フッ素洗口について

今まで色々とむし歯予防の話をしてきました。

様々な方法があったと思いますブラッシング(歯ブラシ・フロス・歯間ブラシ)、

キシリトール、甘味制限、そしてフッ素…
もしも、これをすればむし歯にならないという方法があったとしたら
これほど色々なむし歯予防の手段があるはずがないんです
つまり、どの方法も100%の予防効果はない訳です

今日は、今僕たち歯科医師が取り組み始めている新たなむし歯予防をお話しします
そのために敢えて、そういったむし歯予防方法の盲点から始めたいと思います

1:ブラッシング
健診でご家族の方からの質問で一番多いのが、この歯磨き関連ですね
「うちの子は歯磨きを嫌がってやらせないんです。どうしたらいいのでしょうか?」
確かに昔から、『むし歯にならないように歯を磨きましょう』と言われ続けてます
実際に僕も自分の歯科医院や担当する幼稚園・小学校などでそのように言ってますし
その甲斐あってか、実際に日本人の9割以上の人が歯を磨いてます
では、むし歯はなくなったでしょうか?答えはNOです
どうしてなんでしょうか?
確かに100%歯垢や汚れを取り除く事ができれば、むし歯にはなりません
でもそれは実際のところ無理です
歯の形はデコボコしていて複雑ですし、奥の方なんて見るのだって大変なんですから
それに磨いているのと磨けているのは違いますしね

2:キシリトール…
既に市民権を得ている言葉ですが
人工甘味料。むし歯菌が糖に分解できないので活動できなくなる…これも事実です
実はこれも落とし穴があります
ガムなどのパッケージに「お腹がゆるくなる事があります」という注意書きがあります
ガム一包みくらいだったら、かなり敏感な方でない限り大丈夫なんですが
人が食べる物全てを置き換えたらどうでしょうか?
むし歯にはなりません。でもお腹が…では商品としてまずいすよね
現実問題として、全ての糖を置き換えるのは無理です
それとキシリトールが入っているから、砂糖を摂ってもむし歯にならない…

という訳にはいかない

3:甘味制限…
フワフワ生クリームのショートケーキとかチョコレートとか美味しいですよね
人間って、やっぱり自分を厳しく律するのって難しい
ダイエットと同じなんです
自分一人でコツコツと長期間に渡って節制するのってどうですか?
言うは易く行うは難し…です
でも、今日の本題に通じる所なんですが、
もしも、皆で一緒にやるんだったらどうですか?何となくできそうな気がしませんか

4:…で、最後にフッ素です
これも色々な利用方法があります
親御さんからの質問で2番目に多いのが、「フッ素は塗った方がいいのでしょうか?」
いわゆるフッ素塗布ですね
本当にむし歯予防に効果があるフッ素濃度は1000ppm以上
日本で一般的に販売されている商品は薬事法の関係でそこまではいかない。

はるかに低い濃度です
効果がないとまでは言えませんが、それだけで充分とも言えない微妙さ
歯科医院には医薬品として高濃度のフッ素がありますが
毎日のように通院するわけにもいきませんしね

ちょっと話が前後しますが…
ブラッシングは、その人の手先の器用さ、歯科医院できちんとした指導を受けたかどうか
自己流じゃないか、個人のテクニックや家庭環境にかなり左右されます
お年寄りや小さな子供にはハードルが高い

そこでもし、どんな人にも公平に、効果的に、安く
特別な器具や技術を使う事なく、むし歯予防できる夢のような方法があったらいいでしょ

さてそこで、今日お話ししたいむし歯予防の方法…それがフッ素洗口です
「せんこう」あまり聞き慣れないかもしれませんが、口を洗うと書きます
何だか難しそうですが、簡単にいうと、フッ素でブクブクうがいをするだけなんです
ですから、小さなお子さんでもできますし、大人数で同時に行うのも容易
早い時期から始めた方がより効果的なので、

幼稚園とか保育園から始めるのがベストなんです
この太田地区でも昨年の4月から、

世良田保育園と笠懸北保育園の2園で試験的に開始しています
安くと言いましたが試算すると一人当たり年間500円くらいです

むし歯予防の効果は、すぐに出てくるものではありませんが
きっと、そこの園児の将来にいい意味で影響が出てくるはずです
もしもリスナーの方で保育園や幼稚園のお子様をお持ちの方がいらっしゃったら
是非とも園の先生や歯科医師に具体的な話を聞いてみて下さい
歯科医師会にお電話いただければ、園に出向いて説明などもさせて戴いてますので…

今までお話しして来たように、100%の予防方法はありません
それはフッ素洗口でも一緒です
ただ、むし歯予防の引き出しは多い方がいいんです
ですから、それぞれを少しずつ組み合わせて、少しでも100%に近づける事が大切

 

歯ブラシ選びについて

皆さんの使っている歯ブラシですが、一般的に商品化されたのは、明治40年頃です。柄の部分は、動物の骨で出来ており、毛は動物の毛を使っていました。

当時は、手作りで職人さんが作っていました。

昭和20年頃に、合成繊維を植毛した歯ブラシが登場しました。

昭和30年頃には、現在と同じナイロンを植毛した歯ブラシが続々と登場しました。

それから昭和50年頃からは、ヘッドや毛先のカットを工夫した商品が登場しました。

平成に入ると、一気に多様化します。電動歯ブラシ、歯周病予防、フッ素入り歯磨き粉との相性を考えた歯ブラシなど、それぞれのライフスタイルに合わせた商品が様々でてくるようになりました。

現在では、毛の部分のナイロンの直径は、約0.3mm~わずか0.02mmの細さまであります。

 

