唾液と齲蝕の関係

太田新田歯科医師会
おおた阿部歯科クリニック
院長 阿部 義則

唾液と齲蝕の関係

 

唾液には生体にとってとても多くの大切な機能があります。

その中でも、齲蝕の発生に大きく関わっております。まず、齲蝕の発生は、歯面に付着した歯垢(プラーク)中にいる細菌が酸を作り、その酸の作用で歯質が脱灰され生じます。しかし唾液には、歯面に付着した歯垢や食べかすを洗い流す自浄作用や、細菌の増殖を抑える抗菌作用、酸性に傾いた口の中のpHを中和させる緩衝作用、溶けかけた歯の表面を修復する再石灰化作用などの作用があり、齲蝕の発生を防止するのに役立っています。

しかしながら、加齢的な変化や特殊な疾患及び、薬の長期服用に伴う副作用などで唾液の分泌量が減少すると、これらの唾液の作用も減少し、齲蝕の発生率も高くなります。

唾液の分泌量を調整することは困難なので、徹底したプラークコントロールが大事であり、口渇による分泌量の減少には、常に水やお茶などで口腔内を潤わせたり、飴など(シュガーレス)で唾液が出やすいようにすることが大事だと思います。

予防が大切!

太田新田歯科医師会
とりやま歯科医院
院長 周藤 泰之

 

予防が大切!

皆さん歯医者に対してどのようなイメージをお持ちですか?

怖い・痛い・歯を削る時の音が嫌だなど、ネガティブなイメージを持っている人が多いと思います。自分たちが日常診療していても、「歯科恐怖症です」「歯医者が嫌いでずっと虫歯を放置していました」「治療が怖くて治療途中で歯医者に行くのを止めました」など、歯医者に対してネガティブなイメージを話してくる患者さんの声をよく聞きます。

では、なぜこの様なイメージになるのか考えてみました。多くの患者さんは治療しなければならない状態になってから受診するからだと思います。当然治療を行うには多少なりとも痛み・不快感などは付きものです。「治療にならない様に歯医者に行く」「自分の綺麗な歯を維持するために歯医者に行く」この様な考えになれば、歯医者のイメージは良くなると思います。すなわち、予防のために歯医者に行くと言う考えです。

日本では1年に1度でも歯医者に行く人は2人に1人と言われ、それも痛くなった時に行く人が大半と言われています。欧米と日本での歯科に対する認識の違いについてお話しすると、欧米の多くの国では歯科治療が自費もしくは自分で加入する保険で行います。なので、虫歯になると高額な治療費がかかります。歯1本根の治療から被せ物までで数十万円と言われています。なので、虫歯・歯周病にならない様に予防に力を入れる人が多いのです。日本は国民皆保険制度のため歯科医院窓口で支払う治療費は数百円~数千円で治療が受けられます。とても良い様に思いますが、これが日本人の歯科に対する意識の低さを生んでいるとも言われています。治療費が安価なため虫歯になって痛くなってから、歯周病で歯が揺れてから、などの症状が出てから歯科医院に行くと言う考えです。予防にお金をかける考えが少ないのです。しかし、治療は歯を削る・人工の被せ物や詰め物の不自然さ・歯を抜く・入れ歯の違和感などが生じる事があります。絶対に自分の歯に戻る事は出来ず自分の歯に勝るものはありません。

日本は先進国でありながら国民の予防歯科に対する意識では他の先進国よりかなり遅れています。予防すれば虫歯・歯周病にならない、ならなければ痛い怖い治療する必要がない、痛い怖いがなければ歯医者を嫌いにならない、そして何より歳を取っても自分の歯で何でも美味しく食事ができ健康でいられる。皆さん自身が予防を意識すれば良いことしかないと考えられます。子供のころから虫歯にさせない、もし治療が必要な状態になってしまっても予防の意識で定期的に歯科医院に通院していれば早期発見で最小の治療で終える事ができます。

歯医者を怖い所・嫌いな所・気持ち的に遠い所と思わず、かかりつけ歯科医院を見つけて予防の意識を大切にし、定期的に通院することをお勧めします。

歯科健診による歯の病気早期発見の大切さ

太田新田歯科医師会
おおたモール歯科
八木 大輔

歯科健診による歯の病気早期発見の大切さ

私たちの平均寿命は伸び「人生100年時代」といわれるようになりました。

その中で、口の中の健康は健康寿命に大きく関係しています。ある研究によると歯の数と認知症の関係性が確認されています。歯を失うことで脳への刺激が減り、残っている歯が少ないほど認知症のリスクが大きくなるという結果も出てきています。

年を重ねても自分の歯を1本でも多く残せているか、また残っている歯がどれくらい健康な状態かが重要になります。また、歯は食べ物を噛み砕くためだけのものではなく、会話の発音を助けたり、顔の表情をつくるなど日常生活に必要な役割を持っており、歯を失うと食べ物が噛みづらくなるだけでなく体全体にも影響が出てきます。

そして、歯の健康を維持する上で影響を与える病気が歯周病です。歯周病は歯茎が炎症してしまう病ですが、歯に悪いだけでなく、身体全体に悪影響を及ぼすということも分かっています。炎症した歯茎から細菌が身体に入り込み、血管を通じて全身に悪さをします。それにより糖尿病・高血圧・脳梗塞・認知症などの病気を引き起こしやすくなるということが分かっています。また、歯のかみ合わせのバランスが悪くなると、顔にしわができたり、あごや関節が歪んだり、姿勢や背骨の歪みなどに影響が出る方もいます。私たちの歯は一度を失うと生えてこないため、1日でも長く健康な歯を維持するために、歯のトラブルを早期発見・早期治療を行うことが重要です。

