虫歯になりにくい子

太田新田歯科医師会

MK歯科クリニック 増田康展

 

生後間もない赤ちゃんには虫歯菌はいません。

虫歯菌は人(特にご両親)からうつります。最も虫歯菌がうつりやすい期間は生後19~31か月の間(1歳半から3歳)と言われ、うつるのが遅いほど虫歯になりにくくなります。

お子様とのお箸の共有や、砂糖の摂取を控え、ご両親ご自身の歯のケアもしっかりとする事が虫歯からお子様を守る近道と言えるでしょう。

ただし、あまりとらわれ過ぎずにスキンシップは大切にして下さい。

砂糖の摂取量が気になる場合は、虫歯の発生を防ぐ天然甘味料のキシリトールを使用した食材(おやつ等)を食べることをお勧めします。

砂糖は虫歯菌が分解・発酵させ酸を作りだし、歯の表面が溶かされて虫歯となります。一方キシリトールは酸が発生しない上、唾液中のカルシウムが歯の表面と結び付き再石灰化を活発にします。

キシリトールは口の中に長く留まらせないと効果がないため、キシリトールガムやタブレットを上手に使って虫歯予防をしましょう。

そして、定期的にかかりつけ歯科医院を受診してお口の健康に気をつけましょう。

第15回市民公開講座 開催報告

太田新田歯科医師会

15回市民公開講座 開催報告

 

日時:平成26年11月15日(土)午後2:00~午後4:00

場所:太田市学習文化センター(太田市飯塚町1549-2)

主催:一般社団法人 太田新田歯科医師会

 

本当は怖いお口の病気

~敗血症って何?~

 

毎年恒例となりました、太田新田歯科医師会主催の市民公開講座が、平成26年11月15日(土)午後2時より太田市学習文化センターにて、穏やかな秋晴れに恵まれ大勢の市民の方々にお集まりいただき、今年で15回目の開催をすることが出来ました。この場をお借りいたしまして、講師の先生方、関係者の方々、また、市民の皆様方に厚く御礼申し上げます。

第15回目となりました今回の市民公開講座は、“敗血症”をテーマに富士重工業健康保険組合太田記念病院の薬剤部長・山藤満(さんどう みつる)先生、救急科部長・秋枝一基(あきえだ かずき)先生、歯科口腔外科医長・伊澤和三(いざわ かずみ)先生の三名の先生方に御講演して頂きました。

まず最初に、薬剤部長の山藤先生より「これだけは知っておこう!抗菌薬の賢い使い方」の御講演が始まりました。

私たちの身の周りには、さまざまな病原微生物が存在しており、人や動物の体の中で増殖した場合を感染といい、それらに炎症(病気)を引き起こすことを感染症といいます。

微生物の病気を引き起こそうとする力(病原性:毒力と菌量)が人の抵抗力よりも強くなった場合に感染が成立します。微生物の数が増えて病原性そのものが強くなったり、もともと非常に強い場合は、誰でも感染してしまいます。逆に、人の抵抗力が非常に弱い場合、普段はなんともないような菌(平素無害菌)に感染し、病気になることもあります(日和見感染)。

病院や施設には、非常に抵抗力が低下した人(易感染性患者)が多く入院していますので、日和見感染が問題となっています。敗血症もこのような抵抗力の低下した人に発症しやすくなります。

新規の抗菌薬が開発されても耐性菌の感染症は無くなりません。つまり医療施設や私たちの周りから病原体を排除することは困難であり、病原体、感染症と共存することを理解しておかなければなりません。例えば我々自身が手洗い、うがい、マスクをして感染を防ぐ工夫や抵抗力を普段からつけておくこと、さらに感染症治療の際には抗菌薬を正しく使うことが大切です。特に経口抗菌薬(飲み薬)は服薬遵守(服薬コンプライアンス)の向上が治療の成功、失敗を左右します。感染症を正しく理解し治療が適正に行われることを期待したいとお話しされました。

続いて、救急科部長の秋枝先生より「敗血症とは・・・」の御講演がありました。

敗血症は、怖い病気でありながら一般的にはまだよく知られていません。医療従事者でさえもはっきりと敗血症の定義を理解していない人もいるのが現状です。毎年世界中で多くの方が敗血症で亡くなっており、日本も例外ではありません。

敗血症とは、感染症を契機とする全身性炎症反応症候群(SIRS)と定義されています。敗血症に見られる「感染」は、多くは細菌感染ですが、ウイルスや真菌の感染でも発症することがあります。「全身性炎症反応症候群」は①体温が38.0度以上または36.0度以下、②心拍数が90回/

