あなたの歯磨きの常識は大丈夫?〜歯ブラシの選び方〜

太田新田歯科医師会

もろ歯科医院
院長 毛呂 慎

「磨いているのと磨けているのは違います」

僕も小学校の講話などでよく使う言葉です。実際にむし歯の治療をしている患者さんが「ちゃんと磨いているんだけどなぁ。なんでむし歯ができちゃったんだろう?」と困惑する場面があります。確かに細菌の塊である歯垢が歯ブラシによって除去されていれば、むし歯になることは無いわけですから、取り残しがある事は誰の目にも明らかですね。

「小さめの歯ブラシを使って、毛先にちょっとだけ歯磨剤を付けて、小刻みに動かす」

大きすぎる歯ブラシは細かい部分が磨きづらいし、歯磨剤が多すぎると泡がいっぱいになっちゃうので時間をかけて丁寧に磨くのが難しくなる。ですからもちろんこの指導内容は正解です、但し…

これは歯磨きが上手で、時間もそれなりにかけることができる(図の右上に該当する)人が、歯科医院にてちゃんと指導を受けた場合なのです。

日本歯科医師会HPより

それでは歯磨きが面倒とか『自称』忙しくて時間がない場合(図の左下に該当)はどうなのでしょうか?まずできるだけ多くの歯垢を取り除かなくてはいけませんのでやや大きめの歯ブラシを使います。そして歯磨剤を多め(毛先の2/3程度)にして、その中に含まれているフッ素の力を借りるんです。ご存知のようにフッ素にはむし歯を食い止める働きがありますので、なるべく口の中に高濃度で長時間とどまっていて欲しい。そのためにも歯磨きのあとのうがいは控えめに。口の中にフッ素を置いてくるイメージを持ってください。毛先が細いタイプは隙間などに届きやすい反面、毛先が柔らかいため歯垢を掻き出す力が弱いので、ゴシゴシと磨く人には向いているとは言えません。

いかがですか、え〜本当?って思いますよね。つまり正しいと言われている歯ブラシや磨き方は1つではないのです。

皆さん一人ひとりのタイプによって、選択する歯ブラシや磨き方が変わってくるのです。言うまでもなく、時間をかけて丁寧に隅々まで磨くことがベストなのは間違いないです。

でも100%汚れを落とせる人なんか居ません、歯を磨いていればむし歯や歯周病にならない…訳ではないのです。だからこそ、そこを補っていくのが我々歯科医師や歯科衛生士の役割だと考えています。

「歯ブラシなんて何でも同じ、いつも適当に以前使っていたものを買ってるし」

そんなあなた!一度騙されたと思ってかかりつけお勧めの歯ブラシを使ってみてください。目からウロコですよ、きっと。