親知らずについて

二十歳も過ぎ、ほかの歯に比べて遅れて生えようとしてくる奥歯があります。
人生50年といわれた昔は、親が亡くなってから生えてくる歯であることから、「親知らず歯」と名づけられたようです。
歯科医はこの歯を第三大臼歯と呼んでいますが、知歯とも呼ばれています。
この歯は口の奥のほうに、季節はずれといってよい時期に生えてきて面倒を起こすことが多い歯で、時に患者さん泣かせであり、時に歯科医泣かせの厄介ものである場合が多いのです。

 親知らずは普通、上あご、下あごの左右にそれぞれ1本ずつ、計4本あるのですが、人によってはもともと持っておらず全く生えてこない場合もあり、1~4本生えてくる人もいます。
 一方、顎の骨の内部の隅の方でおかしな形になったり、曲った方向をむいて一生生えてこない場合が多くあります。
また、生えてきても、生える余地が少ないために、歯冠の一部だけが口腔内に頭を出してきたりします。
この部分は歯ブラシなどでの清掃がしにくいてためにむし歯や歯周病になりやすく、また反対側の歯や頬の粘膜にぶつかって痛みや不快感などの症状を起こします。
このように、親知らずの周りには智歯周囲炎といった炎症が起こりやすくなり、とくに下の埋伏智歯は重症の感染症をきたす場合があり、さらに嚢胞という病気の原因になることもあります。

 このように、親知らずはその本来の物を噛むという機能を果たさないことが多いばかりでなく、からだの中の邪魔者となって害になっていることが多く、口腔の健康を維持するためには抜かなければならない場合が多いのです。
 しかしながら、自家歯牙移植という治療法が存在し、親知らずの保存が移植歯・ドナー歯として役に立つ場合もあることも知っておいていただきたいと思います。

最後に、大まかに残しておけるもの、残しておいたほうがよい歯とは
① 上下しっかりと生えていて、よく噛んでいる歯
② そこそこ、しっかりと生えていて清掃状態が良好な歯
残さないほうがよい・抜いたほうがよい歯は
① 大きなむし歯で痛いあるいは痛くなりそうで、治療の難しい歯
② たびたび歯肉が腫れて痛くなる歯
③ まっすぐに生えていないなどで、汚れがたまり隣の歯に悪い影響を及ぼす歯
その他にも、状態によって判断は様々ですので、気になるような親知らずをお持ちでしたら、一度かかりつけか近くの歯科医院で診てもらうことをお勧めします。

「リラックス」して安心・安全な治療を!

私たちは、外界からのさまざまな刺激(ストレス)を受けています。
このストレスに反応するのが自律神経系です。
自律神経系では、交感神経と副交感神経がそれぞれ拮抗する作用を持って生体を統御しています。
 交感神経が優位なときは、私たちがストレスと戦っている「戦闘状態」にあることを示します。
逆に副交感神経が優位なときは、安らいだ「リラックス状態」であることを示します。
 たとえば、あなたが森の中で突然くまに出会ったときを想像してください。まず、あなたの瞳孔は大きく見開かれ、全身は鳥肌が立ち、手に汗にぎり、全身の筋肉はこわばります。
これはすべて、交感神経の作用なのです。
さらに、血管が収縮して、血圧は高くなり、心臓は早鐘のようにドキドキし、口の中はカラカラになります。
これらも交感神経の作用です。

こうした反応は、人が身構えるときに生じます。
人前で何かを喋らないといけないときや、怖い上司や嫌いな人に会ったとき、そして、歯科治療に不安があるとき、歯科で歯を削るキュイーンという音を聞いたとき、口のなかに麻酔注射をされるときにもこのような反応は起こっているのです。
 これに対して精神的にリラックスした状態では、副交感神経系が優位になります。
瞳孔は小さく、胃液や唾液の分泌は高まり、手や足は温かく気分も楽な状態です。
このとき血管は拡張し、血圧は安定し、脈拍も落ち着き、穏やかな風景のなかでゆりかごに安心して揺られているような状態です。
 歯科治療も、このような副交感神経優位で受けていただきたいというのが、じつは歯科医師の理想です。
でもなかなかそうはいきません。だからこそ、治療する歯科医師は、安心で安全な治療を提供していることをご説明し、患者さんの十分な信頼を得ようと努力しています。
もしも歯科治療の内容に不安なことがあったら、そのむねを伝え、十分な説明を受けてください。
また、治療中に痛みなどいやなことがあったら、歯科医師に伝えるなどぜひコミュニケーションをお願いします。
リラックスして歯科治療を受けることは、とても大切なことなのです。