーン」という音がたまらないという方はとても多いと思います。しかし風邪を引いた時は 自宅で安静にしていれば 自然に治ることもありますが、歯は自然治癒はありません。早期発見早期治療をすれば、あの「キーン」という音もあまり聞かずに済みます。是非定期健診を欠かさず、口の中やそれに伴い体全体の健康維持に努めて頂きたいと思います。

そして何より予防することが最も重要です。定期健診は早期発見早期治療には役立ちますが、健診をしていればむし歯にならないという訳ではありません。

むし歯治療は 代替え材料を詰め 歯の機能回復をしたに過ぎず 天然の歯牙に勝るものはありません。最新の考えでは、現代文明社会の食事においては3ヵ月ごとに口の中のメンテナンスをしなければ、むし歯の発現率は極端に高くなるとされております。残念ながら保険の治療には予防処置は認められておりませんが、長い目でみると 予防処置を自費で行っても、それを行わずむし歯を保険で治療するより 安くあがります。 何よりお金では買えない健康の維持を是非努めて下さい。

歯ぎしりについて

いのおか歯科医院
井野岡 真史

歯ぎしりについて

歯ぎしりは「ブラキシズム」と呼ばれる病気です。何らかの原因で噛み合わせのバランスが狂った時に歯ぎしりは起こります。これには大きく分けて3種類の症状があります。

  1. クレンチング(噛みしめ、食いしばる動作)
  2. グラインディング(歯をこすり合わせる動作)
  3. タッピング(歯をカチカチ言わせる動作)

これらの動作は、起きている間に起こる場合と、睡眠中に本人はまったく気づかずに、周りの人の睡眠を妨げたり、指摘されることにより、気がつく場合があります。

原因としては、歯並びに問題があって、無意識のうちに背の高い歯をすり減らそうとする場合や、精神的なストレスにより、睡眠中にストレスの発散のため、歯ぎしりをしてしまう場合があります。
歯ぎしりによる身体への影響ですが、まず歯がすり減ったり歯に大きな力がかかる結果、歯を支えている歯槽骨を傷め、歯周病を引き起こしたり、悪化させたりすることがあります。また噛み合わせに関連する筋肉の疲労から頭痛、肩こりなどが起こることや、顎関節に異常をきたし、口が開きにくい、顎の関節が痛むなど、顎関節症へ移行することがあります。
歯ぎしりに対する対策としては、起きている場合は本人が意識し注意して頂く程度で十分です。睡眠中の場合は、夜間寝る時にスプリントと呼ばれるマウスピースのようなものを口に装着する方法があります。
噛み合わせに問題がある場合は、歯を削って調整したり、修復物や補綴物などの調整や再製作を行う方法があります。
ストレスが原因として考えられる場合は、リラックス法として自己暗示療法、ストレッチ体操のような軽い体操を就寝前に行う方法があります。
理学療法としては、マイオモニター、マッサージ、温浴などによる筋肉痛の除去なども他の方法と併用してみるとよい場合もあります。