第18回 市民公開講座 開催報告

太田市・太田新田歯科医師会

第18回 市民公開講座 開催報告

 

日時:平成29年11月11日(土)午後2:00~午後4:30

場所:太田市学習文化センター(太田市飯塚町1549‐2)

主催:太田市・一般社団法人 太田新田歯科医師会

「あなたの口腔ケアできていますか?

入れ歯のケアは・・・・」

 

木枯らしに吹かれておりましたが素晴らしい秋晴れの下、第18回市民公開講座が太田市学習文化センターで開催されました。昨年より太田市と共催となり2回目となる今回の市民公開講座は、落語家さんをお招きして、講演会と落語の2部構成となりました。

第1部の公開講座は、太田新田歯科医師会会員の とちはら歯科 院長 鎌田政善先生による口腔ケアを題材にお話しして頂きました。

とちはら歯科 院長

〇歯科の二大疾患

お口の中の主な病気はう蝕(むし歯)と歯周病(歯槽膿漏)であり、これらを如何に予防するかが重要です。その原因は歯垢(プラーク)!!

食物が歯と歯茎の周りに残ると口の中の細菌が付着し細菌叢を作ります。これをプラークといいます。口腔内には約500種類の細菌(常在菌は約千億)が存在し、ほとんどが無害ですが、口の中が不潔でバランスが変化すると病気を発症します。

う蝕(むし歯)、歯肉出血、排膿、腫脹、退縮、歯の動揺、口臭はプラークが原因であり、プラークを除去する事で歯肉は健康を回復しう蝕(むし歯)を予防できます。そのためには、正しい歯磨きを継続して行うことが重要です。歯ブラシ、電動歯ブラシ、タフトブラシや、歯間ブラシ、デンタルフロス等の補助的清掃器具を使用することにより、しっかりとプラークを除去することができます。また、口腔内の菌数が極めて多い場合は抗菌薬を使用し除菌するケースもあります。

〇口腔管理(ケア)は誰がやるの?

歯科医院で月に一回お口の中をお掃除してもらうだけでは、う蝕(むし歯)と歯周病予防にはなりません。お口の中の状態はひとによりさまざまです。その患者さんにあった、その患者さんによるホームケアが最も重要です!!

歯科医師による定期的な観察と歯科衛生士によるプロフェッショナルケア、そしてその患者さんにあった歯磨きの方法をチェック・指導してもらい、その患者さん自身が正しい歯磨きを継続してできるようにならなければなりません。

平成28年には “8020運動” が50%を達成しました。これは医療機関側だけで成し得たことではなく、患者さん自身が自分のお口の中を健康な状態に保つという意識の表れによるものです。

〇残存歯数と長寿

残存歯数が多い人は、少ない人に比べ生命予後が有意に高いという調査結果があります。また、欠損歯がある人で義歯を装着していない人は、義歯を装着している人に比べ1.52倍死亡率が高いという報告もあります。

義歯(入れ歯)は、自分の歯で食事をしていた時の力に比べ、どんなによくできた入れ歯でもその時の力の30%程度でしか噛めないものです。ですから、以前と同じように何でも好きなものを食べるのではなく、無理のないように上手に使って食事をしていただく事をお勧めします。

〇義歯(入れ歯)のお手入れが重要!!

義歯にもプラークは付着します。付着したプラークにより義歯性口内炎を引き起こします。特にカンジダ菌が原因です。そして口腔カンジダ症を発症することがあります。

口腔カンジダ症とは、主に口腔粘膜の白苔・発赤を主症状とするものですが、進行すると肺カンジダ症や腎カンジダ症などの内臓真菌症の起因となります。

義歯性口内炎や口腔カンジダ症を予防するためには、口腔内は洗口剤(リステリンやモンダミン)を使用する事が有効であり、義歯は義歯専用ブラシを使用し機械的に汚れを除去する。そして義歯洗浄剤を使用し科学的に洗浄・除菌し、きれいな状態を保つ事が必要となります。

〇現在我が国における死因

1位:がん(悪性新生物)

2位:心疾患(狭心症、心筋梗塞)

3位:肺炎(誤嚥性肺炎)

4位:脳血管障害(脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血)

3位の肺炎(誤嚥性肺炎)は、カンジダ菌が原因でもあります。年間に12万人、太田市民の約半数が肺炎(誤嚥性肺炎)によってお亡くなりになっています。

〇肺炎(誤嚥性肺炎)を予防するには?