そこで歯ブラシの選び方ですが、柄は持ちやすい物、ヘッドは奥歯の裏も磨ける大きさがベストです。

購入先は、スーパー、ドラックストアで販売している商品も悪くはありません。

電動歯ブラシ、超音波ブラシにおいては、現在非常に優れた物もあります。

ただ、良い歯ブラシでも必要な所に当てられなければ意味がありません。

まずは、手磨きをマスターしましょう。

 

おすすめは、歯科医院で販売されている歯ブラシです。

各メーカー歯科医院専用歯ブラシを出しています。

歯科医院専用歯ブラシは、派手さはありませんが、ナイロンの質、ヘッド、柄の形状など、非常によく研究、開発されています。

 

そして、歯科医院でブラッシング指導を受けたことがない方は、是非歯科医師または歯科衛生士からの指導を受けてみましょう。

むし歯予防、歯周病予防をすることにより、学校や仕事、対人関係など、生活の質が向上されるでしょう。

歯ブラシとデンタルフロスなどと併用されることもおすすめです。

最後に、むし歯予防にはフッ素入り歯磨き粉を使用することが、重要になります。

 

 

「間食とむし歯予防」

 日常の診療の中で患者さんから、「毎食後しっかり歯みがきをしているのに、こんなにむし歯になるのは歯の質が弱いのでしょうか?」という質問をしばしば受けることがあります。これは、様々な条件にもよりますが、歯の質が弱いと言うより砂糖の摂取方法、いわゆる間食(おやつ)の取り方に問題があることが多いようです。

今回は「間食の取り方とむし歯予防」について解説いたします。

 私たちの口の中には様々なたくさんの細菌が住み着いています。中でもむし歯の原因菌と言われているミュータンス菌が主役となり、食べ物の中の糖分をもとに、ネバネバしたデキストランという物質を作り細菌とともに歯の表面にこびりつきます。これを歯垢(プラーク・バイオフィルム)と言い、細菌が生活していく住み家となるのです。その住み家でミュータンス菌が砂糖を分解して有機酸を作り、歯の表面を僅かずつ溶かし初期むし歯ができ始めます。

しかしながら、口の中には常に唾液が存在していて、摂取した糖分を洗い流すとともに、一度溶け出したカルシウムイオン成分を歯に再吸着させる作用があります。このように、歯の表面で溶解と再吸着が繰り返されながら行われるため、むし歯に進展せず歯質が保たれています。そして、この一連の作用は砂糖摂取後約三十分の間に起こると言われています。

むし歯はこの均衡が破られ溶解に対して再吸着が追いつかなくなると、少しずつ穴が開き始めてむし歯になっていくのです。つまり再吸着する前に再度砂糖を摂取するとむし歯が徐々に大きくなってしまいます。以上の事から、むし歯予防は間食の取り方がキーポイントとなります。

おやつの‘ダラダラ食い’などはむし歯になりやすい一因となります。お子さんがお菓子やジュースを飲みながら遊んでいたり、砂糖の入ったコーヒーなどを飲みながら勉強や仕事をする姿を見たことがありませんか?

むし歯予防のためにこのような間食の取り方は改善しましょう。

 

                太田新田歯科医師会

                     梅澤 義一

矯正治療を受けられる前に正しい理解を ~大人と子供の治療の違い~

矯正治療とは、悪い歯並びや咬み合わせを、きちんと咬み合うようにして、きれいな歯ならびにするための歯科治療です。矯正の先進国アメリカ、ヨーロッパでは成人する前に60%もの人が矯正治療を受けます。日本でも年々着実に増え続けています。また、歯並びについての関心も高まり、成人されてから来院される方も増加傾向にあります。しかし、正しい知識を持たずに治療を受けられる方も多く、再治療を希望され来院される方が年々増加傾向にあります。

不正咬合は単純に歯の並びが原因とする疾患ではなく、上顎骨(上あご骨)と下顎骨(下あご骨)の大きさの違いから生じている場合が多い疾患(上顎前突症や下顎前突起症、上下顎前突症、開咬症、過蓋咬合症など)です。

同じ下顎骨の劣成長による上顎前突症(出っ歯)でも成長期にある子どもの矯正治療と全ての歯が永久歯である大人の矯正治療では、治療アプローチが異なります。一般的に矯正治療は一本一本の歯に矯正装置とワイヤーを用いて行う治療と認知されています。このような矯正装置は、主に大人の矯正治療で用いられます。大人の矯正治療で上顎骨と下顎骨の前後的な大きさの違いを改善するには、一般的に上顎の左右側第一小臼歯抜歯を行って、前歯を後退させる治療が多く選択されます。一方、子どもの矯正治療では、乳歯から永久歯への交換期にある時期は成長を利用して、上顎骨と下顎骨の前後的不調和の改善がきる大切な時期です。成長をコントロールすることができる時期は限られています。治療は骨格の治療を行う一期治療(フェーズ1)と骨格の改善がなされた後に歯並びのみの治療を行う二期治療(フェーズ2)の二段がまえの進め方をします。治療は一人一人の成長発育を見極めて行います。特に上顎骨と下顎骨の前後的不調和が原因の場合には早期の骨自体への治療が重要です。このような骨格をコントロールする治療を顎矯正治療と言われています。顎矯正治療が可能な時期は約7歳から11歳です。顎矯正治療はすべての不正咬合に適用できます。おもに機能的矯正装置を用いて治療が行われます。低年齢から一期治療を行うことによって過剰発育にある骨の抑制や劣成長にある骨の前方成長促進が可能であり、二期治療における小臼歯抜歯の回避や治療期間の短縮化が期待できます。このような顎矯正治療の適用には正確な診断による治療計画と適切な矯正装置の選択、効率的な手法が大切です。また適用できる時期も限られていることから、治療に関してより深い理解を持ってから治療を受けられることが大切であると思われます。