6月4日はむし歯の日?

 6月4日はむし歯の日としてよく知られています。これはお偉い方が初めてむし歯になった、あるいは治したのを記念した日、ではなく。甘いものを国民に食べさせて国民をむし歯にして、それを治すことによっておかねもうけしようという悪い歯医者の策略で出来た日、でもありません。

 1928年に日本歯科医師会がむし歯予防デーとしてその読み方にちなんだ記念日を6月4日に決めました。ちなみに先ほど言いましたように、6月4日はむし歯の日ではなく、むし歯予防デーが正しいのです。これは、先ほどの悪い歯医者が、『むし歯を呼ぼうでー』といっているのではなく、むし歯を予防するための日、という意味です。

この時期は新年度がはじまって少し経っていて歯科健診の時期としても適当でしたので、1939年からは文部省および厚生省の共同管理となりました。1955年からは「歯の衛生週間」が、6月4日から6月10日までもうけられ、大体そのあたりに学校健診をしたことから、日本国民に浸透したと思われます。

 この6月4日はむし歯を予防するための記念日ですが、最初にお話したようにむし歯の日として誤解を与えそうだということもあり、別の4月18日が「良い歯の日」として1993年に日本歯科医師会によって制定されました。また同時に、11月8日を「いい歯の日」と制定したのも日本歯科医師会で、同じような記念日を二つ設けるとはちょっと節操がないようにも思いますが、制定したのには間違いありません。11月8日には日本歯科医師会主催でベストスマイルオブザイヤーの授賞式も行われます。

 さて他の歯科に関わる記念日と言えば、日本矯正歯科学会は同じ11月8日を「いい歯並びの日」と制定しています。主催者が変われば呼び名も変わるということでしょうか。同じ矯正関係でも日本臨床矯正歯科医学会は8月8日を歯が並んでいることから「歯並びの日」と制定しています。また佐藤製薬は11月8・9日をいい歯ぐきとし、歯ぐきのケアの大切さを説くために「歯ぐきの日」と制定してPRイベントを行っていますし、サンスターは毎月8日を「歯の日」と呼び販売促進のために力を入れようとしています。

その他、歯科に関係する記念日としては、全国保険医団体連合会が提唱した「保険で良い入れ歯を」運動のために、10月8日の「入れ歯デー」が定められています。驚いたことに5月2日は「歯科医師記念日」となっています。何でも1957年の歯科医師法施行にちなみ制定されたとか。しかし制定されているからと言って何か特別なことがあるようには見うけられません。

たいていの○○の日というのは、昔からのしきたりや、言い伝えが無い限り、その関係者が言い出す、言い始める、悪く言えば『でっち上げる』事が多いようです。それに、たとえかなり昔から神話のようなものがあったとしても、その言い伝えは原始時代からあるわけではないのだから、誰かが言い出したのに違いありません。歯に関する記念日は、ほとんどが建国記念の日のような神話に基づいた記念日というよりは、どうも語呂合わせで決められた日ばかりのようです。このことから、日本には歯に関する神話が無かったのだとも分析できますし、歯医者は昔から親父ギャグが好きだったのだ、とも分析できます。よく考えて見れば歯科医師会はおじさんの集まりですね。

しかし、たとえ寒い語呂合わせでも、語呂合わせは覚えやすく、覚えやすければ国民に浸透しやすく、浸透すれば歯の健康等をアピールしやすく、アピールしやすければ国民への歯の大切さの啓発になり、結果的に国民の幸福と富に患者の掘り起こしにもつながりますので、決して悪いことではないと思います。