「タバコ、 私はこれでやめられました。」

幸生歯科医院   山田 幸生

このコーナーに出演させていただくのも3回目となりました。

過去2回、喫煙と歯周病について話をさせていただきましたが、今回もタバコについてです。喫煙されている方には、耳が痛い話になるかもしれませんが、しばらくの間、お付き合いください。今回初めて聞く方もいらっしゃるでしょうから、まず喫煙と歯周病について、簡単に説明します。

歯周病は、基本的には、細菌による感染症ですが、発症や進行には多くの危険因子が関与しています。例えば、糖尿病などの全身疾患、ストレス、歯ぎしり・食いしばりなどの咬合習癖、女性ホルモンの変化、喫煙などです。これらの中で、最大の危険因子は喫煙です。

喫煙されている方の歯肉は、ニコチンの血管収縮作用により慢性的な血行不良を起こしています。そのため、細菌に対する抵抗力、歯肉の治癒力が非常に乏しくなっています。その結果、歯周病の進行が速く、治療の成果も上がりにくいばかりか、進行を止めることすら難しいのです。本気で歯周病を治し、自分の歯を長持ちさせたいのなら、タバコは、1日も早くやめなければなりません。

今回は、禁煙の方法について、私の経験からお話ししたいと思います。

喫煙されている患者さんに、

タバコをやめたいと思ったことは?
禁煙したことは?

とお聞きすると、

「禁煙したことはあるが大変だった。」
「長く続かなかった。」
と、禁煙失敗経験のある方は結構多いです。

中には、「何年もやめていたけど、再喫煙してしまった。」という方もいらっしゃいます。失敗した方の方法を聞いてみると、『我慢の禁煙』が多いようです。

「しばらくの間、タバコを我慢して吸わないでいれば、体内から、ニコチンが抜けて、吸いたい気持ちが減ってきて、やめられるはず。」と。

これは、つらい!タバコの依存は、ニコチンによる薬物依存と、精神的な依存がありますが、ニコチンによる中毒性は、実はそんなに強力ではありません。2・3週間もすれば、体内から抜けると言われています。じゃあ、2・3週間我慢すれば、ニコチンが抜けて、禁煙できるはずですがそうはいきません。

タバコがやめられない原因の多くが、精神的な依存にあるからです。

「食後の一服は最高。」「コーヒーとタバコ、お酒とタバコは切っても切れない。どちらが欠けても物足りない。」という、ニコチン中毒になってから付いてしまった思い込みの気持ちです。私も喫煙していた時は、そう思っていましたし、『我慢の禁煙』で何度も失敗していた一人なのです。最近では、禁煙補助剤もあり、昔より禁煙に取り組みやすくなりました。

ニコチンガムや、ニコチンパッチなどは、薬局でも入手できますし、飲み薬も、禁煙外来で条件を満たせば処方してもらえます。しかし、これらで対応できるのは、ニコチンによる依存の部分だけなのです。そこを、しっかり理解していないと、結局、『我慢の禁煙』、再喫煙ということになってしまうでしょう。精神的な依存に対しては、なにより視点を切り替えることが必要です。そこで、私が苦労なく、楽に禁煙できたおすすめの本を紹介したいと思います。

御存じの方もいらっしゃるかと思いますが、禁煙セラピーという本です。この本には、タバコの害については、ほとんど書いてありません。読みながら、吸っていても構わない本です。本気でやめたい人が、本気で読めば、楽にやめられる不思議な本です。この本で精神的な依存がクリアーされると、禁煙は、全くつらいものではありませんし、タバコが吸えなくなる喪失感なども、全く感じません。むしろタバコから、解放されて、とても気分がいいのです。今では、コーヒーだけでも、おいしく飲めますし、食事もリラックスしていただくことができます。この本で、禁煙してから、17年程になりますが、ただの1度も吸いたいと思ったことはありません。喫煙していた頃は、慣れてしまって、分からなくなっていたタバコの刺激臭もよく分かるようになり、周りの人に迷惑をかけていたことにも気づきました。