新型コロナウイルス感染症の影響によって自宅で過ごす時間が増えた方もいるのではないでしょうか。そのためには歯科検診を定期的に受けて、小さい虫歯のうちに治療すれば、痛みが出てから治療するより治療回数・治療費も最小限に抑えることができますし、歯が健康な人は全身の医療費も低いというデータもあります。

高校生までは毎年歯科検診が義務づけられていますが、成人ではなかなか歯の健診を受けられていないことが報告されていて、今では国会でも「国民皆歯科検診」の議論があがるくらい歯の健康が大事だという認識が広まってきているので、しばらく歯医者さんに行っていない人はお近くの歯科医院にご相談ください。

「根面う蝕」をご存じですか?

太田新田歯科医師会
アルス歯科クリニック
院長 堀越 康介

 

「根面う蝕」をご存じですか?

あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、根面う蝕とは名前の通り歯の根の面(歯根)にできるむし歯の事です。

昨今では健康意識が高まり、多くの歯が残っている高齢者も増えてきています。

それに伴い歯の付け根にできるむし歯も増えてきています。

歯周病が進行したり、力を入れすぎた歯磨きを長年続けると、歯肉の退縮が起こり、歯の根の部分が露出してしまう事が主な原因とされています。健康な時には歯肉に隠れていた根が外に現れてしまい、歯の根の部分はエナメル質がないのでむし歯になりやすいのです。

根面う蝕が進行してしまうと噛む所の歯(歯冠部)はピカピカなのに根元からポキリとおれてしまいます。これはとっても残念な事ですよね。

従来のむし歯ができたら「削ってつめる」治療ではなく根面う蝕にならないように『予防』していくことが重要です。

根面う蝕の予防のポイントを説明しましょう

歯肉を下げない事が大事!

特に歯肉が下がる原因となるのが「歯周病」です。歯肉の腫れやぐらつきなどを感じる前から定期的に歯周病の検査をしてもらい、歯科医院でのメインテナンスを受けることが大切です。むし歯と同じように根面う蝕の予防も歯ブラシが基本になります。しかし、力を入れすぎて磨いているとかえって歯肉を痛め歯肉が下がる原因となります。歯肉を傷つけないように優しく丁寧な磨き方も歯科医院で教えてもらいましょう。

歯間ブラシやデンタルフロスなどの補助器具を使う事も大切です。

フッ素で歯を強化する

高濃度のフッ素配合歯磨き粉やフッ素洗口液を利用してフッ素が歯を補修する力をさらに強化しましょう。高濃度のフッ素配合歯磨き粉を使うときは適切な濃度のフッ素をお口の中に長時間残すため、すすぎは最低限(一回程度)で行います。

すすぐ水の量もおちょこ一杯ほどで少なめで結構です。

根面う蝕を予防して健康な歯でおいしく食事ができるといいですね。

もう一度考えてみませんか、お口のお手入れ

太田新田歯科医師会
岸歯科医院
院長 岸 隆史

 

もう一度考えてみませんか、お口のお手入れ

口は生きていく上で無くてはならない器官です。

呼吸をする、食事をとる、発音する…etc.これらの一つ失われても日々の暮らしには大きな影響が出てくるでしょう。

問題なのは、そうした大事な器官である口は「非常に危ういバランス」の上に成り立っているという事です。

口は絶えず外界と接しており、色々な刺激を受けています。また、温度、湿度、栄養といった微生物が生育するのに適した環境が整っています。形状も歯や舌などが複雑な形をしています。

日々の暮らしを健康で過ごす為には、この口という器官を大事に手入れしてあげる必要があります。それが「口腔ケア」なのです。

「口腔ケア」といっても広義と狭義の意味があります。

多くの方が「口腔ケア」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは「歯磨き」や「うがい」、一歩進んで「歯医者さんで歯石を取ってもらう」位だと思います。正解です。しかし、これは「口腔ケア」においては「狭義」に当たります。口腔内清掃は口腔ケアにおいてまず踏み出す第一歩です。では何故、口腔内清掃が必要なのでしょうか?これが「広義」の意味をもつ「口腔ケア」へと繋がります。簡単に言ってしまうと「微生物からの感染予防」「口腔機能の維持」、これが「口腔ケア」の本質であり目的です。

箇条書き的に挙げていくと…

  1. 虫歯や歯周病の予防
  2. 口腔疾患(口内炎やカンジダ症)の予防
  3. 口臭の予防
  4. 誤嚥性肺炎の予防
  5. 全身疾患(心筋梗塞、糖尿病)の予防
  6. 食欲増進
  7. 摂食嚥下の維持
  8. 発音、構音によるコミュニケーション
  9. 唾液分泌促進
  10. 味覚の維持
  11. 対人関係、見た目の維持
  12. 全身のバランス
  13. 認知機能向上

我々、歯科医師や衛生士は皆さまの健康維持の為にこういった「口腔ケア」のお手伝いは出来ます。あくまで主体は皆さま自身になります。

日々の生活を豊かに、そして健康的に過ごす為に毎日の「口腔ケア」を心掛けてください。