分以上、③呼吸数が20回/分以上、④白血球数が12000/μl以上または4000μl以下、の4つの項目のうち2つを満たすものを言います。したがって、38度以上の熱があり、呼吸が「はぁはぁ」している場合、それだけでも敗血症になっている可能性があるわけです。

敗血症は早期に適切な治療を開始すれば、致命率は15%程度といわれています。しかしながら手遅れになってしまうと致命率は45%まで上昇します。

敗血症が疑われたら、直ちに病院を受診して下さいというお話でした。

最後に、歯科口腔外科医長の伊澤先生より「重症歯性感染症について」の御講演がありました。

細菌やウイルスに感染し、全身に炎症反応が拡がって臓器を傷つける敗血症は、さまざまな要因で発症します。口腔内には細菌の数が多く、歯周ポケットからの細菌の侵入により、頭頸部領域の歯性感染症でも小さなきっかけから重篤な症状へ変化することもあります。口腔内を穿刺するだけの膿の溜まりもあれば、頸部皮膚を大きく切開しなければならない場合や、皮膚が壊死してその部分の皮膚を取り除かなければならない場合もあります。

重症歯性感染症から敗血症性ショックになる場合の事前の判断は出来ません。健康な人でもなってしまい、どんな人がなってしまうのかわかりません。このような状態にならない為には、いつもと違うという状態に気づくことです。是非かかりつけ医を持っていただき、小さな変化を判断できるようにして下さいとお話しされました。

三人の先生方の御講演後、質疑応答に移り市民の方々から数多くの質問があり、全身のみならず口腔内への関心の高さが見受けられました。

虫歯や歯周病が原因で、口腔内から全身へと拡がっていく歯性感染症は、虫歯や歯周病の早期治療を行うことによりある程度は防ぐことが出来ます。その為には、かかりつけ歯科医院の定期検診が必要であり重要です。また、定期検診をきちんとしていてもなお感染症を患い、重篤な症状になる場合もあります。異常を感じた場合は、なるべく速くかかりつけの歯科医院を受診し、更に必要であれば口腔外科のある病院で精密検査や救急処置を受けなければなりません。

かかりつけ歯科医院と口腔外科を有する病院との緊密な連携をとることにより、重篤な症状や救急処置の必要がある患者さんが、スムーズに治療を受けられる体制を整えることが出来ます。

今後も、より一層地域医療連携を充実させ、市民の皆様のお口の中を含めた全身の健康づくりの一助となるよう日々の診療に努めていく所存であります。

 

太田新田歯科医師会 市民公開講座運営委員会

                委員長 増田康展

歯と口の健康フェア

太田新田歯科医師会

長島歯科医院 長島広明

 

太田新田歯科医師会では、8月30日(日)イオンモール太田2Fイオンモールにて、午前10時から午後5時まで、「歯と口の健康フェア~歯っぴいライフで8020~」と題し、市民の方々への歯科情報の提供、口腔ケアに対する意識の向上をして頂くことを目指したイベントを開催します。

毎年、「むし歯予防デー6月4日」にちなみ6月第一日曜日に開催をしておりましたが、今回は会場の都合により6月開催ができず、8月30日の開催となりました。

今回のフェアの内容は

  • ミニ市民公開講座

(歯周病、むし歯、矯正治療、顎関節症、食育など、それぞれ専門家による20分程度の講演)

  • 歯磨き指導 フッソ塗布
  • 位相差顕微鏡(自分の歯垢の中の細菌観察)
  • 歯型採り
  • 血管年齢測定 骨密度測定
  • 歯科相談
  • 血圧測定 栄養相談
  • バルーンアート
  • 歯科関連企業による展示

歯、歯肉、口の中の疾患は、全身の健康に大きく影響します。この健康フェアを機に、歯と口の状態に関心を持っていただき、日頃の口腔ケア、口腔管理に役立てて頂きたいと思います。小さなお子様からご年配の方々まで元気で楽しく健康ですごせるように、さまざまなイベント、健康情報を準備し企画をしております。ぜひご来場お待ちしております。

またこのフェアは、過日、市内小中学生を対象に応募いただいた歯科保健啓発図画ポスター標語コンクールの優秀作品の展示会を兼ねております。こちらの方もご覧になっていただきたいとおもいます。

「歯と口の健康フェア」は、今回で21回目の開催となります。去年は1500名以上の方々に来ていただきました。今回は開催時期がいつもと違います。夏休みの最後の日曜日ですが、沢山の方々のご来場をおまちしております。またご来場の方々には素敵なプレゼントも用意しておりますので、ぜひお立ち寄りください。

