ノド飴とムシ歯

太田新田歯科医師会

おおばら歯科医院

松本 文男

長く続くノドの痛みや、咳などで、普段から飴をなめる習慣がある方もいらっしゃると思います。ノドがつらい時に、たまになめる程度なら何も問題ありませんが、飴が習慣になり、次々と長時間なめ続けるようになっている方は、ムシ歯に気をつけて下さい。

我々、日常の診療の中で、久しぶりに来院された方のお口に、突然ムシ歯が多発していて驚く事があります。不思議に思い、良く話を伺うと、実はノドの調子が悪くて四六時中ノド飴をなめているということがありました。また別の方ですが、禁煙をしてから気を紛らわすために、いつも飴を口に入れていると言う事もありました。ほとんどの飴は砂糖を多量に含んでいます。それが絶えず口の中にあった事で急激にムシ歯が出来てしまったと考えられます。

甘いものがムシ歯を作るということは、良く知られていると思います。口に砂糖などの糖類が入ると、ムシ歯菌によって酸が作られ、口の中が酸性になり歯が溶け始めます。歯を磨けばすぐ元に戻りますし、たとえすぐに歯磨きしなかったとしても、通常は唾液の作用でしだいに中和されます。しかし、続けて長時間飴をなめているような時には、その間ずっと口の中が酸性の状態が続き、ムシ歯が進行してしまうわけです。

ノド飴によるムシ歯を防ぐには、まず第一に口の中を長く酸性の状態にしない、つまり飴を何個も何個も続けて、長く舐め続けないようにすることです。出来るだけ必要最小限の量にした方がいいです。そして第二にキシリトールなどシュガーレスの飴を選ぶようにすることです。ただ気をつけていただきたいのは一般的なシュガーレス表示は糖類が0.5%未満のものを指し、必ずしも砂糖がゼロとは限りません。シュガーレスだからといってムシ歯になる恐れが無いわけではありませんので、過信しては行けませんが、そうで無いものよりはムシ歯のリスクは減少します。ノド飴を選ぶ時には成分表示の、特に糖質に良く注意してみて下さい。

ノドがつらい人にとっては切実な事ですが、ノド飴の常用はむし歯を作りやすいと言うマイナス面がある事を認識していいただき、またノド飴だけに依存せず、水分摂取やうがいなど他の方法も併用して対処していただきたいと思います。

そして、しばらく飴を手放せないでいた方は、ムシ歯が出来ていないか、ぜひ歯の検診を受けて下さい。