専門的口腔ケア(口腔衛生、口腔機能)が重要となります。

1,器質的口腔ケア

口腔衛生を主体とした歯科口腔疾患の予防処置、感染予防(誤嚥性肺炎予防)などを目的とした口腔ケア。<口腔衛生、ブラッシング、口腔清拭>

2,機能的口腔ケア

口腔諸機能の回復を目的とした口腔ケアであり、摂食嚥下リハビリテーション・言語訓練などを応用した機能回復訓練。<筋ストレッチ、舌運動、口腔刺激法>

〇誤嚥性肺炎予防‼

・日常の手洗い、うがい(菌やウイルスの排除)

・就寝前の歯磨き、うがい(就寝中の唾液等が咽頭に流れ込んだ際に、異物や菌・ウイルスが入り込むことが軽減される。)《重要》

・咽頭マッサージ(開口や咽頭・口周辺のマッサージなど、嚥下機能を維持させる運動を行う事で嚥下を予防する。)《よく笑う、カラオケ、おしゃべり、笛を吹く等》

〇フレイル(虚弱):ヒトはどの側面に向かって弱っていくのか?

・「身体」の虚弱(フィジカルフレイル)
・「精神」の虚弱(メンタルフレイル)
・「社会性」の虚弱(ソーシャルフレイル)

特に口腔内に関して言えば、一生懸命咬もうという努力が必要です!!

咬めないから柔らかいものを食べる、そうすると咬む機能が低下して、口腔機能低下への悪循環となります。『食べる』ことにこだわる事が大事なことです‼

入れ歯の具合が悪ければ、入れ歯安定剤を使用して構いませんが、出来れば調整や義歯を新しくする事が望ましいでしょう。入れ歯安定剤の材料は劣化すると汚れが付きやすく細菌が繁殖しやすくなるので注意して使用して下さい。

〇健康寿命のための「3つの柱」

・栄養(食・口腔機能)

①食事(タンパク質、そしてバランス)
②歯科口腔の定期的な管理

・社会参加(就労、余暇活動、ボランティア活動)

①お友達と食事をする。
②前向きに社会参加をする。

・身体活動(運動、社会活動など)

①たっぷりと歩く!
②ちょっと頑張って筋トレをする!!

このような事を行う事により、より早期からのサルコペニア予防・フレイル予防になります。

〇高齢者の生きがい(楽しみ)

・美味しいものを食べること
・味わうこと
・おしゃべりすること

全てが口腔の生理機能であり、働き続ける意欲を起こす身体機能と自分の健康を維持するための大切な機能である。

〇身体の健康と心の健康

これらを維持するためには“口腔ケアが最も重要”であり、食事を楽しくとることで栄養状態を維持、人前で大きく口を開けて笑ったりしゃべったりすることが全身の健康につながります。

寝たきりにならないためには“食”が大切!

“食”(食べる)のためにはお口の健康が大切!!

健康長寿のためにお口の健康をしっかりと管理しましょう‼と、とても解わかりやすい、楽しい講演が終焉となりました。

第18回 市民公開講座

休憩をはさんで、第2部の落語が始まりました。

公益社団法人 落語芸術協会の橘ノ圓満さん、柳亭明楽さんにお話をして頂きました。

〇橘ノ圓満 (たちばなの えんまん)

階級:真打

得意ネタ:穴子でからぬけ、金明竹、試し酒、転失気、子ほめ、寿限無、時そば、ほうじの茶、豊竹屋

橘ノ圓満 (たちばなの えんまん)

〇柳亭 明楽(りゅうてい めいらく)

階級:二ツ目

柳亭 明楽(りゅうてい めいらく)

講演で少し疲れた後に、お二人の落語で会場の皆様も大いに笑っていただき、これもまた健康のために良いことであったことでしょう。

皆様の健康で健やかな生活の一助となれば幸いです。

文責 太田新田歯科医師会 市民公開講座運営委員会 増田康展