タバコが体に悪いのは分かっていると、みなさんおっしゃいますが、まだまだ軽く考えている方が多いように思います。

日本では、タバコ関連疾患で、年間約20万人が死亡しています。これは、広島と長崎に落とされた原爆で亡くなられた方々の人数と同じくらいなのです。受動喫煙でも約7千人が死亡しています。「習慣だから」と、何気なく毎日吸いこんでいるその煙。ちょっと立ち止まって考えてみませんか?

日々の暮らしが、10年後、20年後の自分をつくります。大切な家族のため、ご自分のため、1日も早く、タバコから解放されて、自由になりましよう!私たち歯科は、みなさんの禁煙を応援しています。

歯をこわす悪いクセ

長島歯科医院 長島広明

 くちびるを閉じてなにもしていないとき、みなさんの上下の歯はさわっていますか?それともはなれていますか?

実は、食事のとき以外は、私たちの歯は離れているのが本来なのです。

「上下の歯はさわっているのが当たり前だ。」と思っている人が意外にも多くみられます。上下の歯は、食べたり、話したりするときに、瞬間的に合わさるだけで、一日の接触時間はわずか20分程度、又はそれ以下です。ところが、仕事をしているとき、考えごとをしているときなど、習慣的に上下の歯を合わせているかたがいるのです。

顎関節症や、かみ合わせに違和感をもっているかたの多くに、この上下の歯を接触させるクセをもっているかたがいます。

歯を接触させるクセをもっている人は、もっていない人にくらべ、歯や、歯を支えているまわりの組織、かむときに働く筋肉などに、多くの力(余分な力)がかかります。この余分な力は、お口の健康のジャマをするトラブルを引き起こす1つの要因となる可能性があります。

この余分な力が引き起こすトラブルとは

  • 歯が欠ける 削れる
  • 歯周病が進行する
  • 治療した歯がこわれる  (詰め物、被せ物がすぐとれる。かける。治療した歯の周りから虫歯になる。)
  • 歯がしみる
  • 入れ歯が痛い

などの問題を引き起こしかねません。この余分な力がすべての要因ではありませんが、1つの要因としての可能性は考えられます。このなにげないクセは、意外にも多くのリスクをかかえています。

まず、このクセがあるかたは、思い出した時に歯と歯を離してリラックスしてみましょう。クセなので、なかなか治すことは難しいかもしれません。頑張ってしまうと逆効果です。かえって緊張や疲労がたまってしまいます。気軽に、まずは気ずくことからはじめてみましょう。

歯周病の原因とその予防法

TVのCMで歯周病予防について流れているのを良く耳にします。歯周病に罹患している人は30歳以上で80%以上いると言われています。しかし、どれだけの人が自分の口の中に関心を持っているでしょうか?

今回は、歯周病の原因とその予防策についてお話をさせていただき、できるかぎり、お口に興味を持っていただけたらと思います。

歯周病の原因はお口の中の細菌です。歯周病は細菌の感染による感染症です。歯周病を引き起こす細菌は歯茎の中で活動して歯の周りの組織を破壊していきます。また、間接的に歯周病を悪化させていくものとして、喫煙、糖尿病、適合の悪くなったかぶせもの、歯並びの乱れ、ストレス、肥満、などなど全身的な疾患とのかかわりも重要です。特に、糖尿病の合併症の一つに歯周病が含まれています。糖尿病は血管症を引き起こし、血管が脆くなるために免疫反応がうまく働かなくなってしまい歯茎がやられてしまうのです。