痛いときに行く歯科医院から定期的に行く歯科医院へ

太田新田歯科医師会

小森谷歯科医院 小森谷和之

 

歯科の二大疾患といえばむし歯と歯周病です。現在ではこの二つは予防することができるようになってきました。

何度も通っていただいた治療が終わると、患者さんの笑顔は明るく華やいで喜びにあふれています。私たちにとっても、そこに至るまでの努力が報われる嬉しいひと時です。

患者さんはみなさん、「これからはこの状態が長持ちするようにずっと大切にして

いきます。」「セルフケアを丁寧に続けていこうと思います。」と言い、歯みがき指導を熱心に受け、歯みがき法をマスターしてくださいます。

そんな方たちにセルフケアのほかにもう一つ、私がお願いしていることがあります。それは、「メインテナンスを受けに今後も定期的に来院してください」ということです。

自分だけでお口の健康を守ろうとするのではなく、歯が痛くなくても定期的に歯科医院に受診し、お口の健康チエックや、クリーニングを受けて頂きたいです。

治療が終わったからと言って、私たち歯科医師や、歯科衛生士との付き合いまで終わらせないでください。今後も一緒にきれいな歯と、お口の健康をも持っていきましょう。

治療の終わりは再発予防の始まりです。

市民公開講座

第15回市民公開講座開催のお知らせ

20141115

 

市民公開講座

超高齢化社会を迎えた日本。高齢者の割合が増えるということは有病者の割合も増えるということで、例えば70歳以上の約7割が高血圧といわれています。そこで厚労省は”健康寿命”という考え方を提唱し始めました。

ただ長生きするのではなく、寝たきりにならずQOLの高い暮らしを送って欲しいということです。今回の市民公開講座では高齢者がかかりやすい病気の一つ”骨粗鬆症”を取り上げます。”骨粗鬆症”になると骨折しやすくなり、QOLを著しく低下させます。では”骨粗鬆症”とは一体どんな疾患なのか。

医師の立場から鹿山整形外科・鹿山富生先生に解説していただきます。次に”骨粗鬆症”に対して有効な薬”ビスフォスフォネート製剤”について薬剤師の立場から中央薬局・長谷川史朗先生に薬の特徴、使用上の中などについてお話いただきます。

そして最後に群馬県立がんセンター口腔外科部長・山根正之先生に薬の服用と口腔ケアについて解説していただきます。近年、ビスフォスフォネート製剤服用者の抜歯術後に顎骨壊死が生じた例が報告されています。

疾患や薬に対する正しい知識を持っていただくと同時に日頃の口腔ケアの必要性、重要性をご理解いただければ幸いです。

第14回市民公開講座

第14回 市民公開講座 開催報告

日時 平成25年11月16日(土) 午後2:00~午後4:00

場所 太田市宝泉行政センター(太田市西野谷町38-2)

主催 一般社団法人 太田新田歯科医師会

あなたの骨は元気ですか?

~骨粗鬆症と歯科治療の関係を考える~

 

 平成25年11月16日(土)午後2時より、太田市宝泉行政センターにおいて、「あなたの骨は元気ですか?~骨粗鬆症と歯科治療の関係を考える~」と題して、第14回市民公開講座が開催されました。

 すっきりと晴れ渡った穏やかな陽気の中、大勢の市民の皆様にご参加いただき、大盛況の講演会となりました。

 今回は、骨粗鬆症と歯科治療のさまざまな関係を、それぞれの視点から三名の先生方にご講演していただきました。

 鹿山整形外科医院 副院長 鹿山富生(かやま とみお)先生

 太田中央薬局     長谷川史朗(はせがわ しろう)先生

 群馬県立がんセンター   山根正之(やまね まさし)先生

 まず最初に整形外科の鹿山富生先生より、骨粗鬆症とは骨密度の低下によって骨折の危険性が高くなる骨格の病気という定義の説明から講演が始まりました。

骨粗鬆症による骨折が生じやすい部位として上腕骨近位部、椎骨、橈骨近位部、大腿骨近位部が挙げられ、特に大腿骨・背骨の骨折の場合、寝たきりとなり、床ずれ、肺炎、認知症等の合併症から要介護、要支援、死亡に至る可能性が生じる。骨折しなくても椎体圧迫骨折による脊柱の変形(姿勢の変形)により、体の痛みや日常生活の質の低下が起こる。

