エナメル質形成不全症について

太田新田歯科医師会
まきいこども歯科
院長 牧井 覚万

エナメル質形成不全症について

我々歯科医師が日常診療中に、よく見かける歯の状態で『エナメル形成不全症』というものがあります。近年、永久歯、乳歯ともに、この『エナメル質形成不全』が急増しており、その罹患率は20%程度との報告もあります。エナメル質形成不全は、昔から存在していましたが、この10~20年で急激に増加していることから、環境要因も含めた社会環境の変化に起因しているものと考えられています。

『エナメル質形成不全症』とは?

まず歯の表面にあるエナメル質は、人体の中で最も硬い組織です。歯の表面がエナメル質で覆われていることで、歯は様々な刺激、虫歯菌からも、ある程度守られているのです。このエナメル質が、石灰化不全、つまり完璧ではないモロい状態で歯が生えてくることを『エナメル質形成不全症』といいます。

エナメル質

2012年頃から日本小児歯科学会を中心に研究が盛んになりましたが、その報告からすると子供の11%~20%の頻度でエナメル質形成不全がみられると報告されています。
これは5人~10人に一人の割合であり、歯科医師からするとかなり高頻度であると言えます。

そういった歯は、通常のエナメル質より軟らかく、色も白い歯に比べて黄色かったり、茶色がかったようであり、また表面も輝きがなく実際ボソボソとして柔らかいです。

前歯と、第一大臼歯(奥歯)によく起こるのですが、歯科治療で特に問題になるのは奥歯である、第一大臼歯の形成不全です。

生える途中の大臼歯は、歯茎に覆われており、もともと汚れが溜まりやすく、炎症が起きやすく、虫歯になり易いです。

また、形成不全の場合、歯がしみることがあります。歯磨き時にしみるので磨き残しが増えてしまうことも多いです。歯の質が弱いこともあり虫歯になると急速に歯の破壊をおこします。

最後に、エナメル質形成不全症の原因についてです。
いまだに、特定の原因は明らかになっていませんが、ビタミン不足、ホルモン異常、内分泌異常、感染などにより歯の形成の、成長が一時的に阻害されることにより起こるのではないかと言われています。

 

虫歯の進行も早く、完璧な治療法も確立していないため、もし学校検診時などに指摘されることがありましたら、早めに歯科を受診し、定期的な検診をお勧めします。