では、予防をするためには何が必要なのでしょうか?それは、歯ブラシです。歯ブラシを行わずして歯周病の予防はありません。お口の中の細菌は、排水管のぬめりと一緒でヌルヌルしています。排水管のぬめりは通常ブラシで擦って落とします。お口の中の細菌のぬめりは歯ブラシで擦って取ります。単に、洗口剤や薬を塗っただけでは意味はありません。歯ブラシには適切なブラシの動かし方があります。まず、歯と歯茎に境目にブラシの毛先を入れます。そして、歯の2本分くらいの幅を横に小刻みに動かします。歯ブラシのCMで「プラークコントロールで歯周病予防」とあります。これは細菌の塊=歯垢をプラークと呼び、細菌塊(=プラーク)を歯ブラシでコントロールして減らし衛生状態を保つことを言っています。細菌をゼロにするのは不可能ですから、適切な歯ブラシを行い予防することが大切です。

歯周病は、少しずつ進行していきます。歯茎に違和感を覚えたり、歯ブラシの時に出血がある方は、歯科医院を受診していただき、歯周病の検査をして、お口のチェックをしてみてはいかがでしょうか?

早期発見、早期治療、そして、定期的なメインテナンスが大切だと思います。

ヒデ・デンタルクリニック
山口英久

かむことと健康の関係

いのおか歯科医院
井野岡真史

食べ物はそのままでは飲み込めません。歯でかみ砕いてこまかくしてだ液とよく混ぜ合わせて飲み込みます。
目標は一口食べたら30回と言われますが、皆さんは何回くらいかんでいますか?
よくかむことで、様々な効果が得られると言われています。

その効果とは、

  1. 胃腸の負担軽減
    よくかんで細かくしてだ液と混ぜ合わせてのみこむことにより、消化しやすくなり胃腸の負担が軽くなります。
  2.  肥満予防
    ゆっくり時間をかけてよくかむことにより、満腹中枢が働いて、満腹感をおぼえやすくなって食べ過ぎを防ぎ、肥満予防にもつながります。
  3. 言葉の発音
    よくかんで口の周りの筋肉を使うため、発音がはっきりし、表情が豊かになります。
  4. 歯の病気を予防
    顎の骨が発育し、歯並びがよくなります。歯周病や虫歯予防にもつながり、体力向上にも役立ちます。
  5. 味覚・脳の発達
    よくかんで食べることにより、味覚が発達し、食べ物の味がよくわかり、さらに脳の血流増加し、脳を活性化させて、高齢者の認知症予防に役立ちます。

電動歯ブラシって、いいの?

太田新田歯科医師会
きむら歯科医院 木村博昭

来院される患者さんから、よく質問されます。
「正しく使えば、すごくいいものだと思います。」といつも答えています。
その理由をお話したいと思います。

歯磨きのポイントは、大きく2つあると思います。
1、汚れているところに歯ブラシの毛先があたっていること
2、その位置で毛先を細かく振動すること

さて、人間の手の動きには限界があり、2番目の「細かく振動すること」が不得意な感じがします。そこで、登場するのが「電動歯ブラシ」です。細かく振動する動きは、人間の手は機械には勝てません。

現在、電動歯ブラシは「音波式電動歯ブラシ」が主流です。1分間のブラシ振動数は、約3万ストロークです。人間の手の場合、1分間に約200ストロークが限界といわれておりますので、音波式電動歯ブラシは「150倍」効率がよいことになります。患者さんからの質問の答えである「正しく使えば、すごくいいものだと思います。」というのは、電動歯ブラシを使っているのですが、ポイントがずれた人が多いのではないでしょうか。その対策として、かかりつけの歯科医院で電動歯ブラシを用いた正しい磨き方を教えてもらうのがよいと思います。理想は、ご自分の手で正しく歯磨きができ、その上で電動歯ブラシに変えるのがよいかと思います。

何かと忙しい現代社会、歯磨きに長時間かけられないのが実状なのかもしれません。電動歯ブラシを正しく使い、「短時間で、効率よく、綺麗に」お口のお手入れをすることは、皆様の生活にプラスになることでしょう。