骨粗鬆症の原因は、閉経(女性ホルモンの低下)や加齢(筋肉量の低下、日光照射量の低下、腎臓機能の低下、カルシウム摂取不足、カルシトニン分泌低下)である。

骨粗鬆症になる病気は、糖尿病・リウマチ・肝臓病・腎臓病・甲状腺の病気や胃切除後、薬は、ステロイド、ワーファリン、生活習慣としては、アルコールやカフェイン多飲などがあげられる。

治療法は骨密度を上げることであり、カルシウムの摂取が必要である。しかし、カルシウムは吸収が悪く牛乳40%、小魚30%、野菜類20%程度。したがって、カルシウムの吸収を助けるビタミンD、マグネシウム、ビタミンKが必要となる。また、カルシウムの吸収を妨げるものとしてはリン(P)、食塩がある。リン(P)とはインスタント食品や練り物などの防腐剤、酸化防止剤に多く含まれる。

 ひと昔前は、骨折のしやすさ=骨密度の低下でしたが、現在は骨折のしやすさ=骨密度の低下(7割)+骨質(3割)となっている。

 骨質を良くするものとしてビタミンB6・B12・C、葉酸が必要、また、日光に当たることで皮膚でのビタミンDが合成されるので、家に引きこもらないように注意!!

骨折しにくい住環境のポイントは、ぬ・か・つ・け に注意。

ぬ・ぬれているところは滑りやすい(風呂場など)

か・かいだん、段差があるところは、転びやすい。

つけ・片つけてない部屋では、つまずきやすい。

ぬ・か・つ・け に注意して骨粗鬆症を克服して健康で明るい毎日を送りましょう。

つづいて、太田中央薬局の長谷川史朗先生のご講演では、骨粗鬆症に使われる薬についてお話しされました。

骨粗鬆症治療薬として、カルシウム製剤(アスパラCA)、活性型ビタミンD3製剤(アルファロール・ワンアルファ・ロカルトール)、ビタミンK製剤(グラケー)、ビスホスホネート製剤(ボナロン・フォサマック・ベネット・アクトネル・リカルボン・ボノテオ)、エストロゲン製剤(ジュリナ)、SERM(エビスタ・ビビアント)等が使用される。

カルシウムとビタミンDについて、骨の主成分はカルシウムであり、ビタミンDはカルシウムが体に入るのを助ける作用がある。ただし、カルシウム量が多すぎると腎障害が起こるので同時に使用するときは注意が必要。カルシウム・ビタミンDが不足すると骨はもろくなる。ビタミンDは紫外線を浴びると皮膚で作られるので、全く日光に当たらない生活だと、ビタミンDが足りず骨が弱くなる可能性がある。

ビタミンKは、骨にカルシウムをくっつける役割があり、納豆や緑色の強い野菜などに多く含まれる。しかし、ビタミンKはワーファリンの効果を邪魔してしまう。

エストロゲン製剤とSERM(サーム)について、女性ホルモン(エストロゲン)の役割は、骨を丈夫に保つ、髪の毛を豊かにする、免疫を高める、乳腺を発達させる、悪玉コレステロールを減らす、肌のつやや柔軟性を保つ等の作用がある。薬としてのエストロゲンの問題点は、乳がんの危険性を高める。SERMとは、骨や脂質代謝についてはエストロゲンと同じように働き、骨を強くして悪玉コレステロールを減らす。乳腺や子宮についてはエストロゲンとは逆に働き、乳がんなどの危険性を高めない。

ビスフォスホネート製剤の用法・用量に関連する使用上の注意(飲み方)

1.      水以外の飲料(Ca、Mg等の含量の特に高いミネラルウォーターを含む)や食物あるいは他の薬剤と同時に服用すると、本剤の吸収を妨げることがあるので、起床後、最初の飲食前に服用し、かつ服用後少なくとも30分は水以外の飲食は避ける。

