親知らず、抜く?抜かない?

太田新田歯科医師会
引田歯科口腔外科
院長 引田 正宣

親知らずは、前歯の中心から数えて8番目にある奥歯の最も後ろに位置する永久歯です。

親知らずが生えてくる年齢は10代後半から20代の間が多いですが、30歳を過ぎてから生えてくる人もおり、個人差が大きいのが特徴です。

口の中に見えていなくても、顎の中に埋まっている場合もあります。

親知らずの抜歯というと、怖いイメージがあり、絶対に抜かないといけないのかと歯科医院への受診を躊躇っている方もいると思います。

今回は親知らずの抜歯を検討する上での基礎知識として、親知らずを抜いた方が良い場合、抜かない方が良い場合を簡単に紹介します。

まず結論から言えば、親知らずに現在問題が起きている場合、将来的に問題が起きることが予想できる場合は抜歯を勧めます。逆に現在問題なく噛み合わせに役立っている場合、将来的に歯を失った際に治療に利用できる場合は保存を勧めます。

具体的に抜歯が望ましい場合は

  • むし歯や歯周病になっており、一度でも痛みや腫れを感じたことがある。
  • 横向き又は一部が埋まった状態で生えていて、十分に掃除ができない状態(将来的にむし歯や歯周病になる可能性が高い状態)である。
  • 自覚症状の有無に関係なく、顎の骨の中に埋まったまま嚢胞(のうほう)や腫瘍の原因になっている。
  • 歯科矯正後の位置移動を予防したい。

等があげられます。

次に抜歯しない方が良い場合は

  • 清掃状態が良好で、むし歯や歯周病になっていない。先に挙げたような問題の原因になっていない場合
  • 真っ直ぐずれなく生えていて、上下の歯が噛み合っている場合
  • 将来的に奥歯が無くなりそうな方で、ブリッジや部分入れ歯、歯の移植に利用出来そうな場合

があげられます。

歯の移植と言うと、あまり聞かないと思いますが、条件が合えば自分自身の親知らずを、失ってしまう奥歯の代わりに移植して利用することができますので、知っておくとよいと思います。

親知らずの抜歯の是非について述べてきましたが、歯科医師は抜歯にあたって、基礎疾患の有無、手術の難易度、患者さんの痛みへの耐性、様々な条件を考慮して、メリットとデメリットのバランスを考えて診断、加療を行っています。抜いた方が良い親知らずか否かを自己判断するのは危険ですので、あくまで参考として頂ければ幸いです。

あなたの歯磨きの常識は大丈夫?〜歯ブラシの選び方〜

太田新田歯科医師会

もろ歯科医院
院長 毛呂 慎

「磨いているのと磨けているのは違います」

僕も小学校の講話などでよく使う言葉です。実際にむし歯の治療をしている患者さんが「ちゃんと磨いているんだけどなぁ。なんでむし歯ができちゃったんだろう?」と困惑する場面があります。確かに細菌の塊である歯垢が歯ブラシによって除去されていれば、むし歯になることは無いわけですから、取り残しがある事は誰の目にも明らかですね。

「小さめの歯ブラシを使って、毛先にちょっとだけ歯磨剤を付けて、小刻みに動かす」

大きすぎる歯ブラシは細かい部分が磨きづらいし、歯磨剤が多すぎると泡がいっぱいになっちゃうので時間をかけて丁寧に磨くのが難しくなる。ですからもちろんこの指導内容は正解です、但し…

これは歯磨きが上手で、時間もそれなりにかけることができる(図の右上に該当する)人が、歯科医院にてちゃんと指導を受けた場合なのです。

日本歯科医師会HPより

それでは歯磨きが面倒とか『自称』忙しくて時間がない場合(図の左下に該当)はどうなのでしょうか?まずできるだけ多くの歯垢を取り除かなくてはいけませんのでやや大きめの歯ブラシを使います。そして歯磨剤を多め(毛先の2/3程度)にして、その中に含まれているフッ素の力を借りるんです。ご存知のようにフッ素にはむし歯を食い止める働きがありますので、なるべく口の中に高濃度で長時間とどまっていて欲しい。そのためにも歯磨きのあとのうがいは控えめに。口の中にフッ素を置いてくるイメージを持ってください。毛先が細いタイプは隙間などに届きやすい反面、毛先が柔らかいため歯垢を掻き出す力が弱いので、ゴシゴシと磨く人には向いているとは言えません。

いかがですか、え〜本当?って思いますよね。つまり正しいと言われている歯ブラシや磨き方は1つではないのです。

皆さん一人ひとりのタイプによって、選択する歯ブラシや磨き方が変わってくるのです。言うまでもなく、時間をかけて丁寧に隅々まで磨くことがベストなのは間違いないです。

でも100%汚れを落とせる人なんか居ません、歯を磨いていればむし歯や歯周病にならない…訳ではないのです。だからこそ、そこを補っていくのが我々歯科医師や歯科衛生士の役割だと考えています。

「歯ブラシなんて何でも同じ、いつも適当に以前使っていたものを買ってるし」

そんなあなた!一度騙されたと思ってかかりつけお勧めの歯ブラシを使ってみてください。目からウロコですよ、きっと。

唾液と齲蝕の関係

太田新田歯科医師会
おおた阿部歯科クリニック
院長 阿部 義則

唾液と齲蝕の関係

 

唾液には生体にとってとても多くの大切な機能があります。

その中でも、齲蝕の発生に大きく関わっております。まず、齲蝕の発生は、歯面に付着した歯垢(プラーク)中にいる細菌が酸を作り、その酸の作用で歯質が脱灰され生じます。しかし唾液には、歯面に付着した歯垢や食べかすを洗い流す自浄作用や、細菌の増殖を抑える抗菌作用、酸性に傾いた口の中のpHを中和させる緩衝作用、溶けかけた歯の表面を修復する再石灰化作用などの作用があり、齲蝕の発生を防止するのに役立っています。

しかしながら、加齢的な変化や特殊な疾患及び、薬の長期服用に伴う副作用などで唾液の分泌量が減少すると、これらの唾液の作用も減少し、齲蝕の発生率も高くなります。

唾液の分泌量を調整することは困難なので、徹底したプラークコントロールが大事であり、口渇による分泌量の減少には、常に水やお茶などで口腔内を潤わせたり、飴など(シュガーレス)で唾液が出やすいようにすることが大事だと思います。

予防が大切!

