意外と知らない知覚過敏

太田新田歯科医師会

もろ歯科医院

院長 毛呂 慎

意外と知らない知覚過敏

水や空気が冷たいこの時期、『歯がしみて困る』という方が増えます。個人的にはこの知覚過敏の治療がいちばん厄介だと感じています。別に命にかかわる病気でもないし、ちょっと治療すればすぐに治ってしまうというイメージですよね。

確かに明らかなむし歯があったり、歯周病で歯がグラグラしていれば分かりやすくていいのですが、問題なのはそれが明白でない場合が多いからです。

まずは比較的診断が簡単なパターンをお話しますと…

最も多いのは歯みがきが強すぎる場合です。要因としては歯ブラシの硬さ・動かし方・歯磨き粉・電動歯ブラシなどが挙げられます。一概に毛先が柔らかいのを使えばOKとも言えません。硬めが好きな方が柔らかめを使うと却って必要以上に強く磨きがちになって逆効果です。また電動歯ブラシはそれ自体の磨くパワーが大きいので、専用の歯磨き粉を使わないと歯が削れてしまいます。

…今日の本題に入ります。

歯の根元がえぐれていると一般的には磨きすぎと言われますけれど、意外に思われるかもしれませんが、結構『歯ぎしり』や『食いしばり』による場合が多いのです。歯は硬そうに見えて実は歯ぎしりをすることで撓(たわ)みます。(高層ビルが地震の時に揺れるのみたいに…)それで根元のエナメル小柱と呼ばれる細胞にヒビが入って煉瓦の壁がくずれるように剥がれていくのです。

一般的に歯ぎしりは就寝時に行われますから意識的にコントロールできませんので、ナイトガードと呼ばれるマウスピースの使用が効果的です。自覚症状がなくても頬の内側や舌の側面に歯の痕(あと)が付いていたり、起床時に肩こりや顎の痛みが著明な場合や歯の詰め物が頻繁に取れてしまう場合には歯ぎしりの存在を疑ってみてもいいかもしれません。

次に、レモンなどの柑橘系フルーツ、酢のもの・炭酸飲料の摂り過ぎです。「健康に良いから…」とおかずやご飯に酢をかけて食べる女性がいらっしゃいますが、歯の表面のエナメル質は酸に弱いですから…歯を守っているバリアをなくしてしまう事にもなります。

更に知覚過敏の歯の根元に詰め物がしてある場合は、一見するときれいで問題なさそうでも見えない所に隙間ができてる可能性もあります。

日常的にガムを噛んでいたり、スルメとか硬いものが好きな人は歯に亀裂が入っていたりする場合もあります。時間が経てば経つほど亀裂が深くなって、最悪の場合、歯が割れてしまうことさえあります。「普段は平気なんだけど、物を噛むとちょっと痛む」場合は早めに歯科医に診てもらう事をお勧めします。

原因が明らかであれば歯科医院における治療も比較的ラクなんですが、特定が困難な場合はコーティングの薬を塗るなどの軽めの内容から重症なら歯の神経を取るなど…徐々に手間のかかる内容へと試行錯誤しながら行なう事になります。

そもそも知覚過敏は原因歯の特定すら難しく一度の治療で完治することが少ないので、その点はご理解をお願いしたいところです。