部分入れ歯の話

太田新田歯科医師会

しまざきデンタルクリニック

院長 島﨑 政人

部分入れ歯の話

 

昨年3月に引き続き入れ歯の話をします。

前回は総入れ歯について、適合や噛み合わせ調整、製作時期について説明しました。

今回はパート2とし、部分入れ歯についてお話しします。

 

部分入れ歯は、歯が1本なくなった状態から1本しかない状態のものまでの入れ歯の事を言います。

歯や歯茎の代わりの部分と入れ歯を動かなく維持する部分があります。

部分入れ歯に維持する部分が必要な理由をお話しします。

部分入れ歯が総入れ歯と異なる点は、歯がある事です。総入れ歯は、粘膜に密着する事で動き難くしますが、部分入れ歯は、歯がある事で閉鎖し密着し難い環境にあります。したがって、入れ歯の動きを少なくするためにはなんらかの装置が必要になります。

歯と歯の間に人工の歯を置いただけだと横にずれてしまうので両隣の歯を包む装置が必要になります。また、歯の無いところが粘膜で覆われているので沈み込んでしまうので、両隣の歯の上に支えを置く必要があります。これがいわゆるバネです。

歯は、平行でもないし、曲面なので、入れ歯との間に隙間ができやすいです。隙間が多いと入れ歯は動きやすくなります。動きやすいと外れやすく、粘膜も擦れて痛みやすいです。そのため、歯の表面を少し平行に削ったりすることにより隙間を少なくする事で入れ歯の動きを少なくする処置をする事があります。

入れ歯が浮き上がらなくするために、曲面の凸部下にバネを引っ掛けます。弾力性のあるバネなら、より多く引っ掛けられます。引っ掛けると言っても、バネの先端0.25から0.5mmです。これにより、入れ歯が外れにくくなります。

健康な歯は、咬んだ時約0.02mm沈みます。粘膜は約0.5mm。この差が入れ歯を揺らしてしまいます。したがって、適切なバネと調整が必要になります。

歯の無い部分の前後に歯が残っていれば、支え易いですが、前方にしか無い、後方にしかない場合には様々な工夫が必要となります。

単純に考えると、歯が無い本数が増えれば、支えるバネの本数も必要ですし、入れ歯の面積も大きくなります。そうなると、舌にあたったり、敏感な粘膜部分に触れたり、違和感も増えます。

この様に歯科医は、様々な事を考慮して設計し製作しています。歯の無いところに歯の代わりとなるものを入れる。単純な事ですが、これが意外とむずかしいのです。

使える入れ歯は人工臓器となり、使えなければただのオブジェです。

歯医者と話し合いながら、使える入れ歯を作りましょう。