根面う蝕を知っていますか?

一般社団法人太田新田歯科医師会

とねき矯正歯科医院
院長 渡木 澄子

デンタルケア意識の向上により、子供の虫歯は減少傾向にありますが、中高年以降、特に高齢者の間で「大人の虫歯」が増加してきています。子供と大人で虫歯は違うの?と思うかもしれませんが、虫歯になる場所が変わってきます。

一般に虫歯と言えば歯肉から外へ出ている部分(歯冠部)の虫歯のことを指しますが大人の虫歯は歯と歯肉の境目、歯の根元(歯根)の部分に好発し根面う蝕といいます。年齢を重ねていくとお口の中の変化として歯肉の低下(歯肉退縮)がおこり歯が長くなったようにみえることがあります。

特に歯周病にかかると歯肉の退縮が進み、健康な時には歯肉にかくれていた歯根が外に現れてしまいます。歯冠の表面はエナメル質に覆われていますが、歯根はセメント質に覆われています。エナメル質に比べセメント質は柔らかく表面がザラザラしているので、汚れが付着しすく虫歯にかかりやすいのです。

また根面う蝕は、治療しにくい虫歯といわれています。歯冠の虫歯の多くは外から中へ向かって縦に進行するのに対し、根面う蝕は歯と歯肉の境目に沿って横に進行して歯の周りをぐるりと取り巻きます。
また痛みがないため気づきにくく、歯冠部が健全な状態で残っているのに歯根が環状に虫歯になっている場合もあり、やむおえず抜歯をせざるを得ないなど重症化しやすくなります。

根面う蝕に対する治療は難しいといわれています。歯冠部の虫歯には接着性プラスチックを詰めて治すことも多いのですが、エナメル質には十分な接着強度があるこの材料も、セメント質や象牙質にはまだ完全な接着の性能がありません。

このようなことから、不用意に削らず進行を抑制し、管理することが治療法の1つとし提唱されています。歯肉の退縮が気になり始めたら、歯医者さんでの定期的なメンテナンスに通うことが大切です。

気になる方は歯医者さんで相談してください。