太田市・太田新田歯科医師会 第26回 市民公開講座開催報告
日時:令和7年12月7日(日) 午後2時~4時10分
開場:宝泉行政センター 多目的ホール(太田市西野谷町38‐2)
主催:太田市・一般社団法人 太田新田歯科医師会
後援:太田市教育委員会・太田保健福祉事務所・太田栄養士会・太田歯科技工士会
群馬県歯科衛生士会東毛支部・群馬県歯科医師会
講師:日本歯科大学附属病院 病院長
日本歯科医学会 会長 小林隆太郎 先生
演題:生きること...食べる、話す、老いを考える ~「口腔健康管理」の大切さ~
市民の皆様にお口の病気や機能などに関する情報を発信する事で、少しでもお口の健康管理に関心を持って頂き、その重要性を知って頂くきっかけを作る事を目的とした市民公開講座が今回で26回目の開催となります。晴天の下暖かな日曜日の午後に120名の方々にお集まり頂き開催されました。
口腔の健康を管理することがどのようにして生きることと関わるのか?具体的に食べること、話すこと、老いること、いかにして健康寿命を延ばせるかについてお話しして頂きました。


本日のテーマ
口腔健康管理 ・食について ・歯科界の潮流
〇日本人の主な死因(人口10万人対)
1位:悪性新生物〈腫瘍〉2位:心疾患(高血圧症を除く)3位:老衰4位:脳血管疾患5位:肺炎
これら全ての疾患が歯科(お口の健康)に関わる、特に肺炎(誤嚥性肺炎)
〇歯科の二大疾患
むし歯 : むし歯菌 ・ 歯周病 : 歯周病菌
日本人の主な死因すべてにむし歯菌と歯周病菌が関わっている!!
〇今、社会から歯科がとても注目されています!
キーワード
口腔衛生の視点 : 歯周病菌、むし歯菌と全身疾患
口腔機能の視点 : 食べること、話すこと
健康寿命延伸 : 「口腔機能管理」が重要
◎口腔健康管理
- 口腔機能管理:う蝕処置、歯周関連治療、口腔外科治療、補綴治療、種々の口腔機能に関する管理等
(歯科医師が行う治療そのものが管理 プロフェッショナルケア) - 口腔衛生管理:口腔バイオフィルム除去、歯間部清掃、口腔内洗浄、舌苔除去、歯石除去等
(歯科衛生士が管理 プロフェッショナルケア) - 口腔ケア:歯磨き、歯ブラシの保管、義歯の清掃・着脱・保管、食事への準備等(嚥下体操、姿勢調整)
口腔清拭など (セルフケア)
〇全身疾患との関わり
8020運動:現在達成率50%!12歳までの子供の虫歯は1本未満!!ケアをすると虫歯は出来ない!!
足の8020運動:80歳で20分歩けることを目標とする。食べられること、歩けること、トイレに行けることで健康を維持できる。
・歯周病と全身のさまざまな病気(歯と口のケアで病気のリスクを下げる)
糖尿病・心臓病・骨粗鬆症・肥満・脳梗塞・認知症・誤嚥性肺炎・関節リュウマチ・低体重児出産・早産等は歯周病菌が出す毒素が関わっていることが判明している。歯周病の怖さは歯を失うだけではなく、全身の病気とのかかわりを理解して歯と口のケアに努めることが大切。
・法律: 第百五号 健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病、その他の循環器に関わる対策に関する基本法 第二条 政府は、肺栓塞症、感染性心内膜炎、末期腎不全その他の通常の循環器病対策では予防することができない循環器病等に係る研究を推進するとともに、その対策について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるほか、歯科疾患と循環器病の発症との関係に関わる研究を推進するものとする。 とあり、歯科治療の重要性を意味する。
・糖尿病: 医科では生活習慣病管理として糖尿病患者について、歯周病の診断と治療のため、歯科を標榜する保健医療機関への受診を促すこととなっている。糖尿病が関連した重度慢性歯周炎患者(糖尿病併存歯周病)に対して歯科医師の指導のもと、歯科衛生士が口腔衛生指導や感染源除去などの歯周基本治療を行うことによって、糖尿病と歯周炎の状態をともに改善することができた。患者が主体となる医科歯科連携に導くことは糖尿病治療における歯周治療の重要な役割であり、歯科衛生士は歯周治療を通じて医科歯科連携医療に大きく貢献できると考える。
・認知症: 歯科と認知症の関連・メカニズム解明について
1,歯周病(慢性炎症)から脳内炎症を惹起し、アルツハイマー病の病態が憎悪して認知症を誘発
2,歯の欠損から軟らかい、液状の食事になり、咀嚼機能が低下し海馬神経の脱落により認知症を誘発
したがって、適切に噛めることは、咀嚼機能の維持に大切なことであり、認知症誘発予防に関連があると考えられている。奥歯のかみ合わせが失われるとアルツハイマー型認知症の発症リスクが高まるという研究結果がでている。
結論
重篤な歯周病or多くの歯の喪失は認知機能障害と強く関連
不健口と認知症は赤い糸で結ばれていた!
