歯の生える薬ができる?
一般社団法人太田新田歯科医師会
尾内歯科医院
院長 尾内正芳
最近のニュースで歯の生える薬が開発中というのが話題になりましたが、みなさんはお聞きになりましたか?
歯は骨などと違って基本的には再生しません。
また一度抜けてしまった永久歯はサメやワニのように新しく生えてくることはありません。
これは歯を作る細胞や組織が永久歯を作り終えた後、退化してしまい機能しなくなるからです。
これには私たちの細胞に組み込まれている、ある遺伝子が関係していると言われています。
そこに目を付けた京都大学発のベンチャー企業は、この遺伝子の働きを阻止する中和抗体を開発し、マウス等の実験で歯の欠損した部分に歯を生やさせることに成功しました。
現在は人への応用の準備段階とのことで、まずは遺伝的に多くの永久歯が欠損している先天性無歯症、ついで部分的に欠損している部分無歯症、最終的にはむし歯や歯周病などで後天的に欠損した部分にも応用できるように考えているとのことです。
もっとも今年にもヒトに対する安全性試験を実施した後、来年からまずは先天性無歯症に対する治験を開始、本格的な実用化は2030年予定とのことですので、むし歯や歯周病などによる後天的な欠損への実用化はまだまだ先と言わざるを得ないでしょう。
それでも非常に夢のある話ではありますので、私たちは次世代の人たちが歯の欠損に困ることなく暮らせる時代が来ることを願いつつ、日々のお口の中のお手入れを怠らないようにしたいものです。