2.      食道炎や食道潰瘍が報告されているので、立位あるいは坐位で、十分量(約180ml)の水とともに服用し、服用後30分は横たわらない。

3.      就寝時又は起床前に服用しない。

4.      口腔咽頭刺激の可能性があるので噛まずに、なめずに服用する。

5.      食道疾患の症状(嚥下困難又は嚥下痛、胸骨後部の痛み、高度の持続する胸焼け等)があらわれた場合には主治医に連絡する。

服用にあたって注意が必要な人

1.      食道、胃、腸に問題がある人。

2.      血液中のカルシウムの量に異常がある人。

3.      服用時に体を30分以上立てていられない人。

4.      妊婦又はその可能性がある人。

5.      腎臓や肝臓に問題がある人。

6.      歯科治療を受ける予定、又は治療中の人。

アクトネルの場合、重大な副作用として、食道穿孔、食道狭窄、食道潰瘍、胃潰瘍、食道炎、十二指腸潰瘍等の上部消化管障害、肝機能障害、黄疸、顎骨壊死、顎骨骨髄炎、大腿骨転子下及び近位大腿骨骨幹部の非定型骨折が報告されている。また、顎骨壊死や顎骨骨髄炎の発症のリスク因子として、悪性腫瘍、化学療法、コルチコステロイド治療、放射線療法、口腔の不衛生、歯科処置の既往等が知られている。使用上の注意として、本剤の投与開始前は口腔内の管理状態を確認し、必要に応じて患者に対し、適切な歯科治療を受け、侵襲的な歯科処置をできる限り済ませておくよう指導すること。本剤投与中に侵襲的な歯科処置が必要となった場合には本剤の休薬等を考慮する。また、口腔内を清潔に保つこと、定期的な歯科検査を受けること、歯科受診時に本剤の使用を歯科医師に告知して侵襲的な歯科処置はできる限り避けることなどを患者に十分説明し、異常が認められた場合には、直ちに歯科・口腔外科を受診するよう指導すると示されている。

副作用防止や早期発見のために

1.      服用時の水をしっかりと摂り、その後横にならない。

2.      胃痛、胸やけ、食欲不振などがあれば医師に相談する。

3.      歯をきれいに保ち定期的に歯科に受診する。

4.      歯やあごの痛みがある場合は、医師にも相談する。

5.      お薬手帳を使う。

お薬手帳は健康維持のカギとなっているので、受診の際は必ず提示するようにしましょう。

最後に、群馬県立がんセンター 歯科口腔外科 部長の山根正之先生には、特に骨粗鬆症治療薬のビスフォスフォネート製剤についてご講演して頂きました。

骨粗鬆症による大腿骨近位部骨折は2007年1年間に約16万人発生し、2030年には26万~30万人の発生が見込まれています。骨折後の患者さんの薬45%が自立困難、要介護となります。また、骨折後の死亡率は1年で10%強、2年で25%といわれています。そのために的確な骨折リスク評価と、確実で効率の良い骨折予防を行うことが大切です。

現在、骨粗鬆症の治療薬の中でビスフォスフォネート製剤は骨折予防のための最も有効な薬剤であり、その使用が推奨されています(自己判断で中止しないでください!)。これらの薬剤は骨粗鬆症の特効薬で重要な薬ですが、一方であごの骨壊死をおこすことが報告されています。あごの骨壊死の症状として、歯肉の痛み・腫れ・歯のぐらつき・抜歯後の治りが悪い・あごのしびれ・骨の露出・骨が腐る、などがあります。発生頻度は0.01~0.02%といわれており低い発生率ですが、歯槽膿漏(歯周炎)がひどい人や、歯の根の先に炎症がある人が抜歯などの外科処置を受けると骨壊死の可能性が高くなります。口の中には極めて多くの細菌が存在するため(糞便中の細菌に匹敵!)、あごの骨に限局した壊死が発生すると考えられています。

あごの骨壊死の予防で最も大切なことは、普段から口の中を清潔に保つことです。日々の歯ブラシ・うがいによる清掃、かかりつけ歯科医院での定期的な歯石除去・虫歯治療などが大切です。あごの骨壊死は一旦発生すると難治性で、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。口の中に痛み・腫れなどの症状がなくても、かかりつけ歯科医院で定期的に健診を受けるようにしましょう。

 講演後には質疑応答があり、参加者からの質問がありました。

・運動と食事について

 どんな運動が良いのか?

 痛みがあってもするのか?

という質問には、講演中にもお話しされていましたダイナミックフラミンゴ法という両手を広げて片足で立つ運動(片足ずつ1分間を一日3回<大腿骨の付け根に自分の体重の6倍がかかる>)を説明され、痛みがある方は治ってから無理せずに行うようにということでした。

食事については、なんでも好き嫌いせずに、楽しく、美味しく食べることが重要とおはなしされました。

・ビスフォスフォネート製剤服用患者の顎骨再建の治療法について

 どんな治療法があるのか?

という質問には、保存的治療法として、壊死部の切除(がん治療に準ずる)後にチタンプレートを埋入するという手術の説明がありました。

他にもいくつか質問がありましたが、盛況のうちに講演会が終了いたしました。

医師、薬剤師、歯科医師が、地域医療の連携を充実させ、市民の皆様の健やかな生活を願い、また、今後も市民公開講座を開催したいと思っております。ご参加して頂き有難うございました。

市民公開講座運営委員 増田康展