・2020~2021年の代表的システマティックレビュー
2020 歯周病菌は動脈硬化、アルツハイマー病、リウマチ、その他の疾患と関係している。
2021 歯周病菌の毒素は歯周病の全身への悪影響に関与している。
2021 歯周病は、心血管疾患とアルツハイマー病と関連している。
2021 口腔細菌叢の乱れは、アルツハイマー病、糖尿病、心血管疾患、ガンと関連している。
東京医科歯科大 相田教授
日本人3万5千人
歯の減少(20本未満)は、認知症の発症に有意に関連していた
大阪大学 池邉教授(老年歯科疫学研究の第一人者)
日本人70歳代994人、80歳代968人
奥歯でよく噛める人は認知症になりにくい
岡山大学 窪木教授
システマティックレビュー
口腔ケア、歯科治療、口腔運動療法は認知機能の改善に効果あり としている。
- 誤嚥性肺炎:成人肺炎診療ガイドライン2024では、歯科に関する関連項目が倍増されている。
1)誤嚥性肺炎の項目が新設
2)肺炎予防の項に、肺炎球菌ワクチンとともに口腔ケアが明記
3)口腔の嫌気性菌の役割が明記
4)肺炎予防としての口腔ケア(口腔健康管理)が重要であること
誤嚥とは、気管支方向に侵入した食物等が声帯よりも奥に入ってしまうこと。
(食道ではなく気管に入ること)
- 誤嚥性肺炎発症の予防
食物誤嚥: 食携帯の工夫、食べる姿勢、リハビリテーション
唾液誤嚥: 口腔ケア、歯周病治療
胃食道逆流誤嚥: 逆流性食道炎の治療
日本は特に高齢者が多く、新型コロナウイルス感染症対策で、呼吸器疾患対策(特に誤嚥性肺炎)の重要性が改めて明らかになった。
口腔内の細胞に新型コロナウイルスが直接感染する 口腔内の細胞が気づかぬうちに感染し、唾液を飲み込んで気管や肺にウイルスが侵入したり、他人に飛散させたりする「培養装置」になっている。 - ウイルスに対抗する歯科の重要性
口腔健康管理(口腔機能管理・口腔衛生管理・口腔ケア)が大切
歯科医療は、生きるため・生きる力に寄与する医療。口は、健康の入り口、病気の入り口
口は命の入り口であり、命を守るために口腔健康管理の理解が大切!!
- 歯科治療の需要の将来予想(イメージ)
治療中心型から治療・管理・連携型(口腔機能の維持・回復)へ - 加齢による口腔機能の変化
食べる喜び、話す楽しみ等のQOL(生活の質)の向上を図るためには、口腔機能の維持・向上が重要である。高齢期においては、摂食・嚥下等の機能が低下しやすく、これを防ぐためには、特に、乳幼児期から学齢期(高等学校を含む。)にかけて、良好な口腔・顎・顔面の成長発育及び適切な口腔機能を獲得し、成人期・高齢期にかけて口腔機能の維持・向上を図っていくことが重要である。
- 口腔健康管理を考える:歯だけを治療するという誤解されたイメージが定着してきたが、各ライフステージに応じたライフコースとした考えでの口腔健康管理の推進が進められている。
- オーラルフレイル:滑舌低下、食べこぼし、わずかなむせ、かめない食品が増える、口の乾燥等などの「ささいな口腔機能の低下」から始まる。早めに気づき対応することが大切。これらの様々な「口の衰え」は「身体の衰え」(フレイル)と大きく関わっている。「オーラルフレイル」を理解して、健康寿命を目指しましょう。
- フレイルの予防の3つの柱:
1)口腔・栄養(食・口腔機能)
①食事(たんぱく質、そしてバランス)
②定期的な歯科受診
2)身体活動(運動、社会活動等)
①たっぷり歩く
②ちょっと頑張って筋トレ
3)社会参加(就労、余暇活動、ボランティア活動等
①お友達と一緒に食事
②前向きに社会参加
3つの柱を底上げして、健康な毎日を送りましょう。
- 口の機能低下の負のスパイラル
加齢による筋力低下➡口腔機能低下➡食べる量が減る➡たんぱく質やミネラル等の摂取不足
╚➡低栄養➡要介護状態
- 「まごはやさしい」とは:
“和の食材の頭文字を覚えやすく語呂合わせにした合言葉”のこと。7種類の食材をまんべんなく取り入れることで、健康的な食生活が送れると言われている。
「ま」=豆類
「ご」=ごま(木の実)
「わ」=わかめ(海藻類)
「や」=野菜
「さ」=魚
「し」=しいたけ(キノコ類)
「い」=いも の略
- オーラルフレイル対策のための口腔体操(あいうべ体操)
①お口・舌の動きをスムーズにする
②飲み込むパワーをつける
③噛むパワーをつける
④舌をよくする
⑤舌のパワーをつける
- 食べるときの正しい姿勢
○骨盤を立てる(猫背はダメ)
○体とテーブルの間はこぶし1つ分
○足が床についている
- 食べ方のいい習慣を!!(良くない食べ方)
○早食い・駆け込み食い・ながら食い
○口いっぱいほおばる
- うなずき嚥下(あごが上がっているのは✖)