太田新田歯科医師会
とりやま歯科医院
院長 周藤 泰之

 

予防が大切!

皆さん歯医者に対してどのようなイメージをお持ちですか?

怖い・痛い・歯を削る時の音が嫌だなど、ネガティブなイメージを持っている人が多いと思います。自分たちが日常診療していても、「歯科恐怖症です」「歯医者が嫌いでずっと虫歯を放置していました」「治療が怖くて治療途中で歯医者に行くのを止めました」など、歯医者に対してネガティブなイメージを話してくる患者さんの声をよく聞きます。

では、なぜこの様なイメージになるのか考えてみました。多くの患者さんは治療しなければならない状態になってから受診するからだと思います。当然治療を行うには多少なりとも痛み・不快感などは付きものです。「治療にならない様に歯医者に行く」「自分の綺麗な歯を維持するために歯医者に行く」この様な考えになれば、歯医者のイメージは良くなると思います。すなわち、予防のために歯医者に行くと言う考えです。

日本では1年に1度でも歯医者に行く人は2人に1人と言われ、それも痛くなった時に行く人が大半と言われています。欧米と日本での歯科に対する認識の違いについてお話しすると、欧米の多くの国では歯科治療が自費もしくは自分で加入する保険で行います。なので、虫歯になると高額な治療費がかかります。歯1本根の治療から被せ物までで数十万円と言われています。なので、虫歯・歯周病にならない様に予防に力を入れる人が多いのです。日本は国民皆保険制度のため歯科医院窓口で支払う治療費は数百円~数千円で治療が受けられます。とても良い様に思いますが、これが日本人の歯科に対する意識の低さを生んでいるとも言われています。治療費が安価なため虫歯になって痛くなってから、歯周病で歯が揺れてから、などの症状が出てから歯科医院に行くと言う考えです。予防にお金をかける考えが少ないのです。しかし、治療は歯を削る・人工の被せ物や詰め物の不自然さ・歯を抜く・入れ歯の違和感などが生じる事があります。絶対に自分の歯に戻る事は出来ず自分の歯に勝るものはありません。

日本は先進国でありながら国民の予防歯科に対する意識では他の先進国よりかなり遅れています。予防すれば虫歯・歯周病にならない、ならなければ痛い怖い治療する必要がない、痛い怖いがなければ歯医者を嫌いにならない、そして何より歳を取っても自分の歯で何でも美味しく食事ができ健康でいられる。皆さん自身が予防を意識すれば良いことしかないと考えられます。子供のころから虫歯にさせない、もし治療が必要な状態になってしまっても予防の意識で定期的に歯科医院に通院していれば早期発見で最小の治療で終える事ができます。

歯医者を怖い所・嫌いな所・気持ち的に遠い所と思わず、かかりつけ歯科医院を見つけて予防の意識を大切にし、定期的に通院することをお勧めします。

歯科健診による歯の病気早期発見の大切さ

太田新田歯科医師会
おおたモール歯科
八木 大輔

歯科健診による歯の病気早期発見の大切さ

私たちの平均寿命は伸び「人生100年時代」といわれるようになりました。

その中で、口の中の健康は健康寿命に大きく関係しています。ある研究によると歯の数と認知症の関係性が確認されています。歯を失うことで脳への刺激が減り、残っている歯が少ないほど認知症のリスクが大きくなるという結果も出てきています。

年を重ねても自分の歯を1本でも多く残せているか、また残っている歯がどれくらい健康な状態かが重要になります。また、歯は食べ物を噛み砕くためだけのものではなく、会話の発音を助けたり、顔の表情をつくるなど日常生活に必要な役割を持っており、歯を失うと食べ物が噛みづらくなるだけでなく体全体にも影響が出てきます。

そして、歯の健康を維持する上で影響を与える病気が歯周病です。歯周病は歯茎が炎症してしまう病ですが、歯に悪いだけでなく、身体全体に悪影響を及ぼすということも分かっています。炎症した歯茎から細菌が身体に入り込み、血管を通じて全身に悪さをします。それにより糖尿病・高血圧・脳梗塞・認知症などの病気を引き起こしやすくなるということが分かっています。また、歯のかみ合わせのバランスが悪くなると、顔にしわができたり、あごや関節が歪んだり、姿勢や背骨の歪みなどに影響が出る方もいます。私たちの歯は一度を失うと生えてこないため、1日でも長く健康な歯を維持するために、歯のトラブルを早期発見・早期治療を行うことが重要です。

新型コロナウイルス感染症の影響によって自宅で過ごす時間が増えた方もいるのではないでしょうか。そのためには歯科検診を定期的に受けて、小さい虫歯のうちに治療すれば、痛みが出てから治療するより治療回数・治療費も最小限に抑えることができますし、歯が健康な人は全身の医療費も低いというデータもあります。

高校生までは毎年歯科検診が義務づけられていますが、成人ではなかなか歯の健診を受けられていないことが報告されていて、今では国会でも「国民皆歯科検診」の議論があがるくらい歯の健康が大事だという認識が広まってきているので、しばらく歯医者さんに行っていない人はお近くの歯科医院にご相談ください。