○飲み込む瞬間うなずくように少し下
○下を向いた瞬間、ゴックンと飲み込む
◎食について
食育:生活の基礎作りに役立つ、基本的な食を学ぶ教育。生きる上での基本であって、様々な経験を通じて「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てるもの。
食養:食養生のことであり、食事で体を健康にすること
見直そう昔からの健康食材
見直そう昔からの長寿食材
見直そう昔からの長寿食
- 食養の基礎理論 陰陽
陽性のミネラル ・ 陰性のミネラル
組み合わせるバランスにより「中庸」にして、食事で健康になることを教えている。
「陰」は拡散性と遠心性と上昇性のエネルギーで働きカリウムが多く、体を冷やし、細胞や内臓、体をゆるめる。
「陽」は収縮性と求心性と下降性のエネルギーで働きナトリウムが多く、体を温め、細胞や内臓、体が締まる。 - がんに“勝つ”ではなく、がんに“克つ”(困難を切り抜ける)
がんに克つ五か条
・睡眠 ・食事 ・運動 ・加温 ・笑い
- 漢方、自然医学的にみる 「がん」とは
・西洋医学では、がんの原因は不明とする。
・漢方医学的では、2000年も昔から
「食は生命なり」
「食が血となり、肉となる」
「万病一元、血液の汚れから生ず」 と考えられてきた。 - 「歯科からみた食育」
口は健康の入り口、病気の入り口 「命の入り口」
歯科から、命を守り感謝の気持ちを持った「食育」の大切さを伝える - 「食育」の3つの大切な目的
・安心、安全、健康な食べ物を選ぶ「選食力」を身につける
・食事の作法や感謝の気持ちなどを学ぶ「共食力」を身につける
・視野を大きく持つ「地球の食を考えるチカラ」を身につける
- シャボン玉友の会だより
歯を大切にすることは命を大切にすること、それは自然に還る生き方につながっている
・合成洗剤の有毒性 経皮毒
腕の内側を「1」としたときのからだの部位別吸収率の違い
・ひたい6倍 ・あたま3.5倍 ・あご13倍 ・わきの下3.6倍 ・背中13倍 ・腕の内側1(基準値)
・性器42倍 ・手のひら0.83倍 ・かかと0.14倍
香害 日本に新しい公害が生まれています。 - くらしの中の合成洗剤!!! 石けんと合成洗剤の環境への影響
・石けん:1日で水・二酸化炭素に分解 石けんカスは微生物、魚のエサになる
・合成洗剤:21日で8割分解 10年以上経っても完全には分解されない
- 純石けん(無添加石けん)のCovid-19有効性
2020.6.26 経産省発表
新型コロナウイルス対策で、アルコール消毒液の代わりになる消毒方法の検討を進め、新たに「純石けん成分(無添加石けん)」が有効であると発表
石けん成分(脂肪酸カリウム)の一種「オレイン酸カリウム」は、オレイン酸を含む天然油脂を原料に使用したカリ石ケン素地。インフルエンザウイルス、ノロウイルス、新型コロナウイルスを不活化することが実証されている。自然の物には、自然の物で対応することが大切である。
◎歯科界の潮流
社会の変化
2025年:「団塊の世代」が75歳以上になる年
2040年問題:少子高齢化が進み、65歳以上の高齢者の人口がピークになる
歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士の数が不足!
歯科医師がどんどん減っている!特に地方が減少、都市に集中!!
89%の歯科医院は後継ぎが無く、医院の閉鎖が増加!
医療として管理をするためには歯科医師の数が不足していて、もっと不足しているのは歯科衛生士、もっともっと不足しているのは歯科技工士である。
歯科衛生士は命を救う!日本の未来を救うのは歯科衛生士である。
そのために、歯科界に人材を増やすことが重要課題となっている。
- 健康寿命の延伸のために
・がん、心疾患などの1次予防、2次予防をより一層進めていく
・筋骨格系疾患への対応
・メンタルヘルスへの配慮
・そして、口腔管理が重要
- 口腔健康管理
噛む大切さ : 機能 ・ お口をきれいに : 衛生
歯だけを治療するという誤解されたイメージが定着してきました
目指すは、命と向き合い、国民のトータルな健康に心砕く歯科医療を
「歯を大切に」 から 「命を大切に」へ
- 生きること、それは 食べること、話すこと
楽しく食事をして、楽しく話をする 健康的に年を重ねていく
その「チカラ」を守るために「口腔健康管理」が大切となります。
普段の口腔ケア(セルフケア)
定期的な歯科受診(プロフェッショナルケア)を習慣にして行動しましょう。
そうだ歯科に行こう!
―食べること、健康であること、美しくあること、全ては人々の幸せにために!-

文責 太田新田歯科医師会 市民公開講座運営委員 増田康展






